簡易課税でも免税売上げや非課税売上げを区分経理する必要はあるの?

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

消費税額の計算について簡易課税制度を採用している場合、控除対象仕入税額は、課税標準額に対する消費税額に一定のみなし仕入率を乗じて計算します。

税額計算に必要な要素は課税売上高のみで、課税仕入れや免税売上げ・非課税売上げについては一切用いません。

「じゃあ、簡易課税を採用しているなら免税売上げと非課税売上げについては区分経理する必要はないんじゃないか?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、実は簡易課税を採用していても、免税売上げと非課税売上げは区分経理しておく必要があるのです。

今回はその理由について解説したいと思います。

 

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簡易課税の場合の消費税の計算方法

簡易課税制度の適用を受けて消費税額の計算をしている場合は、売上げに係る消費税額(預かった消費税額)のみを用いて納付税額を計算します。

売上げに係る消費税額から控除できる仕入れに係る消費税額は、実際の仕入れの金額にかかわらず、業種ごとに決められているみなし仕入率を乗じて簡便的に計算します。

以下の数値例の場合、消費税額は次のように計算します。

数値例
業種:小売業(みなし仕入率:80%)
課税売上高:1,100万円(消費税額:100万円)
非課税売上高:300万円
免税売上高:150万円
課税仕入高:935万円(消費税額85万円)

消費税額=100万円ー100万円×80%=20万円

したがって、非課税売上げ・免税売上げ・課税仕入高は簡易課税の計算では一切考慮されず、課税売上の金額のみに基づいて納付税額を計算します。

しかし、非課税売上げと免税売上げについては、簡易課税制度を採用していても区分経理しておく必要があるのです。

 

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翌々期の納税義務や簡易課税の適用判定のために免税売上げの区分は必要

ざっくりとですが、次に該当する場合は、消費税を納める義務があります。

課税事業者となる場合
・適格請求書発行事業者の登録を受けている場合
・基準期間(個人事業者の場合は前々年、法人の場合は原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超える場合
(※)上記のほか、特定期間(個人事業者の場合は前年1/1~6/30、法人の場合は原則として前事業年度の上半期)の課税売上高が1,000万円を超える場合や、合併や相続により事業を承継した場合などは、上記に該当しない場合であっても課税事業者となることがあります。

また、簡易課税制度は、基準期間における課税売上高が5000万円以下であることが適用要件となります。

基準期間における課税売上高は、「10%課税売上高×100/110+8%課税売上高×100/108+免税売上高」で計算します。(特定期間における課税売上高の計算も同様です。)

したがって、免税売上高は基準期間における課税売上高の計算要素に含まれているため、簡易課税制度を適用している場合であってもしっかりと区分して計上する必要があります。

 

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通算課税売上割合の算定のためにも売上の区分は必要

当課税期間は簡易課税であっても、翌課税期間以降は原則課税となる場合もあります。

もし翌課税期間に「課税売上割合の著しい変動があった場合の調整」の規定の適用を受ける場合は、調整対象固定資産の仕入等の課税期間から第3年度の課税期間までの各課税期間を通じた通算課税売上割合を算出する必要があります。

もし当課税期間が簡易課税だからといって、非課税売上げと免税売上げについて一切区分経理を行っていなかったら、通算課税売上割合を算出することができなくなります。

したがって、簡易課税を採用していても非課税売上げと免税売上げは区分経理しておく必要があります。

なお、課税売上割合の著しい変動があった場合の調整規定については、詳しくは次の記事をご覧ください。

また、翌期以降に土地の譲渡を行った場合に「課税売上割合に準ずる割合」を用いて控除対象仕入税額を計算するときは通算課税売上割合を算出する必要があります。

 

まとめ

翌々期の納税義務や簡易課税制度の適用の有無は、基準期間における課税売上高を用いて判定します。

簡易課税制度を採用している場合であっても、基準期間における課税売上高の計算要素に含まれる免税売上高はしっかりと区分経理する必要があります。

また、翌期以降に課税売上割合の著しい変動の調整措置を受ける可能性があるときは、通算課税売上割合を計算するために、非課税売上高と免税売上高についてもきちんと区分経理をしておく必要があります。

 

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