自動販売機の運用形態として、自販機をリース又は購入して自分で設置し、商品の仕入れや補充、ゴミ回収等を自分ですべて行う「セミオペレーション」という運用形態があります。
今回は、セミオペレーションにより自動販売機を運用する場合の消費税の取扱いについて解説したいと思います。
自動販売機の運用形態
自動販売機の運用形態には、以下の2種類があります。
・・・設置スペースを提供するだけで、自販機の設置・商品の補充・ゴミ回収等はすべて業者に任せる運用形態(利益率は低いが管理が楽)
・・・自販機をリース又は購入して自分で設置し、商品の仕入れや補充、ゴミ回収等を自分ですべて行う運用形態(利益率は高いが管理が大変)
今回の記事では、『②セミオペレーション』の運用形態による場合の消費税の取扱いと会計処理について解説します。
なお、最も一般的に普及している『① フルオペレーション』の運用形態による場合の消費税の取扱いと会計処理については、次の記事で詳しく解説しています。
セミオペレーションで自動販売機を設置した場合のお金の流れ
セミオペレーションで自動販売機を運用する場合、まず自販機メーカーから自販機をリース又は購入して自分で設置する必要があります。
設置が完了したら、卸売業者から飲料等の商品を仕入れ、自分で自販機に補充して販売します。
電気代などの維持管理費用もすべて自分で負担する必要があります。
セミオペレーションで自動販売機を運用する場合は、通常の「小売業」と同じになります。
お金の流れのイメージは以下のイラストのようになります。
自動販売機の設置に係る消費税の取扱い
セミオペレーションによる場合、自動販売機はリース又は購入により設置します。
自動販売機を購入により取得した場合
自動販売機を購入により取得した場合は、取得時に購入代金の全額を課税仕入れとして計上します。
その後は、購入費は耐用年数にわたって減価償却を行いますか、減価償却費の計上は不課税取引となります。
自動販売機をリースにより取得した場合
税務上の「リース取引」とは、資産の賃貸借で、次のいずれにも該当する者をいいます。これは会計上のファイナンス・リース取引と基本的に同じです。
解約不能(ノンキャンセラブル) | リース期間中契約を解除できないもの、または中途解約をする場合、リース期間のうち未経過期間に対応するリース料の概ね全部(原則 90%以上)を支払うこととされているもの。 |
フルペイアウト | リース物件の経済的な利益を実質的に享受し、物件の使用に伴う費用を実質的に負担するもの(賃借人が支払うリース料の金額の合計額がその資産の取得のために通常要する価額のおおむね 90%に相当する金額を超える場合)。 |
上記に該当しない「リース取引以外賃貸借取引」は、会計上のオペレーティング・リース取引と基本的に同じで、通常の賃貸借処理ができます。
自動販売機のリースが「ファイナンス・リース」に該当するか「オペレーティング・リース」に該当するかは、通常、契約時にリース会社から案内があります。
ファイナンス・リース取引に該当する場合
自動販売機のリースがファイナンス・リース取引に該当する場合は、契約において利息相当額が区分して表示されているかどうかにより処理が異なります。
契約に利息相当額が区分して表示されている場合は、利息相当額は非課税となるため、リース料総額から利息相当額を控除した金額を、自動販売機を設置した日の課税仕入れとして計上します。
契約に利息相当額が区分して表示されていない場合は、リース料総額を自動販売機を設置した日の課税仕入れとして計上します。
なお、自動販売機のリースが所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する場合は、経理実務の簡便性の観点から、賃借人が賃貸借処理をしている場合には、分割控除を行っても差し支えないこととされています。
この場合、下記のオペレーティング・リース取引(通常の賃貸借取引)と同様に、支払った日の課税仕入れとすることもできます。
オペレーティング・リース取引に該当する場合
自動販売機のリースがオペレーティング・リース取引に該当する場合は、通常の賃貸借取引と同様に、支払った日において課税仕入れを計上します。
商品仕入れ時の消費税の取扱い
自動販売機に補充する商品を仕入れた時は、通常の小売業と同じように「仕入」勘定を用いて処理します。
仕入商品が飲料やお菓子、パン、カップヌードル、アイスクリームなどの飲食料品の場合は軽減税率8%が適用されますが、仕入商品がお酒やたばこ、雑誌その他の日用品などの場合は標準税率10%が適用されます。
仕入先から割戻しや奨励金を受け取った場合
仕入先から、仕入数量に応じて割戻し(リベート)や奨励金などの名目で金品を受け取ることがあります。
この場合は、消費税法上「仕入れに係る対価の返還等」として取扱い、適用される税率は商品仕入れ時の適用税率と同じになります。
なお、仕入数量に応じてではなく、「販路拡大」などの役務の提供の対価として受け取るものである場合は、標準税率10%が適用される課税売上げとなります。この場合の簡易課税の区分はサービス業として第五種事業となります。
商品販売時の消費税の取扱い
自動販売機により行われる飲料やお菓子、パン、カップヌードル、アイスクリームなどの飲食品の販売は「外食」ではなく「飲食料品の譲渡」に該当するため、軽減税率8%が適用されます。
なお、自動販売機によりお酒やたばこ、雑誌その他の日用品などを販売する場合は、標準税率10%が適用されます。
簡易課税の事業区分
自ら商品を仕入れて自動販売機で販売している場合は、通常の小売業と同様であるため、自動販売機の売上げは第二種事業となります。
なお、自動販売機による商品は、通常、消費者を相手に販売することを前提としているため、仮に自動販売機の商品の購入者に事業者が含まれていたとしても、すべて第二種事業として取り扱います。
ただし、自ら製造した製品を自動販売機により販売する場合は第三種事業に該当します。
また、飲食店業者が店内で飲食することを前提に自動販売機で商品を販売している場合は、飲食店業に含まれるため第四種事業となります。
まとめ
セミオペレーションにより自動販売機を運用する場合は、通常の小売業と同様に考えます。
商品が飲料やお菓子、パン、カップヌードル、アイスクリームなどの飲食品の場合は適用税率8%、お酒やたばこ、雑誌その他の日用品などの場合は標準税率10%が適用されます。
簡易課税制度を採用制定る場合、商品売上げは基本的には第二種事業となりますが、製造業の場合は第三種事業、飲食店業の場合は第四種事業になる可能性があることに注意しましょう。