簡易課税の計算において、複数の種類の事業を営んでいる場合は、「特定一事業」又は「特定二事業」の課税売上高の占める割合が75%以上の場合は、特例計算が認められています。
この点については、詳しくは次の記事をご覧ください。
今回は、売上げに係る対価の返還等に係る消費税額を控除しきれない事業の取り扱いについて解説します。
複数の事業を行っている場合の簡易課税の計算方法
簡易課税制度では、事業区分に応じて、各事業ごとに次のようにみなし仕入率が設定されています。
事業区分 | 主な業種 | みなし仕入率 |
第一種事業 | 卸売業 | 90% |
第二種事業 | 小売業 | 80% |
第三種事業 | 製造業 | 70% |
第四種事業 | その他の事業 | 60% |
第五種事業 | サービス業 | 50% |
第六種事業 | 不動産業 | 40% |
事業区分が異なる複数の課税売上げがある場合は、消費税法施行令第57条に定められた方法により適用されるみなし仕入率を計算します。
適用される みなし仕入率の計算方法は、次の3種類があります。
なお、課税売上げについて事業の区分がされていないときは、その事業者が行っている事業のうち最も低いみなし仕入率を適用します。
特定1事業・特定2事業の判定に用いる金額
複数の事業を営んでいる場合に、簡易課税の計算において特定1事業・特定2事業の特例の適用があるかどうかは、特定の一又は二の事業に係る課税売上高がその課税期間の課税売上高の総額に占める割合が75%以上であるかどうかにより判定を行います。
なお、特定1事業・特定2事業の判定に用いる金額は、各事業の課税売上高(税抜)からその各事業に係る売上対価の返還等の金額(税抜)を控除した残高に基づいて行うこととされています。
売上対価の返還等に係る消費税額を控除しきれない場合は0円として扱う
簡易課税における特定1事業・特定2事業の特例計算について規定している消費税法施行令第57条では「控除した残額」と規定しています。
3 前項の場合において、次に掲げる場合に該当するときは、法第三十七条第一項第一号に規定する政令で定める率は、前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める割合とすることができる。
一 当該事業者の当該課税期間における課税売上高(当該課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等(法第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この条において同じ。)の対価の額の合計額から当該課税期間中に行つた売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額をいう。次号において同じ。)のうちに当該課税期間中に国内において行つた特定一事業(第一項各号に掲げる事業又は第四種事業のうち一の事業をいう。)に係る課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から当該課税期間中に行つた当該特定一事業に係る売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額の占める割合が百分の七十五以上である場合 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める割合
イ 当該特定一事業が第一種事業である場合 百分の九十
ロ 当該特定一事業が第二種事業である場合 百分の八十
ハ 当該特定一事業が第三種事業である場合 百分の七十
ニ 当該特定一事業が第四種事業である場合 百分の六十
ホ 当該特定一事業が第五種事業である場合 百分の五十
ヘ 当該特定一事業が第六種事業である場合 百分の四十
「残額」という表現は、マイナスの値を含まない表現になります。
そのため、売上返還等の金額の方が課税売上高よりも多く、売上対価の返還等に係る消費税額を控除しきれない場合は、マイナスの金額として取り扱うのではなく「0円」として取り扱うことになります。
まとめ
簡易課税の特定1事業・特定2事業の特例計算において、特定の事業において課税売上高から売上対価の返還等の金額を控除しきれない場合は、「控除した残額」は0円として取り扱います。