聞いたことない化学物質が消費税の軽減税率の対象かどうか調べる方法

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

令和元年(2019年)10月1日に日本で初めて消費税の軽減税率制度が導入されてから早いものでもう2年の月日が経とうとしています。

普段からこのサイトをご覧になっている方は消費税への興味が高い人が多いため、大抵の取引については、友人や家族から聞かれてもドヤ顔で適用税率を答えられる方が多いのではないでしょうか。

しかしです。軽減税率制度というのは本当に奥が深いもので、調べ方を知らないと、こんなやり取りがあった場合に大恥をかいてしまう可能性があります。

息子「ねぇパパ~、コンビニで売ってるチョコボールって消費税8%?10%?」

パッパ「それはお持ち帰りで買うんなら軽減税率8%だよ(ドヤ

息子「そうなんだ!じゃあ、ポチが食べてるドッグフードは?」

パッパ「それは人が食べるものじゃないから10%だよ(ドヤヤ

息子「へぇ~!すごーい!じゃあさじゃあさ、(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ジメチルスルホニウム塩化物って消費税8%?10%?

パッパ「・・・・・」

息子「(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ジメチルスルホニウム塩化物って消費税8%?10%?

パッパ「え~っと・・・ちょっと待っててね・・・」

息子「うん、なる早で。」

(30分後)

パッパ「・・・あの、ずみまぜん、わがりまぜんでじだ。。。」

と血の涙を流しながら愛息子に詫びを入れなければならないこととなり大恥をかいてしまう可能性があります。

今回は、こんな事態にならないように、聞いたことのない化学物質が消費税の軽減税率の対象となるかどうかを調べる方法をご紹介したいと思います。

 

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軽減税率が適用される取引

令和元年10月1日から日本で初めて消費税の軽減税率制度が導入されることとなり、消費税は8%と10%とが混在することとなりました。

軽減税率8%が適用される取引は、以下の2つです。

軽減税率が適用される取引
・お酒や外食、医薬品等を除く飲食料品の譲渡
・定期購読契約に基づき配送される新聞(週2回以上発行されるもの)の譲渡

上記以外の取引については標準税率10%が課されます。

では、化学物質については、上記の「飲食料品」の範囲に含まれるのでしょうか?

 

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食品添加物は飲食料品の範囲に含まれる

軽減税率の適用対象となる「飲食料品」の範囲については、国税庁が公表している資料「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」の問1で、次のように回答されています。

(「飲食料品」の範囲)
問1 軽減税率の対象品目である「飲食料品」について、具体的に教えてください。
【答】 軽減税率の対象品目である「飲食料品」とは、食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除きます。以下「食品」といいます。)をいいます(改正法附則 34①一)。
食品表示法に規定する「食品」とは、全ての飲食物をいい、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に規定する「医薬品」、「医薬部外品」及び「再生医療等製品」を除き、食品衛生法に規定する「添加物」を含むものとされています。
なお、ここでいう「飲食物」とは、人の飲用又は食用に供されるものをいいます。

上記の太字部分のとおり、食品衛生法に規定する「添加物」も軽減税率の対象となる「飲食料品」の範囲に含まれることとなります。

したがって、聞いたことのない化学物質であっても、それが「食品添加物」に該当するのであれば軽減税率の適用対象となります。

なお、食品衛生法第4条第2項において「食品添加物」は「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物」と定められています。

具体例としては、凝固剤、香料、甘味料、保存料、酸化防止剤、着色料、発色剤、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などのうち厚生労働大臣の認めたものが「食品添加物」に該当します。

 

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食品添加物に該当するか調べる方法

とはいえ、今までの人生で一度も聞いたことのない化学物質が「食品添加物」に該当するかどうかなんてどうやって調べればいいのでしょうか?

冒頭の鬼畜息子が聞いていた「(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ジメチルスルホニウム塩化物」なんてほとんどの人が生まれて初めて聞く単語だと思いますし、どんな効果のある物質なのか一ミリも想像できないと思います。

しかし、聞いたことがなくても、効果が全く想像できなくても、それが「食品添加物」であるかどうか調べることはできるのです。

まず、食品添加物は下記の4種類に分類されます。

食品添加物の4分類
① 指定添加物:安全性と有効性が確認され、国が使用を認めたもの
 →『指定添加物一覧』に記載されているもの
② 既存添加物:我が国においてすでに使用され、長い経験があるものについて例外的に使用が認められているもの
 →『既存添加物一覧』に記載されているもの
③ 天然香料:植物、動物を起源とし、着香の目的で使用されるもの
 →『天然香料リスト』に記載されているもの
④ 一般飲食物添加物:通常、食品として用いられるが、食品添加物として使用されるもの

「食品添加物」は、上記①~④のいずれも、化学的合成品や天然添加物など製造方法の違いにかかわらず、食品衛生法第10条に基づき厚生労働大臣が安全性と有効性を確認して指定した添加物でなければならないため、それぞれリストアップされているもののみが該当することとなります。

リストは、「一般社団法人日本食品添加物協会」「公益財団法人日本食品化学研究振興財団」のサイトから調べることができます。

(上記の各分類にそれぞれ記載してあるリストです。)

上記の4種類のいずれかに該当しているかをそれぞれのリストを見て調べれば、「食品添加物」に該当するかどうか調べることができます。

どこにも記載されていない場合は「食品添加物」に該当しないということになるため、軽減税率は適用されません。

冒頭の例で挙げた「(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ジメチルスルホニウム塩化物」は、下記のとおり「指定添加物」の一覧に記載されていたため「食品添加物」に該当し、軽減税率8%が適用されます。

指定添加物一覧

 

「食品添加物」に該当する物質であっても、軽減税率が適用されるかどうかは販売者による

化学物質が、上記の調べ方で「食品添加物」に該当する場合であっても、軽減税率が適用されるかどうかは販売者の判断に委ねられます。

化学物質は食品の加工等に限らず、あらゆる目的で使用することができるため、その化学物質を「食品添加物」として販売するかどうかは、販売者が判断することとなります。

例えば、重曹(炭酸水素ナトリウム)については、ホットケーキなどを作るためのベーキングパウダーとしても使用できますし、掃除用の洗剤として使用することもできます。

このような、食品の加工用としても、その他の用途としても使用できる化学物質については、販売者が食品加工等のための「食品添加物」として販売している場合は軽減税率8%が適用され、「食品添加物」ではなく清掃等の食品加工以外の目的で販売している場合は標準税率10%が適用されます。

なお、当たり前ですがそもそも上記の一覧に載っていない「食品添加物」に該当しない化学物質については、軽減税率8%で販売することはできないので注意しましょう。

 

税理士試験で出題される場合

税理士試験でも化学物質を売買する取引が出題される可能性はあると思いますが、よほどの鬼畜試験委員でない限り、物質名だけ出してヒントもなしに「食品添加物」に該当するかどうかを判断させる問題は出ないでしょう。

もし化学物質の取引が出題されたとしても、それが「食品添加物」に該当するかどうかの記載が問題文のどこかにきっとあるはずです。「食品添加物」に該当する場合は軽減税率8%、該当しない場合は標準税率10%と判断します。

 

(注意)「食品添加物に該当する=食べても大丈夫」というわけではない!

よくある勘違いとして、「食品添加物に該当するのなら食べても大丈夫」と考える人がいますが、その考えは誤りです。

例えば、アルコール類の一種であるイソプロピルアルコール(イソプロパノール:C3H7OH)は「指定添加物」として「食品添加物」に該当しますが、着香や食品の成分の抽出目的以外に使用してはならず、体内に摂取した場合、生殖能又は胎児への悪影響が出たり、中枢神経系、腎臓、血管、肝臓、脾臓に障害が表れることがあります。

また、最近では、新型コロナウイルスの消毒対策として「次亜塩素酸ナトリウム」を水で薄めて加湿器に入れて散布し空間除菌するという方法が広まり、健康被害が出るという事態が問題視されています。

「次亜塩素酸ナトリウム」は「食品添加物」に該当しますが、あくまでも食品や食器の殺菌・漂白に用途は限定され、直接皮膚に触れたり体内に摂取すると人体に悪影響が出ます。

なお、よく似た名前の「次亜塩素酸水」(これも「食品添加物」に該当します)については、厚生労働省が規定する範囲内であれば加湿器で噴霧しても問題ないとされているため、これと混同したことが原因と言われています。

 

(参考)新開発の食品添加物は厚生労働大臣の指定を受けるまでは標準税率10%

食品に添加するために新たに開発された有機化合物については、食品衛生法第10条に基づく厚生労働大臣の指定を受け、食品添加物の一覧に掲載されるまでは軽減税率は適用されません。

 

(参考)(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ジメチルスルホニウム塩化物の用途

せっかく例で挙げたので、(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ジメチルスルホニウム塩化物の使用用途について、誰も興味ないと思いますが一応ご紹介します。

(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ジメチルスルホニウム塩化物は、アスパラガス、セロリ、コールラビ、うんしゅうみかん、スイートコーン、緑茶等の食品中に存在する成分であるとされており、魚介製品といった加工食品に、香りの再現、風味の向上等の目的で添加されています。

なお、(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ジメチルスルホニウム塩化物は「ビタミンU」とも呼ばれ、「メチルメチオニンスルホニウムクロライド」として医薬品の成分としても用いられています。

分子式はC6H14ClNO2S、分子量は199.70、構造式は以下のとおりです。

(画像引用元:Merck-DL-メチオニンメチルスルホニウムクロリド)

 

まとめ

軽減税率の対象となる「飲食料品」の範囲には、食品衛生法に規定する「食品添加物」も含まれることとされています。

聞いたことのない化学物質が軽減税率の対象となるのかどうかを調べるときは、「一般社団法人日本食品添加物協会」「公益財団法人日本食品化学研究振興財団」のサイトが公表しているリストを見て「指定添加物」「既存添加物」「天然香料」「一般飲食物添加物」の4種類のいずれかの一覧にその化学物質が記載されているかをチェックします。

どこかに記載されていた場合は、その物質は「食品添加物」に該当することになるため、軽減税率が適用されます。(どこにも記載されていない場合は「食品添加物」に該当しないため、軽減税率は適用されません。)

なお、「食品添加物」に該当する場合であっても、販売者が食品加工等以外の用途で販売している場合は標準税率10%が適用されることもあります。

(参考)エタノール製剤や次亜塩素酸ナトリウムは「食品添加物」に該当するか?

次の記事では、エタノール製剤や次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒液・除菌剤が「食品添加物」に該当するかどうか解説しています。是非合わせて読んでみてください。

 

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