今年も残すところあとわずかとなりました。
年末年始の連休を利用して旅行に行く予定を立てている方も多いかと思います。
しかし、中には急用や病気で、予約していたホテルや飲食店、航空券などをキャンセルせざるを得ない状況になることもあるかと思います。
この場合、キャンセル料に消費税はかかるのでしょうか?
今回は、キャンセル料に係る消費税の取扱いについて説明したいと思います。
キャンセル料の対価性
消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。
課税の対象の要件として「③ 対価を得て行うものであること」があります。
キャンセル料を払った場合、対価性のある取引といえるのでしょうか?
予約していたホテルや飲食店、航空機等をキャンセルした場合は、役務の提供を受けないことになります。
したがって、キャンセル料は、役務の提供の対価として支払うものではなく、もしキャンセルをしなかったら相手のお店が得られたであろう利益(逸失利益)を補てんするために支払うものであるため、キャンセル料の支払いは対価性のある取引ではありません。
事務手数料としての性質を有する場合
上述のとおり、キャンセル料の支払いは原則として対価性のある取引には該当しません。
しかし、キャンセル料が解約手数料や払戻手数料等の性質を有している場合は、対価性のある取引となります。
国税庁の消費税法基本通達5-5-2では、次のように記載しています。
(解約手数料、払戻手数料等)
予約の取消し、変更等に伴って予約を受けていた事業者が収受するキャンセル料、解約損害金等は、逸失利益等に対する損害賠償金であり、資産の譲渡等の対価に該当しないが、解約手数料、取消手数料又は払戻手数料等を対価とする役務の提供のように、資産の譲渡等に係る契約等の解約又は取消し等の請求に応じ、対価を得て行われる役務の提供は、資産の譲渡等に該当することに留意する。
・・・(後略)
したがって、キャンセル料が損害賠償金として支払われるものではなく、解約や予約変更に係る事務手数料として支払われる場合は、資産の譲渡等の対価に該当することとなります。
損害賠償金と事務手数料が区分されていない場合
キャンセル料の内訳が、逸失利益に補てんのための損害賠償金部分と解約等の事務手数料部分とに明確に区分されている場合は、損害賠償金部分の金額は不課税、事務手数料部分の金額は課税となります。
しかし、キャンセル料の内訳が区分せずに、一括して収受している場合はどうなるでしょうか?
この点については、消費税法基本通達5-5-2において、次のように規定されています。
(解約手数料、払戻手数料等)
・・・(前略)
なお、解約等に際し授受することとされている金銭のうちに役務の提供の対価である解約手数料等に相当する部分と逸失利益等に対する損害賠償金に相当する部分とが含まれている場合には、その解約手数料等に相当する部分が役務の提供の対価に該当するのであるが、これらの対価の額を区分することなく、一括して授受することとしているときは、その全体を資産の譲渡等の対価に該当しないものとして取り扱う。
よって、上記太字部分で示したように、損害賠償金部分と事務手数料部分が区分されていない場合は、その全体を逸失利益の補てんのための損害賠償金部分の金額と考えて、不課税取引として扱うこととされています。
(参考)キャンセル料が税込金額の場合は値下げ交渉ができるかも
新型コロナウイルスの影響により、イベントや飲み会などのキャンセルがかつてないほど増えており、多額のキャンセル料の支払いが発生しています。
税込金額のキャンセル料を支払う場合、サービスの売り手が消費税相当分だけ得をすることになるため、交渉により値下げをしてもらえる可能性があります。
この点については、次の記事をご覧ください。
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