排他的経済水域内で資産の譲渡等を行った場合、国内取引になるのか
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この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

今月20日、日本政府は商業捕鯨の再開に向けてIWC(国際捕鯨委員会)から脱退する意向を固めました。これにより、公海での捕鯨から撤退する代わりに、日本の排他的経済水域内でおよそ30年ぶりに商業捕鯨が再開される見込みです。

僕はこのニュースを見て真っ先に「捕獲したクジラを排他的経済水域内で譲渡した場合、消費税法上国内取引に該当するのかな?」という疑問が沸き起こりました。

これすごく興味深くないですか?

国土の基線から12海里までの領域で資産を譲渡した場合は、沿岸国の主権が及ぶ「領海」のため、国内取引となります。

一方、国土の基線から200海里以上離れた「公海」で資産を譲渡をした場合については、「公海」には主権が及ばないため国内取引に該当しません。公海上の取引については、第62回(平成24年度)の税理士試験でも出題されたことがあります。

じゃあ、「領海」と「公海」の間の「排他的経済水域」で資産を譲渡した場合はどうなるのか、めちゃくちゃ気になりませんか?

「クジラってどんな味なのかな?」とかじゃなくこんなことが真っ先に気になるのはもはや職業病でしょうか…

今回は、「排他的経済水域」で資産の譲渡等を行った場合、国内取引に該当するのかどうかについて考察したいと思います。

おそらく実務でも試験でも役に立つことはほぼなさそうな考察ですが、一度疑問を持ったら納得するまで調べないと気が済まない性格なので一生懸命調べました。

自分でも「これ誰に需要があるんだろう・・・」と思いながら書きましたが、もし最後まで読んでいただけたら望外の幸せです。

 

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排他的経済水域とは

(出典:Wikipedia-排他的経済水域)

排他的経済水域とは、沿岸国の基線から200海里(約370km)の範囲内の水域をいいます。

沿岸国は排他的経済水域内の天然資源や自然エネルギーの探査・開発・保全及び管理を行う排他的な権利を有しています。

ただし、上記以外の行為に対して法律を制定し、罰則規定を設けることはできないため、完全に主権が及ぶわけではありません。

 

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排他的経済水域内の適用法令

排他的経済水域における適用法令に関しては、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律第3条第1項において、次のように規定されています。

(我が国の法令の適用)
第三条 次に掲げる事項については、我が国の法令(罰則を含む。以下同じ。)を適用する。
一 排他的経済水域又は大陸棚における天然資源の探査、開発、保存及び管理、人工島、施設及び構築物の設置、建設、運用及び利用、海洋環境の保護及び保全並びに海洋の科学的調査
二 排他的経済水域における経済的な目的で行われる探査及び開発のための活動(前号に掲げるものを除く。)
三 大陸棚の掘削(第一号に掲げるものを除く。)
四 前三号に掲げる事項に関する排他的経済水域又は大陸棚に係る水域における我が国の公務員の職務の執行(当該職務の執行に関してこれらの水域から行われる国連海洋法条約第百十一条に定めるところによる追跡に係る職務の執行を含む。)及びこれを妨げる行為

したがって、排他的経済水域における捕鯨などの経済的な目的で行われる活動については、日本国の法律が適用されることになります。

ただし、外国人が排他的経済水域内で行う行為については、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律第3条で次のように規定されています。

(排他的経済水域における外国人の漁業等に関する法令の適用等)
第三条 外国人が我が国の排他的経済水域(以下単に「排他的経済水域」という。)において行う漁業、水産動植物の採捕(漁業に該当するものを除き、漁業等付随行為を含む。以下同じ。)及び探査(以下この条において「排他的経済水域における外国人の漁業等」という。)に関しては、この法律の定めるところによる。
2 排他的経済水域における外国人の漁業等に関しては、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律(平成八年法律第七十四号)第三条第一項の規定にかかわらず、漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)(第七十四条第一項、第二項、第四項及び第五項を除く。)その他政令で定める法律(これらに基づく命令を含む。)の規定は、適用しない。

なお、「外国人」の定義は次のように規定されています。

(定義)
・・・(前略)
4 この法律において「外国人」とは、次に掲げるものをいう。
一 日本の国籍を有しない者。ただし、適法に我が国に在留する者で農林水産大臣の指定するものを除く。
二 外国、外国の公共団体若しくはこれに準ずるもの又は外国法に基づいて設立された法人その他の団体

したがって、日本国籍を有しない者や外国法人が日本の排他的経済水域において漁業等の活動を行った場合は、日本国の法律は適用されません。

 

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消費税法の適用関係

消費税法の課税要件の1つである国内取引の「国内」の定義については、消費税法第2条第1項第1号(定義)において次のように規定されています。

国内
この法律の施行地をいう。

消費税法は国内法であることから、日本国の法律が適用される領域内での資産の譲渡等であれば、国内取引に該当することになります。

したがって、上記を勘案して消費税法の適用関係をまとめると、以下のようになります。

排他的経済水域における内外判定
日本人が排他的経済水域内で資産の譲渡等を行った場合
→ 国内取引に該当する
外国人が排他的経済水域内で資産の譲渡等を行った場合
→ 国内取引に該当しない

日本人が排他的経済水域内で捕獲した海産物を譲渡したり、捕鯨や探査活動の協力等の役務の提供を行った場合は、消費税法を含む日本国の法令が適用され、国内取引に該当することになるでしょう。

一方、外国人がこれらの活動を行った場合は、国内取引には該当しないものと思われます。

 

最後までブラウザを閉じずに読んでくださった方がいましたら、本当にありがとうございました。

 

 

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