街中を歩いている際に、免税店(tax-free)を見かけることがあります。
外国人旅行客など、一定の条件を満たす人が、免税店(tax-free)において、国外に持ち出すことを条件に商品を購入した場合、消費税が免除されるため、他のお店で買うよりも安く購入することができます。
この制度は、外国人だけでなく、海外在住の日本人が一時帰国した場合などにも適用されます。(この点については、詳しくは次の記事で解説しています。)
しかし、近年この制度を悪用し、日本在住でこの制度の適用対象とならない人が、海外在住の家族や友人などが日本に来た際に、自分が使いたい商品を免税店で代わりに消費税免除で買ってもらい、それを譲り受ける行為が多発しているそうです。
イラストで示すと、次のようになります。
今回は、このような、友人や家族が市内免税店で免税購入した商品を譲り受けたら違法になるのかについて解説したいと思います。
免税店で消費税が免除される理由
免税店(tax-free)とは、消費税法第8条に規定する「輸出物品販売場」の許可を受けたお店のことをいいます。
以下のシンボルマークがついたお店が免税店(tax-free)です。
「輸出物品販売場」で外国人などが国外に持ち出す物品を購入した場合は、消費税が免除されます。
この制度は、消費税は国内において消費される物やサービスに対して課税することとする「消費地課税主義」という考え方にもとづいて作られています。
外国人などが日本で商品を買ったとしても、その商品を日本国内で消費・使用しないのであれば、その商品に対して日本の消費税を課すのは適切ではありません。
したがって、外国人などが日本国内で消費せず、外国に持ち出すことが明らかな物品を購入した場合は、消費税を免除することとされているのです。
免税購入した商品を国内で譲り受ける行為は違法
では、免税店で、外国人である家族や友人などが購入した商品を代わりに買ってもらい、国内で使用する行為は違法になるのでしょうか?
結論から言うと、そのような行為は違法となります。
この点については、消費税法第8条第4項の条文にしっかりと明記されています。
(輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税)
第八条 輸出物品販売場を経営する事業者が、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第六条第一項第六号(定義)に規定する非居住者(以下この条において「非居住者」という。)に対し、政令で定める物品で輸出するため政令で定める方法により購入されるものの譲渡(第六条第一項の規定により消費税を課さないこととされるものを除く。)を行つた場合(政令で定める場合にあつては、当該物品の譲渡に係る第二十八条第一項に規定する対価の額の合計額が政令で定める金額以上となるときに限る。)には、当該物品の譲渡については、消費税を免除する。
・・・(中略)・・・
4 第一項に規定する物品で、非居住者が輸出物品販売場において同項に規定する方法により購入したものは、国内において譲渡又は譲受け(これらの委託を受け、若しくは媒介のため当該物品を所持し、又は譲渡のためその委託を受けた者若しくは媒介をする者に所持させることを含む。以下この項及び次項において同じ。)をしてはならない。ただし、当該物品の譲渡又は譲受けをすることにつきやむを得ない事情がある場合において、当該物品の所在場所を所轄する税務署長の承認を受けたときは、この限りでない。
上記太字部分で記されているように、免税店で免税購入した商品を譲渡又は譲受けすることは禁止されています。
そもそも、免税店(輸出物品販売場)で消費税免除で販売される商品は、国内で消費されないということを前提に消費税を免除しているので、国外に持ち出さず国内で消費されるのであれば制度の趣旨に真っ向から反するため、やむを得ない理由がある場合を除いて、国内で譲り渡すことは認められません。
国内で譲り受けた場合は消費税分が徴収される
免税店で免税購入した商品が、もし国内で譲渡された場合はどうなるのでしょうか?
その場合の処置については、消費税法第8条第5項において、次のように規定されています。
5 国内において前項に規定する物品の譲渡又は譲受けがされたときは、税務署長は、同項ただし書の承認を受けた者があるときはその者から、当該承認を受けないで当該譲渡又は譲受けがされたときは当該物品を譲り渡した者(同項本文に規定する所持をさせた者を含むものとし、これらの者が判明しない場合には、当該物品を譲り受けた者又は当該所持をした者とする。)から当該物品の譲渡についての第一項の規定による免除に係る消費税額に相当する消費税を直ちに徴収する。ただし、既に第二項本文に規定する場合に該当する事実が生じている場合又は第三項本文の規定の適用があつた場合は、この限りでない。
上記太字部分の通り、免税購入した商品が国内で譲り渡された場合は、輸出免税の適用はないため、その商品の消費税相当額が徴収されることとなります。
(追記)令和5年税制改正により「譲り受けた者」も納付義務が課されることに
令和5年度税制改正により、外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)について、免税購入された物品の税務署長の承認を受けない譲渡又は譲受けがされた場合には、当該物品を譲り受けた者に対して譲り渡した者と連帯してその免除された消費税を納付する義務を課すこととされました。
この改正は、令和5年5月1日以後に行われる課税資産の譲渡等に係る税務署長の承認を受けない譲渡又は譲受けについて適用されます。
なお、令和5年度税制改正については次の記事で詳しく解説しています。
さらに罰則もあり
消費税額が徴収されるだけで終わりではありません。
それだけで済むのなら、バレたら最悪消費税分だけ払えばいいやということで、制度を悪用する人が多発してしまいます。
そのため、免税購入した商品が国内で譲り渡されたことが発覚した場合は、消費税相当額の徴収のみならず、消費税法第65条第1項において次のような罰則規定が設けられています。
第六十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第八条第四項本文の規定に違反して同項ただし書の承認を受けないで同項の物品の譲渡又は譲受け(これらの委託を受け、若しくは媒介のため当該物品を所持し、又は譲渡のためその委託を受けた者若しくは媒介をする者に所持させることを含む。)をした者
このように、「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」というなかなか重い罰則が設けられています。
免税購入した商品を譲渡した側も譲り受けた側も両方とも処罰の対象となります。
まとめ
免税店の商品を、外国人である家族や友人などに代わりに消費税免税で購入してもらい、それを譲り受ける行為は消費税法違反となります。
「お得に買い物をするための節約術♪」というくらいの感覚で、あまり罪の意識もなく軽い気持ちで代わりに買ってもらっている方もいるかもしれません。
しかし、それはれっきとした犯罪行為(消費税法違反)であり、発覚した場合は免税購入した商品の消費税相当額が徴収されるだけでなく、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処される可能性があるため、絶対にやらないようにしましょう。