地方消費税の中間納付譲渡割額の税率(22/78)の計算順序の注意点

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

地方消費税の譲渡割額は、国税である消費税額を課税標準として、22/78を乗じて計算します。

大抵の場合は、「22/78」を掛ける際、どのような順序で計算しても同じ金額になるのですが、国税である消費税額が3,900の倍数の金額である場合に限っては、「22/78」を掛ける際の計算順序を意識する必要があるのです。

今回は、地方消費税の中間納付譲渡割額の税率(22/78)の計算順序の注意点について解説したいと思います。

 

スポンサーリンク

地方消費税の譲渡割額とは

地方消費税は、消費税と同様、国内で行われる資産の譲渡や役務の提供などの国内取引と、外国貨物を保税地域から引き取る輸入取引いずれにも課税されますが、国内取引に課されるものを「譲渡割」、輸入取引に課されるものを「貨物割」といいます。

消費税及び地方消費税10%の内訳は、国税7.8%、地方税2.2%となっているため、地方消費税は、国税である消費税額を課税標準として、22/78を乗じて計算します。

(軽減税率8%が適用される場合の内訳は国税6.24%、地方税1.76%となっていますが、割合は1.76/6.24=22/78となるため、標準税率か軽減税率かは関係なく、22/78を乗じて計算します。)

地方消費税額=消費税額(国税)×22/78(百円未満切捨)

例えば、国税である消費税額が940,900円であった場合、地方消費税は940,900円×22/78=265,382.051…円 → 265,300円(百円未満切捨)と求めます。

 

スポンサーリンク

22/78を先に計算するか後で計算するかで金額が変わることがある

中間納付額の国税部分の金額が3,900の倍数でない場合

上記数値例(国税940,900円)の場合、計算順序は特に気にしなくても、地方消費税額は同じ金額になります。

940,900円×22÷78=265,382.051…円 → 265,300円(百円未満切捨)となります。

一方、先に22/78=0.282051…を計算してから、小数の値を国税の消費税額にかけても、

940,900円×0.282051…=265,382.051…円 → 265,300円(百円未満切捨)となり、同じ計算結果になります。

中間納付額の国税部分の金額が3,900の倍数である場合

国税の金額が3,900の倍数である場合は、計算結果が100円ずれることがあるのです。(なぜ3,900の倍数だとずれるのかは後述します。)

例えば、国税である消費税額が780,000円の場合、「22/78」を分数のまま乗じると

780,000円×22/78=220,000円となります。

一方、先に22/78=0.282051…を計算してから、小数の値を国税の消費税額にかけると

780,000円×0.282051…=219,999.999…円 → 219,900円(百円未満切捨)

となり、計算結果が100円ずれることになります。

では、「22/78」は、分数のままかけるのか、先に計算して小数の値のままかけるのか、どちらが正しいのでしょうか?

 

スポンサーリンク

確定申告のときは、先に計算して小数の値のままかける

地方消費税の計算方法について規定している地方税の条文を見ると、次のような規定があります。

(地方消費税の税率)
第七十二条の八十三 地方消費税の税率は、七十八分の二十二とする。

(譲渡割の確定申告納付)
第七十二条の八十八 消費税法第四十五条第一項の規定により消費税に係る申告書を提出する義務がある事業者(承継相続人を含み、当該申告書に記載すべき同項第四号に掲げる消費税額がある者に限る。)は、当該申告書の提出期限までに、当該消費税額、これを課税標準として算定した譲渡割額その他必要な事項を記載した申告書を譲渡割課税道府県の知事に提出し、及びその申告に係る譲渡割額を当該譲渡割課税道府県に納付しなければならない。
・・・(後略)・・・

地方消費税の税率について「七十八分の二十二とする。」と別個に規定されており、確定納付額については、「これを課税標準として算定した譲渡割額」と規定されているため、「22/78」について別個に計算(22/78=0.282051…)し、小数の値にしてから課税標準である国税の消費税額に乗じて地方消費税額を計算することになります。

したがって、確定納付税額は、国税である消費税額が78の倍数である場合は、「22/78」を分数のまま計算する場合より100円少なく計算されます。

地方消費税の確定納付額は、「22/78」を先に計算して小数(0.282051…)にしてからかける。
(例)780,000円×0.282051…=219,999.999…円 → 219,900円(百円未満切捨)

 

中間納付の場合、見解が分かれている

では、中間納付額の計算については、「22/78」を分数のままかけるのか、先に別個に計算して小数のまかけるのか、どちらが正しいのでしょうか?

実は、この中間納付の場合の解釈については見解が分かれており、どちらが正しいのか決まっていないというのが現状のようです。

地方税法の条文上、地方消費税の中間納付額について次のように規定されています。

(譲渡割の中間申告納付)
第七十二条の八十七
・・・(中略)・・・
3 消費税法第四十二条第六項(同条第八項又は同法第四十三条第一項の規定が適用される場合を含む。)の規定により消費税に係る申告書を提出する義務がある事業者(承継相続人を含む。)は、当該申告書の提出期限までに、同法第四十二条第六項第一号に掲げる金額(同法第四十三条第一項各号に掲げる事項を記載した申告書を提出する場合には、同項第四号に掲げる金額)、当該金額に七十八分の二十二を乗じて得た金額その他必要な事項を記載した申告書を譲渡割課税道府県の知事に提出し、及びその申告した金額に相当する譲渡割を当該譲渡割課税道府県に納付しなければならない。この場合において、当該事業者が当該申告書を当該提出期限までに提出しなかつたときは、第一項後段の規定を準用する。

上記引用部分は六月中間申告についての規定です。第1項、第2項において、一月中間申告、三月中間申告についての同様の規定が設けられています。

さて、地方消費税の中間納付額についてですか、「当該金額に七十八分の二十二を乗じて得た金額」と規定されており、確定納付額のときのように税率が別個に規定されているわけではないので、条文の規定通り課税標準額に22/78を分数のままそのまま乗じるのか、確定納付額の計算に準じて22/78=0.282051…と別個に計算してから小数の値を課税標準額に乗じるのか、見解が分かれており、税務署でさえ計算方法が統一されていないようです。

地方消費税の中間納付額は、「22/78」を先に計算して小数(0.282051…)にしてからかけるか、分数のままかけるか見解が分かれている。
(例)
780,000円×0.282051…=219,999.999…円 → 219,900円(百円未満切捨)
780,000円×22/78=220,000円
↑どちら正しいか見解が分かれている

 

税務署から送付される納付書に従っておくのが無難

中間申告書の提出月になると税務署から消費税額及び地方消費税額が印字された納付書と中間申告書が送付されてきます。

地方税の中間納付額の計算方法は見解が分かれているため、会計ソフトや税務申告ソフトで算出された金額と税務署から送付された納付書に記載された金額が一致しない場合もあり得ますが、その場合はお上に従い、税務署から送付された納付書の金額を支払っておくのが最も無難です。

 

国税の消費税額が3,900の倍数でない場合は金額がズレることはない

なぜ分数のまま計算する場合と、小数にしてから計算する場合とで結果が異なるのかというと、小数にしている場合は、本来なら数学的には同一とみなされる無限小数(例えば、0.9999…=1)を、税務上は異なる演算と考えるからです。

「22/78」を乗じるケースで考えると、先に小数の値にしてからかける場合、本来なら「22/78=0.282051…」と無限小数が続くものを、小数点未満の任意の位で切り捨てをして計算していることになります。

これを数学的に表現するなら、とても小さい任意の実数「ε」を用いて、先に小数の値にしてからかける場合に乗じる値は、「22/78」ではなく「22/78-ε」と表すことができます。

したがって、既出の数値例で表すと、国税である消費税額が940,900円である場合の地方消費税額は、「22/78」を先に小数の値にしてからかける場合は

940,900円×(22/78-ε)=265,382.051…円-940,900円×ε

と表せます。「ε」はとても小さい(例えるなら、940,900を掛けてもなお0.000000000000001とかくらい小さい)ので、百円未満切捨の場合、分数のまま乗じても小数にしてから乗じても計算結果に影響を及ぼしません。

一方、「22/78」の分母が割り切れてしまう場合は話が違います。

国税である消費税額が780,000円である場合の地方消費税額は、「22/78」を先に小数の値にしてからかける場合は

780,000円×(22/78-ε)=220,000円-780,000円×ε

となります。この場合、「ε」はいくら小さいとはいえ0ではないため、ぴったり整数となっている値からほんの少し引くことになり、分数のまま掛ける場合と比べて計算結果が変わってしまいます。

では、どのような場合に、分数のまま計算する場合と小数にしてから計算する場合とで結果が異なることになるのでしょうか?

それは、国税の消費税額に「22/78」を乗じた際に、ぴったり綺麗な整数になる場合、つまり、国税の消費税額が78で割り切れる場合です。

地方消費税額は国税の消費税額に「22/78」を乗じて計算しますが、分母の78を素因数分解すると

78=2×3×13

となります。

一方、課税標準となる国税の消費税額は、百円未満切り捨てされた金額となっているため、「100a」と表したうえで素因数分解をすると

100a=2×2×5×5×a

となります。これが2と3と 13を因数として持つ数字であれば、78で綺麗に割り切れることになります。

なお、課税標準となる国税の消費税額は100の倍数となっておりすでに2を因数として持っているため、aが3と13を因数にもつ数値であれば、78で割り切れることになります。

この場合の最小公倍数は2×2×5×5×3×13=3,900であるため、課税標準となる国税の消費税額が3,900の倍数であれば、中間納付譲渡割額の金額は、「22/78」を分数のまま計算する場合と小数にしてから計算する場合とで計算結果が異なることになります。

逆にいえば、3,900の倍数でない場合は、分数のまま計算しても小数にしてから計算しても、計算結果は変わらないということになります。

 

(参考)納付額全体から国税と地方税の内訳を計算する方法

次の記事では、国税と地方税を合わせた納付額全体から、国税と地方税の内訳を計算する方法について解説しています。

中間納付額を「22/78」の分数のまま乗じた場合でも、小数(0.282051…)にして乗じた場合でも、上記の記事の計算方法で内訳の計算ができます。

 

まとめ

課税標準となる国税の消費税額が3,900の倍数である場合、地方税の中間納付額を計算する際の「22/78」の乗じ方について、分数のまま乗じるか、小数(0.282051…)にしてから乗じるかにより、計算結果が100円違ってしまいます。

どちらの方法が正しいかは見解が分かれており、税務署でさえ計算方法が統一されていない現状のようです。

税務署から送られてくる納付書の金額と、会計ソフト・税務申告ソフトで計算された結果と異なる場合がありますが、その場合はお上の指示に従い、納付書に記載された金額を払っておくのが無難でしょう。

 

スポンサーリンク
その隙間時間、もったいないと思いませんか?

通勤・通学中などの隙間時間は、有効に使えていますか?1日にしたらたった数十分程度の時間でも、塵も積もれば山となって膨大な時間となります。もし1日30分の隙間時間があったとしたら、1年に換算すると182.5時間になります。これだけの時間を有効活用することができたら、非常に大きなアドバンテージとなります。

消費税法一問一答アプリでは、隙間時間を有効活用して消費税の課否判定のトレーニングができるのはもちろん、アプリケーションプログラムを利用して短時間で多くの問題を解くことができるため、紙ベースの問題集よりもはるかに高い効率性で消費税の学習ができます!

おすすめ記事