インフルエンザなどの予防接種費用に消費税はかかる?非課税取引?

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

冬になるとインフルエンザなどの感染症の予防接種のために、ワクチンの注射を受ける方が多くなります。

今回は、予防接種費用に消費税がかかるのかどうかについて解説したいと思います。

 

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予防接種は原則として非課税取引とされる社会保険医療には該当しない

消費税法の規定では、国内で行われるモノやサービスの提供のうち、消費税法別表第二に限定列挙されている次の17項目の取引には消費税を課さないこととされています。

(下記は、国税庁が公表しているタックスアンサーNo.6201『非課税となる取引』のタイトルの柱をピックアップしたものです。)

消費税の非課税取引
(1) 土地の譲渡及び貸付け
(2) 有価証券等の譲渡
(3) 支払手段の譲渡
(4) 預貯金の利子及び保険料を対価とする役務の提供等
(5) 日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡及び地方公共団体などが行う証紙の譲渡
(6) 商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
(7) 国等が行う一定の事務に係る役務の提供
(8) 外国為替業務に係る役務の提供
(9) 社会保険医療の給付等
(10) 介護保険サービスの提供
(11) 社会福祉事業等によるサービスの提供
(12) 助産
(13) 火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
(14) 一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け
(15) 学校教育
(16) 教科用図書の譲渡
(17) 住宅の貸付け

インフルエンザなどの予防接種は、病院で注射を打ってもらうため、非課税とされる「社会保険医療に該当するのでは?」と思う人も多いかもしれません。

しかし、消費税法上、非課税取引とされるのは健康保険法等の規定に基づいて行われる一定の医療の給付等に限られます。

健康保険法等の適用対象となるのは、ざっくり言うと「すでに病気に罹っている人に対する医療行為」です。

予防接種は、すでに病気に罹っている人の治療のために行うものではなく、健康な人が将来病気に罹らないよう予防するために行うものなので、健康保険法等の適用対象となりません。

したがって、インフルエンザ等の予防接種費用の窓口負担金は非課税とならず、消費税が課税されることになります。

なお、税率については、軽減税率は適用されず、標準税率10%となります。

 

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(参考)非課税となる予防接種

予防接種は、原則として健康保険の適用対象となりませんが、以下のような予防接種は、すでに罹った病気がさらに重篤化するのを防ぐための治療として行われるものなので保険給付の対象となるため、これらの予防接種費用の窓口負担金は消費税が非課税となります。

麻しん又は百日せきのガンマグロブリン注射

免疫のない人が麻しん又は百日せきの患者に接触した場合にガンマグロブリンの筋肉注射を行う場合は、保険給付の対象となります。

破傷風血清

破傷風感染の危険性がある場合に、発病前に破傷風トキソイド及び抗毒素血清の注射を行うときは、保険給付の対象となります。

輸血後の血清肝炎予防

輸血後10日以内に、年齢に応じた一定量以上の輸血を必要とする場合に、予防的にガンマグロブリンを使用する場合は、保険給付の対象となります。

B型肝炎母子感染予防

血液中のHBs抗原(B型肝炎ウイルスの外殻を構成するたんぱく質)の検査が陽性(+)だった妊婦から生まれた乳児に対して、抗HBs人免疫グロブリン注射、沈降B型肝炎ワクチン注射、HBs抗原抗体検査及び抗原陽性妊婦に対するHBs抗原検査は、保険給付の対象となります。

手術時の感染予防

手術時おいて感染の危険性がある場合の抗生物質などの予防接種は、保険給付の対象となります。

 

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(参考)新型コロナウイルスの予防接種は?

2020年1月現在、新型コロナウイルスのワクチンの製造が急ピッチで進められており、日本でも近いうちにワクチンの予防接種が始まるといわれています。

2020年12月に、国会で改正予防接種法が可決され、新型コロナウイルスのワクチンが完成した後の予防接種の実施について、次のように取り扱うこととされました。

第二 改正法による予防接種法の一部改正
一 予防接種の実施に関する事項
(1)厚生労働大臣は、新型コロナウイルス感染症のまん延予防上緊急の必要があると認めるときは、その対象者、その期日又は期間及び使用するワクチンを指定して、都道府県知事を通じて市町村長に対し、臨時に予防接種を行うよう指示することができるものとすること。この場合において、都道府県知事は、当該都道府
県の区域内で円滑に当該予防接種が行われるよう、当該市町村長に対し、必要な協力をするものとすること。(附則第7条第1項関係)
(2)市町村長が行う予防接種を第6条第1項の規定による予防接種とみなして、規定を適用するものとすること。(附則第7条第2項関係)
(3)一の(1)の予防接種を行うために要する費用は、国が負担するものとすること。(附則第7条第3項関係)

新型コロナウイルスの予防接種は、予防接種法「臨時接種」として扱われます。

感染症のまん延予防の緊急の必要性があるときに、都道府県又は市町村が行う予防接種です。

この場合に予防接種費用については、上記太字部分で示した通り、国が負担することとされているため、自己負担額はゼロとなります。

なお、病院が収受する、国や市町村から委託を受けた予防接種の委託料は、消費税の課税対象となります。

 

(参考)消費税法施行令14一③の規定は副作用により被害を受けた場合の規定

消費税法施行令第14条第1項第3項において、消費是法別表第二第六号に掲げる療養若しくは医療に類するものとして、次のような規定が設けられています。

三 予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)又は新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済に関する特別措置法(平成二十一年法律第九十八号)の規定に基づく医療費の支給に係る医療

これを見て「インフルエンザ等の予防接種は非課税になるんじゃないの?」と思うかもしれませんが、そうではありません。

予防接種法第15条第1項には、次のような規定があります。

(健康被害の救済措置)
第十五条 市町村長は、当該市町村の区域内に居住する間に定期の予防接種等を受けた者が、疾病にかかり、障害の状態となり、又は死亡した場合において、当該疾病、障害又は死亡が当該定期の予防接種等を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定したときは、次条及び第十七条に定めるところにより、給付を行う。

また、新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済に関する特別措置法第3条第1項には次のような規定があります。

(新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済のための給付)
第三条 厚生労働大臣は、自らが行う新型インフルエンザ予防接種を受けた者が、疾病にかかり、障害の状態となり、又は死亡した場合において、当該疾病、障害又は死亡が当該新型インフルエンザ予防接種を受けたことによるものであると認定したときは、次条及び第五条に定めるところにより、給付を行う。

消費税法施行令で非課税とすることとしている「医療費の支給に係る医療」とは、上記に規定する、予防接種を受けたことによる副作用で被害を受けた方に対する給付のことを指しています。

予防接種費用が非課税になると規定しているわけではないので注意しましょう。

 

まとめ

インフルエンザなどの予防接種は、原則として健康保険等の適用対象とならないため、予防接種費用の窓口負担金は、消費税が課税されます。

ただし、例外として、麻しんや百日せきなど、すでに病気に罹っている人がさらに重篤化するのを防ぐために行う治療としての予防接種は保険給付の対象となるため、消費税は非課税となります。

 

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