原則として、法人を新しく設立した場合は、設立日以後2年間は消費税の納税義務が免除されます。
消費税の納税義務が免除されるのは、一般的に、設立したばかりの法人は事業規模が小規模であるため、事業者の事務負担に配慮しているからです。
しかし、設立第1期の上半期だけで課税売上高が1,000万円を超える場合など、ある程度の事業規模がある法人については、事務負担の配慮をする必要がないため、原則にかかわらず納税義務が免除されないことがあります。これを「納税義務の免除の特例」といいます。
「納税義務の免除の特例」には様々な種類がありますが、今回は「新設法人の納税義務の免除の特例」について解説したいと思います。
小規模事業者に係る納税義務の免除(原則)
事業者が消費税の納税義務があるかどうかは、消費税法第9条(小規模事業者納税義務の免除)において次のように規定されています。
事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
「基準期間にける課税売上高」が1,000万円以下であれば、消費税の納税義務は免除されます。
なお、「基準期間」とは、法人の場合は、その事業年度の前々事業年度のことを指します。
通常は、設立されたばかりの法人の第1期及び第2期は前々事業年度が存在しないため、納税義務は免除されることになります。
新設法人の納税義務の免除の特例とは
設立したばかりの法人の納税義務については、消費税法第12条の2(新設法人の納税義務の免除の特例)において次のように規定されています。
その事業年度の基準期間がない法人(中略)のうち、当該事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が千万円以上である法人(以下この項及び次項において「新設法人」という。)については、当該新設法人の基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間(中略)における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、第九条第一項本文の規定(小規模事業者に係るの納税義務の免除)は、適用しない。
本来なら、新しく設立されたばかりの法人は「基準期間における課税売上高」が1,000万円以下であるため、設立第1期の消費税の納税義務は免除されることになります。
しかし、期首資本金の額が1,000万円以上である法人(新設法人)については、相当の事業規模を有していることから事務負担に配慮する必要がないため、原則にかかわらず納税義務は免除されません。
資本金の最低限度額
消費税法第12条の2(新設法人の納税義務の免除の特例)の適用があるかどうかは、事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円以上であるかどうかで判断します。
ここで注目すべきは「資本金の額」が1,000万円以上であるかどうかということです。
会社が財産の払い込みを受けた場合の資本金の額の計上額については、会社法第445条(資本金の額及び準備金の額)において次のように規定されています。
株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。
2 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
3 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。
ちょっとわかりにくい言い回しですが、要するに、最低でも2分の1以上を資本金として計上していれば残額は資本準備金として計上してもOKということです。
例えば、1,500万円の金銭の払込みを受けて設立された法人が会社法規定の最低限度額を資本金として計上する場合の仕訳は以下のようになります。
新設法人に該当するか否かの判定は期首資本金の額が1,000万円以上であるかどうかにより行うため、資本準備金の額は考慮しません。
したがって、法人設立時の払い込み金額が19,999,998円以下であれば、資本金計上額を1,000万円未満にすることにより新設法人に該当しないことになります。
ただし、払い込み金額が19,999,999円以上の場合は、資本金計上額を会社法規定の最低限度額としても1,000万円以上となってしまうため、納税義務は免除されません。
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