イベントや飲み会などのキャンセル料は消費税分を値下げ交渉できる?

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

イベントや飲み会などの予約をキャンセルした場合は、キャンセル料が徴収されることがあります。

2020年(令和2年)は、新型コロナウイルスの蔓延によりかつてないほどキャンセルが多く発生しており、キャンセル料の支払いを巡ってトラブルが起きているところも多いかと思います。

今回は、キャンセル料に含まれる消費税相当額分の値下げ交渉ができるかどうかについて解説したいと思います。

 

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課税の対象の4要件

消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。

課税の対象の4要件
① 国内において行うものであること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行うものであること
④ 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること

もし飲み会やイベントの予約がキャンセルされることなく、予定通りサービスが提供されたのであれば、支払料金はサービスの提供を受けた対価として支払うものであるため、消費税の課税の対象の要件を満たすことになります。

しかし、飲み会やイベントの予約がキャンセルされた場合は、逸失利益(=もし予約がキャンセルされなければえられるはずだった利益)を補填するために、キャンセル料が支払われることがあります。

予約がキャンセルされた場合は、当然ですがサービスの提供を受けることはないので、キャンセル料はサービスの提供を受けた対価として支払うものではありません。

したがって、キャンセル料は上記の課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさないため、消費税の課税対象外(不課税取引)となります。

 

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キャンセル料に消費税額が含まれる場合、売り手が消費税額分得することになる

キャンセル料が消費税を含む税込金額の場合は、キャンセルされなかった場合と比べてサービスの売り手が消費税が区分だけ得をすることになります。

これは一体なぜなのか、キャンセルされなかった場合とされた場合の具体例をもとに比較して考えてみましょう。

例えば、居酒屋で忘年会を行うために飲食代11万円(税込)のコースの予約をしていた利用客が予定通り飲食をした場合は、お店は飲食代に含まれる消費税1万円を税務署に納付します。(説明の簡素化のため、食材の仕入代金等は考慮せずに考えます。)

この場合、飲食店の手元には10万円が残ることになります。

キャンセルされなかった場合

一方、居酒屋で忘年会を行うために飲食代11万円(税込)のコースの予約をしていた利用客が、コロナウイルスの影響等で予約をキャンセルせざるを得なくなり、飲食代の全額11万円をキャンセル料として支払ったとします。

この場合、キャンセル料の支払いは消費税の課税対象外(不課税取引)となるため、飲食店は消費税を納める必要はなく、飲食店の手元には11万円が残ることになります。

キャンセルされた場合

このように、キャンセル料として税込金額を支払っている場合は、キャンセルされなかった場合と比べてサービスの売り手が消費税相当額分だけ得することになるのです。

そこで、キャンセル料に含まれる消費税額分の値下げ交渉をし、本体価格分のキャンセル料だけ支払うこととすれば、飲食店の手元に残る金額はキャンセルされなかった場合と同額になります。

キャンセルされた場合(消費税分値下げした場合)

 

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税込金額のキャンセル料を取ることは違法?

これまでの説明を見ると、「税込金額のキャンセル料を取ると売り手が消費税額分だけ得するのなら、そもそも税込金額でキャンセル料を取ること自体違法なのではないか?」と思われるかもしれませんが、それ自体は違法ではありません。

キャンセル料については売り手と買い手の双方で事前に合意した金額であればどのような金額を設定しても良いため、キャンセル料として税込金額が請求されたとしても違法行為とはなりません。

逆に、売り手が消費税額分だけ得するのが嫌だからといって本体価格しか払わず、消費税額分の支払いを拒否した場合は債務不履行で訴えられる可能性もあるので注意しましょう。

 

ただし、値下げ交渉の材料にはなる

上述の話は、税込金額でキャンセル料を請求された場合に、値下げ交渉をするひとつの材料にはなると思います。

大規模なイベントや結婚式などが新型コロナウイルスの影響でキャンセルとなってしまった場合、キャンセル料も膨大な金額になってしまいます。

そこで、「キャンセル料は消費税の課税対象外(不課税取引)となるのだから、消費税相当額分だけ値下げしてくれませんか?」と言って値下げ交渉をするのであれば、決して無茶苦茶な要求をしているわけではなく、経理の面で考えても理にかなった主張であるため、有効な交渉材料の一つにはなるかと思います。

キャンセル料は基本的には事前に合意した金額でやり取りされることになるため、消費税分の値下げ交渉をしても承諾してもらえるかはわかりませんが、何もしないよりは価値があるかと思います。

 

(参考)キャンセルにかかる事務手数料部分は課税される

キャンセル料については消費税の課税対象外(不課税取引)となりますが、キャンセル料とは別に請求する解約のための事務手数料部分は消費税が課税されます。

この点については、詳しくは 次の記事をご覧ください。

 

まとめ

税込金額のキャンセル料を支払った場合は、サービスの売り手はキャンセルされなかった場合よりも消費税相当額分、得をすることになります。

税込金額でキャンセル料を請求すること自体は違法ではありませんが、「キャンセル料は消費税の課税対象外(不課税取引)となるのだから、消費税相当額分だけ値下げしてくれませんか?」と言って値下げ交渉をすれば、それに応じてもらえる可能性はあります。

新型コロナウイルスの影響でイベントや飲み会などをキャンセルせざるを得なくなり、キャンセル料の支払いに頭を悩ませている方も多いかと思います。

この記事で紹介した話がキャンセル料の値下げ交渉の場面で少しでもお役に立てば幸いです。

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