協同組合が、組合員店舗として利用する共同施設の設置及び運営等を行うことを目的として、定款の規定に基づいて、組合員に対して一般賦課金を課すことがあります。
今回は、組合員に賦課される一般賦課金に係る消費税の取扱いについて解説したいと思います。
一般賦課金とは
協同組合が、定款等の規定により、組合の維持管理にかかる費用の分担金として賦課金(一般賦課金)を課すことを定めていることがあります。
賦課金の内容は組合により様々ですが、一般的なものとして「面積割」と「均等割」が構成要素になっていることが多いです。
賦課金の具体的な金額は、過年度の実績等から算出した事業費と一般管理費の年間支出予算額を基礎に計算され、「均等割」は各組合員において同額、「面積割」は各組合員の売場面積等を基準とし、一定の調整を加えたうえで計算されます。
このような一般賦課金は、消費税法上「資産の譲渡等の対価」に該当するのでしょうか?
会費の取扱い
同業者団体、組合等がその構成員から受ける会費、組合費等の取扱いについては、消費税法基本通達5-5-3において次のように記載されています。
(会費、組合費等)
5-5-3 同業者団体、組合等がその構成員から受ける会費、組合費等については、当該同業者団体、組合等がその構成員に対して行う役務の提供等との間に明白な対価関係があるかどうかによって資産の譲渡等の対価であるかどうかを判定するのであるが、その判定が困難なものについて、継続して、同業者団体、組合等が資産の譲渡等の対価に該当しないものとし、かつ、その会費等を支払う事業者側がその支払を課税仕入れに該当しないこととしている場合には、これを認める。
(注)
1 同業者団体、組合等がその団体としての通常の業務運営のために経常的に要する費用をその構成員に分担させ、その団体の存立を図るというようないわゆる通常会費については、資産の譲渡等の対価に該当しないものとして取り扱って差し支えない。
2 名目が会費等とされている場合であっても、それが実質的に出版物の購読料、映画・演劇等の入場料、職員研修の受講料又は施設の利用料等と認められるときは、その会費等は、資産の譲渡等の対価に該当する。
3 資産の譲渡等の対価に該当するかどうかの判定が困難な会費、組合費等について、この通達を適用して資産の譲渡等の対価に該当しないものとする場合には、同業者団体、組合等は、その旨をその構成員に通知するものとする。
また、同業者団体や組合が、その構成員から共同行事に要した費用を賄うために徴収する負担金、賦課金等の取扱いについては、消費税法基本通達5-5-7において次のように記載されています。
(共同行事に係る負担金等)
5-5-7 同業者団体等の構成員が共同して行う宣伝、販売促進、会議等(以下5-5-7において「共同行事」という。)に要した費用を賄うために当該共同行事の主宰者がその参加者から収受する負担金、賦課金等については、当該主宰者において資産の譲渡等の対価に該当する。ただし、当該共同行事のために要した費用の全額について、その共同行事への参加者ごとの負担割合が予め定められている場合において、当該共同行事の主宰者が収受した負担金、賦課金等について資産の譲渡等の対価とせず、その負担割合に応じて各参加者ごとにその共同行事を実施したものとして、当該負担金、賦課金等につき仮勘定として経理したときは、これを認める。
(注) この取扱いによる場合において、当該負担金、賦課金等により賄われた費用のうちに課税仕入れ等に該当するものがあるときは、各参加者がその負担割合に応じて当該課税仕入れ等について法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定を適用することになる。
これらの通達は、同業者団体や組合がその構成から収受する会費や負担金等についての対価性を判断するにあたって、団体等が構成員に対して行う役務の提供内容に即して個別具体的に判断を行うことを明らかにしているものです。
したがって、構成員から徴収する一般賦課金についても、その徴収の根拠となる個別具体的な内容に基づいて判断を行います。
面積割による賦課金は課税対象
一般賦課金のうち「面積割」による賦課金は、各組合員の売場等の面積に応じて計算されるものであり、各組合員が組合所有の建物を店舗として利用するにあたっての対価として性質を持っていると考えられるため、協同組合が構成員に対して行う役務の提供との間に対価関係があると認められるため、資産の譲渡等の対価に該当することになります。
したがって、一般賦課金のうち面積割に相当する金額は消費税の課税対象となります。
経理処理を行うにあたっては「諸会費」や「地代家賃」などの勘定科目で計上し、課税仕入れとして処理します。
均等割による賦課金は課税対象外
一般賦課金のうち「均等割」による賦課金は、各組合員から公平に同額を徴収しているものであることからすると、組合の存立を図るための通常会費としての性質を有しているといえ、協同組合が構成員に対して行う役務の提供との間に対価関係があるとは認められないため、資産の譲渡等の対価に該当しないことになります。
したがって、一般賦課金のうち均等割に相当する金額は消費税の課税対象外(不課税)となります。
経理処理を行うにあたっては「諸会費」や「支払手数料」などの勘定科目で計上し、不課税仕入れとして処理します。
共同行事に要した負担金等が含まれる場合も課税対象外
一般賦課金の均等割のうちに、協同組合が共同行事に要した費用等に係る賦課金収入や、課税対象となる資産の譲渡等に該当するものが一部が含まれており、組合が仮勘定として経理していない場合であっても、その一般賦課金のうち対価関係のあるものとそうでないものを明確に区別し判定することは困難であるため、均等割の賦課金の全額が資産の譲渡等の対価に該当しないものと認められます。
まとめ
協同組合が組合員に賦課する一般賦課金についての対価性の判断は、その徴収根拠となる内容をもとに個別具体的に行います。
一般賦課金のうち一般的なものとして「面積割」や「均等割」といったものがあります。
「面積割」は組合が所有する建物等の利用に係る対価として課税対象となりますが、「均等割」は組合員が協同組合から受ける役務の提供との間に対価関係が認められないため課税対象外(不課税取引)となります。
参照判例:平成8年4月18日国税不服審判所裁決