相続・合併・分割があった場合の簡易課税の5千万円判定時の注意点

消費税の計算において簡易課税制度を選択するためには、基準期間における課税売上高が5,000万円以下であり、かつ、原則としてその課税期間開始の日の前日までに簡易課税制度選択届出書を提出している必要があります。

今回は、相続・合併・分割があった場合の簡易課税の基準期間における課税売上高の5,000万円判定に関する注意点について解説したいと思います。

 

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相続があった場合

相続があった場合の相続人の簡易課税の適用の有無に関しては、被相続人の基準期間における課税売上高を考慮する必要はありません。

相続人のみの基準期間における課税売上高が5,000万円以下であれば、相続があった年以降の各課税期間において簡易課税制度の適用を受けることができます。

 

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合併があった場合

合併があった場合の合併法人の簡易課税の適用の有無に関しては、被合併法人の基準期間における課税売上高を考慮する必要はありません。

合併人のみの基準期間における課税売上高が5,000万円以下であれば、合併があった事業年度以降の各課税期間において簡易課税制度の適用を受けることができます。

 

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会社分割があった場合

分割があった場合については、「分割等」であるか「吸収分割」であるかにより取扱いが異なります。

分割等の場合

「分割等」とは「新設分割」「一定の現物出資」「一定の事後設立」をいいます。

分割等があった場合については、その分割等に係る新設分割親法人又は新設分割子法人が簡易課税制度を適用できるかどうかの基準期間における課税売上高の5000万円判定について消費税法施行令55条《仕入れに係る消費税額の控除の特例の適用がない分割等に係る課税期間》に特例が定められています。

この規定によると、新設分割子法人の簡易課税制度の適用の有無は、「分割等があった日の属する事業年度」及び「その翌事業年度」についてはそれぞれ新設分割親法人の基準期間における課税売上高が5,000万円以下であるかどうかで判定し、「その翌々事業年度以後」については、新設分割親法人と新設分割子法人の基準期間における課税売上高の合計額が5,000万円以下であるかどうかで判定します。

ただし、この取り扱いがあるのは「特定要件」に該当する場合のみです。

なお、「特定要件」とは、簡単に言うと新設分割親法人が新設分割子法人の発行済株式の50%超を保有している関係のことをいいます。

「特定要件」に該当しない場合には、分割等の翌々事業年度以後も、各法人ごとに単体で基準期間における課税売上高が5,000万円以下であるかどうかで判定します。

吸収分割の場合

吸収分割の場合は、分割等があった場合のような特例はなく、分割法人及び分割承継法人はそれぞれ各法人ごとに単体で基準期間における課税売上高が5,000万円以下であるかどうかで簡易課税制度の適用の有無を判定します。

 

まとめ

相続・合併・会社分割があった場合において、簡易課税の適用の有無に関する基準期間における課税売上高の5千万円判定に特例が設けられているのは「分割等」があった場合のみです。

相続・合併・吸収分割の場合については特例は設けられておらず、各個人事業者又は各法人ごとに単体で基準期間における課税売上高が5,000万円以下であるかどうかで簡易課税制度の適用の有無を判定します。

組織再編等の形態 簡易課税の適用の判定
相続 特例なし
合併 特例なし
会社分割 分割等 特例あり
吸収分割 特例なし

分割等があった場合の簡易課税制度の判定についての特例の内容は、次の表のとおりです。

判定対象法人 判定対象となる基準期間の課税売上高 根拠法令
新設分割子法人 分割等があった日の属する事業年度(A) 新設分割親法人で判定 消費税法施行令55条1項
(A)の翌事業年度 新設分割親法人で判定 消費税法施行令55条2項
(A)の翌々事業年度以後 新設分割親法人と新設分割子法人の合計で判定(注) 消費税法施行令55条3項
新設分割親法人 分割等があった日の属する事業年度(B) 新設分割親法人で判定 消費税法37条1項
(B)の翌事業年度 新設分割親法人で判定 消費税法37条1項
(B)の翌々事業年度以後 新設分割親法人と新設分割子法人の合計で判定(注) 消費税法施行令55条4項

(注)「特定要件」に該当する場合のみ。「特定要件」に該当しない場合は、各法人ごとに単体で基準期間における課税売上高が5,000万円以下であるかどうかで簡易課税制度の適用の有無を判定します。

 

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