令和5年度(2023年度)税制改正大綱の消費税法に関する改正点まとめ

政府与党の自民・公明両党が本日16日、令和5年度税制改正大綱を発表しました。

PDFデータ:令和5年度税制改正大綱

(消費税に関する改正事項はp.77以降に書かれています。)

今回は、令和5年度税制改正大綱のうち、消費税に関する改正点をまとめました。

令和5年度税制改正の内容は、すべて適格請求書等保存方式に係る見直しに関するものでした。

令和5年(2023年)10月1日からスタートするインボイス制度(適格請求書等保存方式)に関して、新たに課税事業者となった小規模事業者に対する優遇措置が設けられることとなりました。

概要は以下の通りです。

 

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適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置

① 適格請求書発行事業者の令和5年 10 月1日から令和8年9月 30 日までの日の属する各課税期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる場合には、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、当該課税標準額に対する消費税額に8割を乗じた額とすることにより、納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割とすることができることとする。
(注1)上記の措置は、課税期間の特例の適用を受ける課税期間及び令和5年10 月1日前から課税事業者選択届出書の提出により引き続き事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる同日の属する課税期間については、適用しない。
(注2)課税事業者選択届出書を提出したことにより令和5年 10 月1日の属する課税期間から事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる適格請求書発行事業者が、当該課税期間中に課税事業者選択不適用届出書を提出したときは、当該課税期間からその課税事業者選択届出書は効力を失うこととする。
② 適格請求書発行事業者が上記①の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記するものとする。
③ 上記①の適用を受けた適格請求書発行事業者が、当該適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を納税地を所轄する税務署長に提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を認めることとする。
④ その他所要の措置を講ずる。

上記内容を、多少の語弊を恐れずに簡単にまとめると次のようになります。

・令和5年 10 月1日から令和8年9月 30 日までの日の属する各課税期間までに新たに課税事業者となる場合、納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割にできる。(=実質的に簡易課税の第二種と同じ。本来の計算方法と選択適用可能。課税期間を短縮している場合や令和5年 10 月1日より前から課税事業者の場合は適用不可。)
・令和5年 10 月1日の属する課税期間は、課税事業者選択届出書の誤提出によりインボイス制度がスタートする前の期間について課税事業者となってしまった場合、課税期間の途中でも課税事業者をやめることができる。
・「納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割にする経過措置」の適用を受けた課税期間の翌課税期間は、簡易課税を前課税期間末日までに提出していなくも適用することができる。

納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割にできる特例

この経過措置は、新たに課税事業者になることにより利益を圧迫されることになるフリーランスなどの小規模事業者に対する配慮から設けられたものと考えられます。

小規模事業者の税負担を抑えるために、令和5年 10 月1日から令和8年9月 30 日までの日の属する各課税期間までに新たに課税事業者となる場合は、納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割にできるという経過措置が設けられました。

これは、実質的に簡易課税制度を採用している場合の第二種事業(小売業等)に係る計算と同じです。

この経過措置は、行っている事業の内容にかかわらずどの事業者でも納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割とすることができます。

簡易課税制度のように事前に届出書の提出が必要なものではなく、申告書に付記することにより経過措置の適用を受けるか否か選択することができます。

つまり、従来通りの計算方法による納付税額と経過措置による納付税額のうち有利な方を選択することができるのです。

なお、令和5年 10 月1日より前から課税事業者の場合は適用することはできません。また、この規定は小規模事業者の納税に係る事務手続きに配慮したものと考えられるため、課税期間をわざわざ短縮して申告しているような事務手続きに余裕がある事業者に対してはこの経過措置は認められないので注意しましょう。

数値例
当社は、従来まで免税事業者であったが、適格請求書発行事業者の登録申請書の提出により当課税期間(令和5年10月1日~令和6年9月30日)から新たに課税事業者となり、また、適格請求書発行事業者となった。
[パターン①]
課税方式:原則課税
課税標準額に対する消費税額:100万円
控除対象仕入税額:70万円
[パターン②]
課税方式:原則課税
課税標準額に対する消費税額:100万円
控除対象仕入税額:90万円
[パターン③]
課税方式:原則課税
課税標準額に対する消費税額:100万円
控除対象仕入税額:120万円
[パターン④]
課税方式:簡易課税
当社が行う事業:すべて製造業(第三種事業:みなし仕入率70%)
課税標準額に対する消費税額:100万円
[パターン⑤]
課税方式:簡易課税
当社が行う事業:すべて卸売業(第一種事業:みなし仕入率90%)
課税標準額に対する消費税額:100万円

[パターン①]

本来の計算方法による納付税額=100万円-70万円=30万円

経過措置による納付税額=100万円-100万円×80%=20万円

30万円>20万円 ∴経過措置による方が有利

この場合、確定申告書に経過措置を適用する旨を付記することにより納付税額は20万円となります。

[パターン②]

本来の計算方法による納付税額=100万円-90万円=10万円

経過措置による納付税額=100万円-100万円×80%=20万円

10万円<20万円 ∴本来の計算方法による方が有利

この場合、経過措置は適用せず、本来の計算方法により納付税額は10万円となります。

[パターン③]

本来の計算方法による納付税額=100万円-120万円=△20万円(還付)

経過措置による納付税額=100万円-100万円×80%=20万円

△20万円<20万円 ∴本来の計算方法による方が有利

この場合、経過措置は適用せず、本来の計算方法により20万円の還付を受けられます。

[パターン④]

本来の計算方法による納付税額=100万円-100万円×70%=30万円

経過措置による納付税額=100万円-100万円×80%=20万円

30万円>20万円 ∴経過措置による方が有利

この場合、確定申告書に経過措置を適用する旨を付記することにより納付税額は20万円となります。

[パターン⑤]

本来の計算方法による納付税額=100万円-100万円×90%=10万円

経過措置による納付税額=100万円-100万円×80%=20万円

10万円<20万円 ∴本来の計算方法による方が有利

この場合、経過措置は適用せず、本来の計算方法により納付税額は10万円となります。

(注)原則課税と簡易課税の有利選択はできないので注意しましょう。

令和5年 10 月1日の属する課税期間は、課税期間の途中でも課税事業者をやめることができる特例

令和5年 10 月1日の属する課税期間は、課税期間の途中でも課税事業者をやめることができることとされる措置が設けられました。

この経過措置の意図は、誤って令和5年10 月1日よりも前の期間から課税事業者の選択をしてしまった事業者に対する救済措置だと考えられます。

インボイス制度がスタートする令和5年10月1日~令和11年9月30日までの日を含む課税期間についてだけは特別に、それまでは免税事業者でも、課税期間の途中から課税事業者となることができるという特例措置が設けられています。

例えば、当課税期間が1月1日~12月31日までの場合、令和5年1月1日~9月30日までは免税事業者、令和5年10月1日~12月31日までは課税事業者となることができます。

課税期間の途中から課税事業者となる場合の図

このように、令和5年1月1日~9月30日までは免税事業者で、令和5年10月1日から課税事業者となり適格請求書発行事業者となりたい場合は、原則として令和5年3月31日まで※に「適格請求書発行事業者の登録申請書」のみを提出する必要があります。

(※ 提出期限は建前上3月31日までとされていますが、困難な事情があれば9月30日まででも大丈夫とされています。困難な事情についてはその程度を問わないこととされており、極端な話「腰が痛い」といった理由でもOKなので実質的に提出期限は9月30日となります。)

しかし、課税事業者となるためには、課税事業者選択届出書も一緒に提出しなければならないと勘違いしている方も多いだろうと考えられます。

もし課税事業者選択届出書も一緒に令和4年12月31日までに提出してしまった場合は、令和5年1月1日から課税事業者となってしまい、インボイス制度がスタートする前の期間(令和5年1月1日~9月30日)についても消費税を納める義務が生じてしまいます。

このようなミスによる提出があった場合でも、インボイス制度がスタートする前の期間(令和5年1月1日~9月30日)について免税事業者となれるように、令和5年10月1日の属する課税期間については、課税事業者選択不適用届出書を提出することにより、課税事業者選択届出書の効力を無効にすることができます。

(本来なら、いったん課税事業者選択届出書を提出したら、原則として2年間は課税事業者を継続適用しないといけません。令和5年10月1日の属する課税期間のみの特例措置となります。)

(課税事業者選択届出書の効力が無効になっても、適格請求書発行事業者の登録申請書を令和5年3月31日まで(実質9月30日まで)に提出した場合の特例により、令和5年10月1日から課税事業者となります。)

また、先ほど解説した「納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割にできる特例」(以下「2割特例」といいます。)は、「令和5年10 月1日前から課税事業者選択届出書の提出により引き続き事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる同日の属する課税期間については、適用しない」こととされているため、もし令和5年10月1日よりも前の期間から課税事業者を選択していた場合は、令和5年10月1日以後の課税期間については2割特例を受けることができなくなってしまいます。

そこで、せっかく自ら課税事業者を選択しインボイスの発行事業者になろうとしていた事業者が、このようなミスにより2割特例を受けることができなくなってしまったら批判が殺到することになるため、救済措置として令和5年10月1日の属する課税期間については、課税事業者選択不適用届出書を提出することにより、課税事業者選択届出書の効力を無効にすることがでできるようにされたのだと考えられます。

令和5年 10 月1日の属する課税期間は、課税期間の途中でも課税事業者をやめることができる特例の図

先述の2割特例が受けられるのは、令和5年10月1日から課税事業者になる事業者に限られることに注意しましょう。

もし2割特例を受けたいのに、フライングで令和5年10月1日よりも前の期間から課税事業者となってしまった場合は、この特例により、後出しで課税事業者選択不適用届出書を提出して、令和5年10月1日から課税事業者となるようにしましょう。

2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間の簡易課税の適用に関する措置

上述の「納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割にする経過措置」の適用を受けた課税期間の翌課税期間は、簡易課税制度選択届出書を前課税期間末日までに提出していなくも、事後的に提出することにより適用することができることとされました。

有利選択により本来の計算方法を適用し、「納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割にする経過措置」の適用を受けなかった場合は、その翌課税期間についてこの取り扱いはないので注意しましょう。

このように制限が設けられているのは、簡易課税を選択したら2年間は縛られるのと同様、計算方式を自由に変更することができると、取引のタイミング等を調整するなどして納付税額・還付税額を恣意的に操作できるようになってしまうため、そうできないように一定の制限をかけているのだと考えられます。

 

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一定規模以下の事業者は1万円未満の課税仕入れにつき帳簿の保存のみで仕入税額控除可能に

基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が 5,000 万円以下である事業者が、令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除を認める経過措置を講ずる。

一定規模以下(基準期間における課税売上高1億円以下又は特定期間における課税売上高5千万円以下)の事業者は、課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿の実を保存すれば適格請求書等(インボイス)がなくても仕入税額控除を行うことができることとされました。

インボイス制度の導入前から、3万円未満の取引については請求書等の保存がなくても、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められていましたが、この取り扱いを金額を減額しかつ一定規模以下の事業者に限定した上で踏襲したものと考えられます。

 

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1万円未満の売上返還等につき適格返還請求書の交付が不要に

売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務を免除する。
(注)上記の改正は、令和5年 10 月1日以後の課税資産の譲渡等につき行う売上げに係る対価の返還等について適用する。 

税込価額が1万円未満の売上返還等については、適格返還請求書の交付義務が免除されることとなりました。

この取扱いは、売掛金を銀行振り込みにより決済する場合の振込手数料に係る取り扱いを念頭においたものだと考えられます。

銀行の振込手数料は、課税仕入れとして処理するか売上返還等として処理するか選択適用が認められています。

これにより、インボイス制度スタート後も、振込手数料は売上返還等として処理することにより、その都度取引先から適格返還請求書の交付を受けたり、銀行からインボイスの交付を受ける必要がなくなります。

 

適格請求書発行事業者の登録(取り消し)期間が1か月から15日へ短縮

(4)適格請求書発行事業者登録制度について、次の見直しを行う。
① 免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、当該課税期間の初日から起算して15 日前の日(現行:当該課税期間の初日の前日から起算して1月前の日)までに登録申請書を提出しなければならないこととする。この場合において、当該課税期間の初日後に登録がされたときは、同日に登録を受けたものとみなす。
② 適格請求書発行事業者が登録の取消しを求める届出書を提出し、その提出があった課税期間の翌課税期間の初日から登録を取り消そうとする場合には、当該翌課税期間の初日から起算して 15 日前の日(現行:その提出があった課税期間の末日から起算して 30 日前の日の前日)までに届出書を提出しなければならないこととする。
③ 適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置の適用により、令和5年10 月1日後に適格請求書発行事業者の登録を受けようとする免税事業者は、その登録申請書に、提出する日から 15 日を経過する日以後の日を登録希望日として記載するものとする。この場合において、当該登録希望日後に登録がされたときは、当該登録希望日に登録を受けたものとみなす。
(注)上記の改正の趣旨等を踏まえ、令和5年 10 月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者が、その申請期限後に提出する登録申請書に記載する困難な事情については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする。

従来まで、適格請求書発行事業者の登録申請書を提出してから登録されるまでの期間は1か月とされてきましたが、15日に短縮されることとなりました。

適格請求書発行事業者の登録の取り消しについても同様、従来までは1か月でしたが15日に短縮されました。

なお、令和5年 10 月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けたい事業者は、申請期限(令和5年3月31日)までに登録申請書を提出する必要がありますが、困難な事情がある場合は、令和5年9月 30 日までに登録申請書にその困難な事情を記載して提出し、税務署長により適格請求書発行事業者の登録を受けたときは、令和5年 10 月1日に登録を受けたこととみなされる経過措置があります。

困難の事情についてはその度合いを問わないこととされているため、極端な話「腰が痛い」などの事情でも認められることとされています。そのため、実質的に令和5年9月 30 日までに登録申請書を提出すれば適格請求書発行事業者の登録を受けることができるようになっていました。

今回の改正では、もはや「困難な事情」が何であるか付記する必要すらなくなりました。

 

認定設置運営事業者のカジノ業務に係るものとして経理される課税仕入れ等の仕入税額控除の制限

特定複合観光施設区域整備法の規定により認定設置運営事業者のカジノ業務に係るものとして経理される課税仕入れ等については、仕入税額控除制度の適用を認めないこととし、それに伴い、次の調整措置その他所要の措置を講ずる。ただし、当該認定設置運営事業者のその課税期間における資産の譲渡等の対価の額の合計額にカジノ業務に係る収入の合計額を加算した金額のうちに、当該カジノ業務に係る収入の合計額の占める割合が5%を超えない場合には、当該課税仕入れ等について仕入税額控除制度の対象とする。
(1)認定設置運営事業者が、調整対象固定資産に係る課税仕入れ等の税額(以下「調整対象税額」という。)についてカジノ業務以外の業務(以下「非カジノ業務」という。)の用に供するものとして仕入税額控除制度の適用を受けた場合において、当該調整対象固定資産を課税仕入れ等の日から3年以内にカジノ業務の用に供したときは、当該カジノ業務の用に供した日に応じた一定の割合を乗じた調整対象税額を同日の属する課税期間における仕入れに係る消費税額から控除し、当該控除をした後の金額を当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。
(2)認定設置運営事業者が、調整対象税額についてカジノ業務の用に供するものとして仕入税額控除制度の適用を受けなかった場合において、当該調整対象固定資産を課税仕入れ等の日から3年以内に非カジノ業務の用に供したときは、当該非カジノ業務の用に供した日に応じた一定の割合を乗じた調整対象税額を同日の属する課税期間における仕入れに係る消費税額に加算し、当該加算をした後の金額を当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に開始する課税期間から適用する。

カジノ業務に係る売上(不課税売上げ)に対応する課税仕入れについては仕入税額控除できないこととされました。

カジノに係る売上は、ギャンブルの掛け金に係るものなので、課税の対象の4要件の「対価を得て行うものであること」「資産の譲渡等であること」の要件を満たさず、不課税売上となります。

そのため、国内におけるカジノ業務に係る課税仕入れについて仕入税額控除を行うことにより、その分まるまる還付を受けられることとなり実質的に消費税を払わずに設備等を購入することができることになってしまいます。

しかし、それでは他の民間の娯楽施設業者との間で課税上の不公平が生じてしまうこととなります。(なお、他のギャンブル業務は、競馬や宝くじは公営であり、民間のパチンコ屋や麻雀屋の売上は施設の使用料として課税売上げなのでこのような問題は生じていませんでした。)

そこで、令和5年度税制改正では、特定複合観光施設区域整備法の規定により認定設置運営事業者のカジノ業務に係るものとして経理される課税仕入れ等については、仕入税額控除制度の適用を認めないこととされました。

なお、カジノ業務用から他の用途に転用した場合(その逆についても)には、調整対象固定資産の転用と同じような調整規定となります。

また、カジノ業務に係る収入が全体の5%に満たないほど僅少なときはこの調整措置は受けません。

 

生産設備等の範囲の見直し

電気事業法の改正に伴い、消費税法上の生産設備等の範囲に蓄電用の電気工作物を加えられることとなりました。

 

免税購入された物品を許可なく譲渡した場合の消費税の連帯納付義務

以前書いた記事で、輸出物品販売場制度において購入した商品を税務署長の許可なく譲渡した場合の罰則について解説しました。

今回の改正では、外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)について、免税購入された物品の税務署長の承認を受けない譲渡又は譲受けがされた場合には、当該物品を譲り受けた者に対して譲り渡した者と連帯してその免除された消費税を納付する義務を課すこととされました。

この改正は、令和5年5月1日以後に行われる課税資産の譲渡等に係る税務署長の承認を受けない譲渡又は譲受けについて適用されます。

 

電子決済手段の譲渡が非課税に

資金決済に関する法律の改正に伴い、同法に規定する電子決済手段の譲渡について、消費税を非課税とするほか、所要の措置を講ずることとされました。

022年6月3日に成立した改正資金決済法において、電子決済手段(いわゆる「ステーブルコイン」)という概念が新設されました。

この改正に伴い、消費税法においても電子決済手段の譲渡について非課税取引とされることとなりました。

 

貸倒れの範囲に事業再構築のための計画成立による債権の切捨てが含まれることに

事業再構築のための私的整理法制が整備されることを前提に、消費税に係る貸倒れの範囲に「事業再構築のための計画が成立したことにより債権の切捨てがあったこと」を加えられることとなりました。

 

更生緊急保護に係る医療について引き続き非課税に

刑法等の一部を改正する法律による改正後の更生保護法の規定に基づく更生緊急保護に係る医療について、引き続き消費税を非課税とすされます。

 

一定の基準を満たす旨の証明書の交付を受けた認可外保育施設において行われる保育について、消費税を非課税

都道府県知事等から国家戦略特別区域内に所在する場合の外国の保育士資格を有する者の人員配置基準等の一定の基準を満たす旨の証明書の交付を受けた認可外保育施設において行われる保育について、消費税が非課税とされます。

 

金融経済教育推進機構(仮称)を消費税法別表第三法人に

金融サービスの提供に関する法律の改正を前提に、金融経済教育推進機構(仮称)を消費税法別表第三法人とされます。

 

原子力発電における使用済燃料再処理機構構が引き続き消費税法別表第三法人

原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律の改正を前提に、使用済燃料再処理機構の業務範囲の見直し等が行われた後も、同機構を引き続き消費税法別表第三法人とされます。

 

福島国際研究教育機構を消費税法別表第三法人に

福島国際研究教育機構の設立に伴い、同機構が消費税法別表第三法人とされます。

 

日米宇宙協力に関する枠組協定(仮称)に基づく保税地域からの引取が免税取引に

日米宇宙協力に関する枠組協定(仮称)の締結を前提に、同協定に基づき保税地域から引き取られる物品に係る消費税は免除されることとなります。

 

特定税関事務管理人が保税地域からの引取りに係る内国消費税に関する一定の事項を処理できるように

税関事務管理人制度の見直しに伴い、税関長が、輸入申告に係る納税管理人及び税関事務管理人を定めなければならない者について特定税関事務管理人を指定したときは、当該特定税関事務管理人は、保税地域からの引取りに係る内国消費税に関する一定の事項を処理することとする等の所要の措置を講じられることとなりました。

上記の改正は、令和5年 10 月1日から施行さえます。

 

輸入許可書等の範囲に電磁的記録が含まれることに

内国消費税について、課税貨物を保税地域から引き取る特例輸入者が帳簿への記載を省略する場合に保存することとされている輸入許可書等の範囲に、これらの書類に係る電磁的記録を含めることとされます。

 

まとめ

実務への影響

実務上、インボイス制度に関する改正点はここ数年の中でも、軽減税率導入に並ぶ大改正となるため、実務への影響は非常に大きなものとなります。

今後、これまで免税事業者だった多くの事業者が課税事業者となり適格請求書発行事業者として登録することになるため、しっかりと制度の概要を理解しておく必要があります。

試験への影響

令和5年度(第73回)税理士試験では、インボイス制度は出題範囲外なので、インボイス制度関連の改正事項については試験勉強への影響はありません。

ただし、令和6年度(第74回)以降の税理士試験では出題範囲に含まれるうえに、実務でも非常に重要度の高い論点となりますので、時間に余裕がある方は先を見据えて、インボイス制度についても多少は勉強しておいた方が良いと思います。

なお、それ以外の改正項目についても、マニアックな論点が多く本試験で出題されそうなものはないため、今回の税制改正の試験への影響はほぼないといっていいでしょう。

 

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