出張日当が飲食料品の購入に充てられる場合の課税仕入れの適用税率

この記事の内容は、2025年6月現在の最新の税制に対応しています。

従業員の出張に際して日当を支給した場合は、通常必要と認められる範囲内の金額であれば、その日当の支払額は消費税法上の課税仕入れとなります。

では、日当の支払額のうち、軽減税率の適用対象となる飲食料品などの購入費用に充てられた金額の課税仕入れの適用税率はどうなるのでしょうか?

今回は、出張時の日当が飲食費に当てられる場合の課税仕入れの適用税率について解説したいと思います。

 

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日当とは

キャリーバッグを持つ会社員

日当とは、旅費や宿泊費以外の出張中の少額の諸雑費の支払に充てるために従業員に対して支払うものです。

例えば、営業回り中に飲むためのペットボトルのお茶を買ったり、移動中に読むための新聞を買ったり、食事代の支払いに充てられるような諸雑費が日当に該当します。

日当は、その費用を会社が実費弁償するために支給するものでるため、従業員等に対する給与には該当しません。

 

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日当の消費税の取扱い

まずは、出張時に支払う日当についての消費税法上の取扱いについて確認します。

従業員の出張の際に支給する日当の取り扱いについては、消費税法基本通達11-6-4において次のような記載があります。

(通常必要であると認められる出張旅費、宿泊費、日当等)

11-6-4 規則第15条の4第2号《請求書等の交付を受けることが困難な課税仕入れ》に規定する「その旅行に必要な支出に充てるために事業者がその使用人等又はその退職者等に対して支給する金品」とは、例えば、事業者が、使用人等(同号に規定する「使用人等」をいう。以下11-6-5までにおいて同じ。)又は退職者等(同号に規定する「退職者等」をいう。以下11-6-5までにおいて同じ。)が次に掲げる旅行をした場合に、使用人等又は退職者等に出張旅費、宿泊費、日当等として支給する金品がこれに該当するのであるが、同号に規定する課税仕入れは、当該金品のうち、その旅行について通常必要であると認められる部分に係るものに限られることに留意する。

(1) 使用人等が勤務する場所を離れてその職務を遂行するために行う旅行

(2) 使用人等の転任に伴う転居のために行う旅行

(3) 退職者等のその就職又は退職に伴う転居のために行う旅行

(注) 同号に規定する「その旅行について通常必要であると認められる部分」の範囲は、所基通9-3《非課税とされる旅費の範囲》の例により判定する。

下線で示したように、従業員の出張時に支給する日当は、通常必要であると認められる部分の金額については、該当することとされています。

なお、日当の支払額が課税仕入れとして認められるためには、全従業員を対象とした「出張旅費規程」を作成する必要があります。

この点については、詳しくは次の記事をご覧ください。

また、海外出張に係る日当の支払いについては課税対象外取引(不課税取引)となるため、課税仕入れに該当しません。

 

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日当が飲食料品の購入に充てられる場合

従業員の出張時に支給する日当が、ペットボトル飲料やおにぎり、パンなどの軽減税率適用対象となる飲食料品の購入のために充てられた場合は、その日当の支払額に係る課税仕入れの適用税率は何%となるのでしょうか?

この点については、国税庁が公表している『消費税の軽減税率制度に関する Q & A(個別事例編)』の問37において、次のように記載されています。

(日当等の取扱い)
問3 7 当社は、従業員の出張の際に、旅費規程に基づき、日当を支給しています。この日当は、出張時の外食費や通信費などに充てるために支給するものですが、場合によっては飲食料品の購入など軽減税率の適用対象となる支払いに充てられることもあります。なお、その支出内容につき、従業員から領収書等の提出を求め実費で精算を行うものではありません。このような日当の適用税率を教えてください。【平成 30 年 11 月追加】
【答】
従業員等の出張等に際し、その出張等に必要な支出に充てるために事業者がその従業員等に対して支給する日当は、仮に従業員等が軽減税率の適用対象となる「飲食料品の譲渡」に充てたとしても、事業者は「飲食料品の譲渡」の対価として支出するものではないことから、軽減税率の適用対象となりません(改正法附則 34①一)。

太字部分で示したように、従業員が日当を飲食料品の購入のために充てたとしても、日当に係る課税仕入れについては軽減税率の適用対象となりません。

これは、従業員に支給する日当は、「出張中の少額の諸雑費」という具体性のない支払いに充てるために支給するものであり、事業者において「飲食料品の譲渡」の対価として支出するものではないからです。

したがって、従業員の出張時に支給する日当の支払額については、課税仕入れ(標準税率10%)として処理します。

 

領収書に基づいて実費精算する場合は、飲食料品の譲渡については軽減税率が適用される

上述の、『消費税の軽減税率制度に関する Q & A(個別事例編)』の問37において、以下のような 注書きがあります。

(注)2 従業員等が支出した実費について、事業者が従業員等から受領した領収書等を基に精算するもの(実費精算分)については、その支払いの事実に基づき適用税率を判定することとなります。

したがって、従業員に日当を支給した時点では「仮払金」として処理し、従業員から受領した領収書を基に経費の精算を行っている場合は、その領収書に記載された支払いの事実に基づいて適用税率を判定します。

そのため、お茶やお弁当などの軽減税率が適用される支払いについては、課税仕入れ(軽減税率8%)となります。

 

実費精算しない方が有利になる

上記の取扱を鑑みると、従業員に支給した日当については、領収書などによる実費精算は行わない方が有利となります。

なお、従業員に支払った日当については、その日当の支払額が出張旅費規程に基づいて支払われた社会通念上の常識的な範囲内の金額のものであり、出張経費精算書などを保存することにより出張の事実を証明することができれば、必ずしも領収書などによる実費精算を行わなければならないというわけではありません。

出張経費精算書には、旅費や宿泊費、日当の支払額について記載をしますが、日当が具体的に何の支払のために当てられたかまで記載する必要はありません。

したがって、日当支給額を全額(標準税率10%)課税仕入れとして計上するほうが、消費税の納付税額の計算上は有利になります。

 

まとめ

従業員の出張に際して支給した日当が、軽減税率の適用対象となる飲食料品の購入に充てられたとしても、その日当の支払額は軽減税率の適用対象となりません。

ただし、領収書などにより実費精算を行っている場合は、その支払いの事実に基づいて適用税率の判定を行いますが、消費税の納付税額計算上は実費精算を行わず、日当の支払額の全額を7.8%課税仕入れとして計上した方が有利となります。

 

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JGY04 国内に出張する従業員の食事代として支給する日当
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