寄付金や協賛金、ふるさと納税は不課税?消費税がかかる場合とは

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

災害支援のためにコンビニの募金箱で寄付をしたり、支持している政党や団体を応援するために寄付をしたことはないでしょうか?

これらは、なんら見返りを期待せずに支出するものですが、消費税の課税対象となるのかだろうかと、疑問に思ったことがある方も多いと思います。

また、寄付金に近い性質のものとして、協賛金やふるさと納税の支払いをした場合などは、消費税の課税対象となるのでしょうか?

今回は、寄付金や協賛金、ふるさと納税の支払いに係る消費税の取扱いについて解説したいと思います。

 

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課税の対象の4要件

消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。

課税の対象の4要件
① 国内において行うものであること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行うものであること
④ 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること

これを踏まえて、寄付金や協賛金、ふるさと納税の支払いが消費税の課税の対象となるかどうか考えてみましょう。

 

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寄付金に消費税はかかる?

寄付金は、一般的に何ら見返りを期待せずに支出するものです。

例えば、事業者が災害支援のために寄付をしたとしても、その支出が直接的に事業活動に影響することはなく、寄付をしたからといって売上げがアップしたりコストダウンができるわけではありません。

したがって、寄付金の支出は課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」を満たさないため、消費税の課税の対象外(不課税取引)となります。

物品を寄付した場合は課税される

寄付が不課税取引となるのは、金銭を寄付した場合です。

物品を買ってきて現物で寄付をする場合は、その物品の購入額には消費税が課されます。

例えば、お神酒を購入し、現物で神社に奉納した場合は、そのお神酒の購入額には消費税が課されます。

ただし、病院に寄付するために車椅子(消費税非課税)を買った場合など、もともと非課税とされている物品を買った場合は消費税は課されません。

寄付により記念品をもらえる場合も不課税

寄付をしたら、お礼に記念品をもらえることがあります。

(赤い羽根共同募金)

例えば、「赤い羽根共同募金」の募金をすると、お礼として上記イラスト中央の「赤い羽根」をもらえます。

この場合、「赤い羽根をもらったのなら、募金額は赤い羽根を受け取る対価として支払ったと捉えることができるから課税対象になるのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、この場合でも不課税取引となります。

実際、「赤い羽根共同募金」の募金をする人は、赤い羽根が欲しくて募金しているのではなく、災害支援活動や社会福祉活動などのために役立ててほしいという思いで募金をしています。

したがって、募金のお礼として赤い羽根やステッカーなどの記念品がもらえる場合であっても、その募金の目的は記念品をもらうことではなく、災害支援活動や社会福祉活動などに貢献することであるため、課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」を満たさず、消費税の課税の対象外(不課税取引)となります。

寄付により相当の見返りを受ける場合は課税される

上記のように、寄付をしたお礼でちょっとした記念品がもらえる場合は消費税は課されません(不課税取引になります)。

しかし、だからといって、寄付のお礼として何を渡しても不課税取引になるわけではありません。

例えば、「募金」という名目で金銭を支出し、その見返りとして寄付をした値段相応の商品やサービスの提供を受け取っている場合は、それは「寄付」ではなく「買い物」になります。

このような場合は、名目的には「寄付」でも、実質的には対価性のある取引であるため消費税の課税対象となります。

(参考)「寄付」と「寄附」の違い

ちょっと話が脱線しますが、「寄付」の「付」の字は、法令文などの公的な場面では「こざとへん」をつけて「附」と表します。

公共文や法令文では「寄附」、それ以外の一般的な場面では「寄付」という使い方がされているため、資格試験等で記述をする際は「寄附」とこざとへんをつけて書くようにしましょう。

 

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協賛金に消費税はかかる?

協賛金というのは、お祭りやイベントといった催し物など、何かしらの事業に賛同した場合に支払うお金のことをいいます。

協賛金が消費税の課税対象となるかどうかは、その協賛金の支払いに対して何かしらの反対給付があるかどうかにより異なります。

特に何の反対給付もない場合は不課税

近所のお祭りの主催者に対して協賛金を支払ったものの、当社の社名が大きく表示されたりといったことはなく、これといった見返りが特にない場合は課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」を満たさないため、消費税の課税の対象外(不課税取引)となります。

このような、当社の事業活動には直接関連性がなく、地域社会との関係円滑化を目的として支出される協賛金には対価性は認められません。

経理処理をする際は、「寄付金」として処理するか、取引先に対して支払った場合は「交際費」とすることもありますが、いずれにせよ消費税は課税対象外(不課税取引)となります。

当社の広告宣伝になる場合は課税される

お祭りやイベントの主催者に対して協賛金を支払った見返りとして、イベント会場内で当社の社名が大きく表示されたり、イベントのチラシなどで当社の社名や商品などが表示され、広告宣伝効果がある場合は、その協賛金はイベント主催者から受ける広告宣伝に係る役務の提供の対価としての性質を有するため、課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」を満たすことになり課税の対象となります。

経理処理をする際は、「広告宣伝費」として処理します。

購入した物品を提供・貸与する場合は課税される

イベントで使用する物品を当社が購入し、無償で提供又は貸与することによる協賛を行う場合は、その物品の購入額は課税の対象となります。

また、物品を無償で提供又は貸与している場合は対価を得ていないため不課税となりますが、有償で物品を提供又は貸与している場合は、その金額は課税売上げとなります。

実質的にイベントの運営費用の負担金として支払う場合

イベント協賛者が、実質的にイベント会場の賃借料や展示・装飾費用、撤去費用などの負担金としての性質を有する協賛金を支払うことがあります。

この場合の取扱いについては、国税庁のタックスアンサーNo.6479(共同行事に係る負担金等)において、次のような記載があります。

同業者団体又は企業グループなどが、構成員全体の宣伝、販売促進、会議などの共同行事を行うため、共同行事の主宰者が、その費用を賄うために構成員から負担金、賦課金などを集めることがあります。
一般的には、主宰者が構成員のために負担金などを受け取って宣伝、販売促進などを行うことになります。したがって、その負担金などは役務の提供の対価として、消費税の課税の対象となります。
この場合には、各構成員は、負担した負担金、賦課金等について仕入税額控除の対象とすることができます。

上記のとおり、実質的に共同行事の負担金として支払う協賛金については、消費税の課税の対象とされます。

経理処理をする際は、「支払手数料」などで処理します。

 

ふるさと納税の支払いに消費税はかかる?

「ふるさと納税」は市区町村や県などの地方公共団体に対して寄付をすると、所得税と住民税が減税される制度です。

「ふるさと納税」をすると、自治体から返礼品を受け取ることができるため、「返礼品をもらえるのなら、ふるさと納税の寄付額は返戻品を受け取る対価として支払ったと捉えることができるから課税対象になるのでは?」と思う方が多いかもしれません。

しかし、ふるさと納税による寄付額については、建前上、あくまでも対価性のない無償の経済的利益の供与であるものとされており、総務大臣通知でも次のように記載されています。

VIII 2 (中略)ふるさと納税に関する事務の遂行に当たっては、以下の点に留意の上、適切に対処されたいこと。
(1) ふるさと納税について(中略)周知、募集等の事務を行う際には、次のように取り扱うこと。
ア 当該寄附金が経済的利益の無償の供与であることを踏まえ、寄附の募集に際し、次に掲げるような、返礼品(特産品)の送付が対価の提供との誤解を招きかねないような表示により寄附の募集をする行為を行わないようにすること。
・「返礼品(特産品)の価格」や「返礼品(特産品)の価格の割合」(寄附額の何%相当など)の表示
(中略)
(2) ふるさと納税(中略)の適用が、地方団体に対する寄附金額の全額(2,000 円を除く。)について行われるのは、 当該寄附が経済的利益の無償の供与として行われており、返礼品(特産品)の送付がある場合でも、それが寄附の対価としてではなく別途の行為として行われているという事実関係であることが前提となっているものであるが、その場合においても、当該返礼品(特産品)を受け取った場合の当該経済的利益については一時所得に該当するものであること。

(出典)総務大臣発、各都道府県知事等宛て「地方税法、同法施行令、同法施行規則の改正等について」 (平成 27 年 4 月 1 日、総税企第 39 号)より抜粋

したがって、ふるさと納税による寄付額は課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」を満たさないため、消費税の課税の対象外(不課税取引)となります。

なお、返戻品の受け取りについても同様に対価性がないことから消費税の課税の対象外(不課税取引)となりますが、所得税の計算上は「一時所得」に該当することに注意しましょう。

 

(参考)法人税法上「寄附金」と認定されても、消費税では課税対象となることがある

法人税法上、資産を時価(通常の取引価額)を上回る金額で売買した場合、その時価(通常の取引価額)を上回る部分の金額が「寄附金」として認定されることがあります。

この場合の消費税の取り扱いについては、詳しくは次の記事で解説しています。

 

まとめ

寄付金や協賛金、ふるさと納税については、原則としていずれも対価性がない取引であるため、消費税の課税の対象外(不課税取引)となります。

ただし、その支出の実質的な内容に照らして対価性があると認められる場合は、消費税の課税対象となることに注意しましょう。

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