社会保険料に係る消費税区分は非課税取引?仕訳例や延滞金の取扱い

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

会社の経理業務において、従業員を雇用して給料を支払っている場合、社会保険料が出てきます。

今回は、社会保険料を支払った場合の消費税の取扱いや延滞金にかかる処理、及び具体的な仕訳例を解説したいと思います。

 

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社会保険料とは

社会保険とは、私たちの生活を保障することを目的とし、病気や怪我、加齢、介護、失業、労働災害など、万が一の事故などに備えるための公的な保険制度です。

社会保険料には、健康保険(医療保険)、厚生年金保険(年金保険)、介護保険、雇用保険、労災保険があり、中でも、主に会社員を対象とする「健康保険(医療保険)」と「厚生年金保険(年金保険)」の2つが狭義の意味で「社会保険」と呼ばれることがあります。

「雇用保険」と「労災保険」の2つは「労働保険」と呼ばれることもあります。

社会保険料は、一般的に、会社と従業員が約半分ずつ支払い、従業員負担文は給与支払時にあらかじめ天引きして「預り金」として処理し、納付時に当該「預り金」を取り崩すとともに、会社負担額を「法定福利費」として処理します。

社会保険料の納付期限は、翌月末日(土・日・祝祭日の場合、金融機関の翌営業日)です。

翌月の20日前後に「保険料納入告知書」が送付され、その月の末日が納付期限になります。

 

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社会保険料の支払いは消費税法上「非課税取引」

消費税は、国内において消費される商品やサービスに対して課されます。

保険料については、保険契約者の被る危険を負担するサービスの対価として支払われるものですが、これは「消費」という行為を伴うものではありません。

したがって、保険料を対価とする役務の提供は、「消費」に負担を求めるという消費税の性格から課税することになじまないため、非課税取引とされています。

非課税項目を限定列挙している消費税法別表第二においても、以下のとおり規定されています。

三 利子を対価とする貸付金その他の政令で定める資産の貸付け、信用の保証としての役務の提供、所得税法第二条第一項第十一号(定義)に規定する合同運用信託、同項第十五号に規定する公社債投資信託又は同項第十五号の二に規定する公社債等運用投資信託に係る信託報酬を対価とする役務の提供及び保険料を対価とする役務の提供(当該保険料が当該役務の提供に係る事務に要する費用の額とその他の部分とに区分して支払われることとされている契約で政令で定めるものに係る保険料(当該費用の額に相当する部分の金額に限る。)を対価とする役務の提供を除く。)その他これらに類するものとして政令で定めるもの

なお、「保険料」とよく似た名称の「保険金」については、資産の譲渡等の対価として受け取るものではないため、消費税の課税対象外(不課税取引)となります。

この点については、次の記事でも詳しく解説しています。

 

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社会保険料の仕訳

社会保険料の支払いに係る具体的な仕訳例を見てみましょう。

給料支払い時(社会保険料等天引き時)の仕訳

数値例
当社は、従業員Aに5月分の給料400,000円を支払い、社会保険料40,000円、源泉所得税4,000円、市民税・県民税6,000円を天引きして普通預金口座からの振り込みにより支払った。(労働保険は考慮しない。)

社会保険料、源泉所得税、市県民税の天引き額は、それぞれ「預り金」勘定で処理し、納付した時に取り崩します。

なお、給料の支払いは不課税取引となります。

社会保険料等を天引きした時の仕訳は以下のようになります。

社会保険料天引き時の仕訳

会社負担額の見越し計上の仕訳

数値例
従業員Aの5月分の社会保険料80,000円のうち、当社負担額は40,000円を見越し計上する。

給料の支払った月と社会保険料を納付する月が異なる場合は、経過勘定(未払費用)を用いて「法定福利費」を見越計上します。

なお、製品製造に係る従業員に係る社会保険料の場合、「労務費」で処理します。

この場合、法定福利費の計上額は非課税仕入れとなります。

会社負担分の社会保険料の見越し計上時の仕訳

社会保険料納付時の仕訳

数値例
当社は、従業員Aの5月分の社会保険料80,000円を普通預金口座からの振込により納付した。なお、当社負担額は40,000円である。

社会保険料納付時は、給与支払時に天引きした従業員負担分の「預り金」と月末に計上した会社負担分の「未払費用」を取崩します。

社会保険料納付時の仕訳

なお、天引きした月と納付した月が同じで、未払費用を計上していない時は、納付時に会社負担部分を「法定福利費」(製造原価に含まれる場合は「労務費」)として計上します。

 

(参考)社会保険料の延滞金は非課税仕入れ、損金算入可能

資金繰りなどの影響により、社会保険料の納付が遅れてしまうことがあります。

社会保険料の納付が納期限までになされなかった場合は「延滞金」が発生しますが、この延滞金については税金の延滞金とは違い、損金の額に算入することができます。

そのため、社会保険料を納期限より後に納付した場合は、延滞金も含めて「法定福利費」勘定で処理し、支払い時の費用として処理します。

税区分は、延滞金も含めた支払額が非課税仕入れとなります。

 

まとめ

社会保険料の支払いは、消費税法上「非課税取引」となります。

一般的に、社会保険料は従業員と会社が約半分ずつ負担するため、従業員負担分は給料の支払時に天引きして「預り金」として処理し、会社負担分は「法定福利費」として処理します。(製品製造に係る従業員に係る社会保険料の場合、「労務費」で処理します。)

給料を支払った月と社会保険料を納付する月が異なる場合は、会社負担分の社会保険料は経過勘定(未払費用)を用いて見越計上し、期間的に対応させます。

 

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