商標登録や特許出願を行う際の消費税の取引区分と具体的な仕訳例

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

企業が、商品やサービス、ブランド名、社名などの商標登録をするときや製品製造技術などの特許を出願するときは、特許事務所に手続きを依頼するかと思います。

このとき、特許事務所に支払う報酬には、消費税が課税されるものと課税されないものとが混在しているため注意が必要です。

また、商標権の取得に係る仕訳を行う際には、取得原価に含めなくても良いこととされている付随費用の取り扱いにも要注意です。

今回は、商標登録や特許出願を行う際の消費税の取引区分と具体的な仕訳例について解説します。

 

スポンサーリンク

商標登録や特許出願時に課税されるものと課税されないもの

商標登録 や特許出願時の費用に関する消費税の取扱いは、次の通りです。

出願時印紙代・登録料(特許庁に支払うもの):国等が行う一定の事務に係る行政手数料なので非課税
商標調査・出願手数料(特許事務所に支払うもの):商標登録や特許出願の代行に係る役務提供の対価なので課税

特許事務所から受け取った請求書に、消費税が課税される料金と課税されない料金の内訳が記載されていない場合は、特許事務所に請求代金の内訳の照会を行い、課税仕入れ、非課税仕入れ、不課税仕入れに分ける必要があります。

 

スポンサーリンク

商標登録の出願に係る課税・非課税の取引区分

具体例として、商標登録の出願を行う場合について、流れを追ってそこで発生する経費の消費税の取引区分を見ていきます。(特許の主眼や実用新案登録、意匠登録などの各出願も、基本的に同じ考え方になります。)

① 出願時

社名や商品名、ブランド名などの商標登録をするためには、まずは「出願」が必要です。

「出願」とは、商標登録をするために必要な書類を特許庁に提出することです。

主眼時に発生する費用のうち「出願基本手数料」として印紙代を支払う必要がありますか、これは国等に対する一定の事務に係る手数料としてため非課税となります。

これ以外には、「商標調査手数料」「出願手数料」「電子化手数料」「追加検討費用」などが発生しますが、これらはいずれも特許事務所に支払うものであり、商標登録の代行等に係る役務の提供の対価として支払うものであるため、課税仕入れとなります。

② 意見書や補正書の作成時

商標登録の出願を受けた特許庁は、第三者が同じ商標登録をしないように、出願内容の公開や方式審査、実体審査などを行います。

「方式審査」とは、出願手続きや書類等の形式に不備がないかを調べるもので、万が一不備があれば特許庁から出願人に補正命令が下されます。
「実体審査」は、方式審査を通過したものについて、商標登録が可能かどうかを審査します。実体審査が拒絶理由に該当すると、特許庁から拒絶理由通知が送られてきます。

「補正命令」や「拒絶」を受けると、そのままでは商標登録されません。

補正命令が下された場合は「手続補正書」を作成して提出し、拒絶に対しては「意見書」を提出しすることにより、特許庁に再考をしてもらいます。

この場合に、「手続補正書」や「意見書」の作成を特許事務所が代行をした場合は、それらの代行手数料は課税仕入れとなります。

③ 登録時

実体審査を通過した商標登録出願については、審査官が登録査定をします。登録査定を通過すると、次は審判官が登録審決を行い、それをさらに通過してやっと登録することができます。

この段階で、「登録料」を支払うことにより、正式に登録が完了し、商標権を獲得できることになります。

「登録料」は、国等が行う一定の事務に係る行政手数料で法令に基づいて徴収されるものに該当するため、非課税仕入れとなります。

なお、登録が無事完了した時に特許事務所に成功報酬や納付手数料を支払った場合は、課税仕入れとなります。

④ 更新時

商標権の有効期間(存続期間)は10年間とされています。

しかし、更新手続きを行えば、その後も継続して商標権を独占することができます。

この場合、「更新料」として印紙代がかかりますが、これも非課税仕入れとなります。

また、特許事務所に更新手続きの代行を依頼し更新時手数料を支払った場合は課税仕入れとなります。

 

スポンサーリンク

商標権や特許権等を譲渡した場合

商標権や特許権などの無形固定資産を譲渡した場合は、その登録機関の所在地が国内にあるかどうかにより国内取引の判定を行います。

ただし、同一の権利について2以上の国で登録している場合には、権利の譲渡又は貸付けを行う者の住所地が国内にあるかどうかにより国内取引の判定を行います。

無形固定資産を譲渡した場合の国内取引の判定の注意点については、詳しくは次の記事をご覧ください。

 

費用を支払ったとき

無形固定資産を取得する際に付随費用を支払った場合は、有形固定資産を取得した場合と同様に、原則としてその代価に付随費用を加算した額を取得原価とします。

ただし、法人税法基本通達7-3-3の2において次のように記載があります。

(固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示)
次に掲げるような費用の額は、たとえ固定資産の取得に関連して支出するものであっても、これを固定資産の取得価額に算入しないことができる。

(1) 次に掲げるような租税公課等の額
イ 不動産取得税又は自動車取得税
ロ 特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
ハ 新増設に係る事業所税
ニ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用

したがって、経理上も上記通達に合わせ、登録手数料や登録免許税、印紙代などの登記又は登録のために要する費用については、取得原価に含めずに「租税公課」勘定や「支払手数料」勘定で処理することができます。

この場合の具体的な経理処理は、以下のようになります。

具体例
当社の社名の商標登録出願を行い、商標調査・出願手数料150,000円(特許事務所に支払うもの)、出願時印紙代46,400円、登録料82,000円(特許庁に支払うもの)をそれぞれ現金で支払った。

 

まとめ

商標登録の出願から更新までの流れにおいて生ずる費用の消費税の取引区分をまとめると、次のようになります。

課税 非課税
出願時

・商標調査手数料

・出願手数料

・電子化手数料

・追加検討費用

・出願時印紙代
意見書や補正書の作成時

・意見書作成代行手数料

・補正所作成代行手数料

登録時

・成功報酬

・納付手数料

・登録料
更新時 ・更新時手数料 ・更新料

 

スポンサーリンク
その隙間時間、もったいないと思いませんか?

通勤・通学中などの隙間時間は、有効に使えていますか?1日にしたらたった数十分程度の時間でも、塵も積もれば山となって膨大な時間となります。もし1日30分の隙間時間があったとしたら、1年に換算すると182.5時間になります。これだけの時間を有効活用することができたら、非常に大きなアドバンテージとなります。

消費税法一問一答アプリでは、隙間時間を有効活用して消費税の課否判定のトレーニングができるのはもちろん、アプリケーションプログラムを利用して短時間で多くの問題を解くことができるため、紙ベースの問題集よりもはるかに高い効率性で消費税の学習ができます!

おすすめ記事