長期間休業していた事業者が事業を再開した場合の課税事業者の選択
nhattienle94 / Pixabay

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

前回の記事では、課税事業者の選択をするメリットについて紹介しました。

新規開業する際は、課税事業者の選択をして消費税の還付を受けることができますが、長期間休業していた事業者が事業を再開した場合にも同様のメリットを受けることはできるのでしょうか?

今回は、長期間休業していた事業者が事業を再開した場合の課税事業者の選択について解説したいと思います。

 

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課税事業者の選択の届出

消費税法第9条第4項において、課税事業者の選択の届出の効力について次のように規定されています。

4 第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除されることとなる事業者が、その基準期間における課税売上高(同項に規定する基準期間における課税売上高をいう。第十一条第四項及び第十二条第三項を除き、以下この章において同じ。)が千万円以下である課税期間につき、第一項本文の規定の適用を受けない旨を記載した届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、当該提出をした事業者が当該提出をした日の属する課税期間の翌課税期間(当該提出をした日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、当該課税期間)以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が千万円を超える課税期間を除く。)中に国内において行う課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、同項本文の規定は、適用しない。

非常に読みづらい条文ですが、要約すると次のようになります。

課税事業者の選択の届出(要約)
免税事業者となる事業者が課税事業者選択届出書を提出したら、その提出日の属する課税期間の翌課税期間から課税事業者になれます。
ただし、当該提出をした日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、その課税期間から課税事業者になれます。

 

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事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間とは

「事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間」については、消費税法施行令第20条において次のように規定されています。

(事業を開始した日の属する課税期間等の範囲)
第二十条 法第九条第四項に規定する政令で定める課税期間は、次に掲げる課税期間とする。
一 事業者が国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間
二 個人事業者が相続により法第九条第四項の規定の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合における当該相続があつた日の属する課税期間
三 法人が合併(合併により法人を設立する場合を除く。)により法第九条第四項の規定の適用を受けていた被合併法人の事業を承継した場合における当該合併があつた日の属する課税期間
四 法人が吸収分割により法第九条第四項の規定の適用を受けていた分割法人の事業を承継した場合における当該吸収分割があつた日の属する課税期間

「事業者が国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間」については、課税事業者選択届出書を提出した課税期間から課税事業者となることができます。

ここで、「課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日」とはどのような日を指すのでしょうか?

病気等の事情で長期間事業活動を休止していた事業者が事業活動を再開した場合は、新たに事業活動を開始したわけではありません。この場合は課税事業者選択届出書を提出した課税期間から課税事業者となることができるのでしょうか?

 

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過去2年以上課税資産の譲渡等がない場合

「事業者が国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間」について、消費税法基本通達1-4-8において次のような記載があります。

(過去2年以上課税資産の譲渡等がない場合の令第20条第1号の適用)
令第20条第1号《事業を開始した日の属する課税期間等の範囲》に規定する「課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間」には、その課税期間開始の日の前日まで2年以上にわたって国内において行った課税資産の譲渡等又は課税仕入れ及び保税地域からの課税貨物の引取りがなかった事業者が課税資産の譲渡等に係る事業を再び開始した課税期間も該当するものとして取り扱う。

したがって、長期間にわたる休業により過去2年以上課税資産の譲渡等が行っていない事業者が事業を再開した場合は、新規に事業を開始した場合と同様に、課税事業者選択届出書を提出した課税期間から課税事業者となることができます。

ここで注意しないといけないのは、その課税期間開始の日の前日まで2年以上にわたって課税資産の譲渡等が行われなかった場合しか適用されません。

「事業を休止してから再開するまでの期間が2年以上」ではないことに注意しましょう。

その課税期間開始の日の前日までの休業期間が2年以上の場合

1月1日から12月31日までの課税期間の事業者が、×01年の6月頃に病気療養のため事業を休止し、×04年9月頃に回復して事業を開始した場合は、その課税期間開始の日の前日まで2年以上にわたって課税資産の譲渡等が行われなかったことになるため、×04年は事業を開始した課税期間に該当します。

休業期間2年以上

その課税期間開始の日の前日までの休業期間が2年未満の場合

1月1日から12月31日までの課税期間の事業者が、×02年の6月頃に病気療養のため事業を休止し、×04年9月頃に回復して事業を開始した場合は、その課税期間開始の日の前日まで2年以上にわたって課税資産の譲渡等が行われなかったことにはならないため、×04年は事業を開始した課税期間に該当しません。

休業期間2年未満

病気になった×02年6月から回復した×04年9月までの期間は2年以上ありますが、「事業を開始した課税期間」に該当するかどうかはその課税期間開始の日の前日までの休業期間(課税資産の譲渡等が行われなかった期間)が2年以上かどうかで判定することに注意しましょう。

 

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