電気通信利用役務の提供を受けた場合の消費税区分判定フローチャート

この記事の内容は、2025年10月現在の最新の税制に対応しています。

インターネットを通じて国外事業者から役務の提供を受けた場合は、消費税の取扱いが少し複雑です。

今回は、電気通信利用役務の提供を受けた場合の消費税の区分の考え方について、一目でわかるフローチャートを交えて説明したいと思います。

 

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電気通信利用役務の提供とは

電気通信利用役務の提供とは、資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物の提供(当該著作物の利用の許諾に係る取引を含みます。)その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供(電話等の通信設備を用いて他人の通信を媒介する役務の提供を除きます。)であって、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいいます。

「電気通信利用役務の提供」に該当する取引の具体例としては、以下のようなものがあります。

電気通信利用役務の提供の具体例
○ インターネット等を通じて、対価を得て行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどの様々なアプリケーションを含みます。)の配信
○ 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
○ 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
○ インターネット等を通じた広告の配信・掲載
○ インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
○ インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
○ インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
○ インターネットを介して行う英会話教室

これらに該当する役務の提供を受けた場合は、消費税の取扱いについて慎重に判断する必要があります。

 

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電気通信利用役務の提供に係る消費税の取扱いのフローチャート

電気通信利用役務の提供を受けた場合の消費税の取扱いは、以下のフローチャートに従って判断します。

以下、それぞれの項目について解説します。

 

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役務の提供を受ける者の住所等が国内にあるか

平成27年度税制改正(国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係の見直し)により、2015年10月1日から「電気通信利用役務の提供」に該当する取引については、電気通信利用役務の提供を受ける者の住所又は本店若しくは主たる事務所等の所在地が国内にあるかどうかにより国内取引の判定を行うこととされました。

したがって、役務の提供を受ける者の住所等が国外である場合は、課税の対象の4要件のうち「国内において行うものであること」の要件を満たさないため、消費税の課税対象外取引(不課税取引)となります。

役務の提供を受ける者の住所等が国内である場合は、次の判定項目に進みます。(日本の会社の経理を行っている場合は、役務の提供を受ける者の住所等は国内となります。)

 

役務の提供を行う者は国外事業者か

次は役務の提供を行う者が国外事業者かどうかを確認します。

日本国内の事業者から受ける電気通信利用役務の提供については通常の課税仕入れとなるため、その時点で判定は終了です。

例えば、日本の広告会社から、インターネット上で広告を掲載するサービスの提供を受けた場合は、国内事業者から受ける電気通信利用役務の提供として課税仕入れとなります。

しかし、Twitter広告やFacebook広告など国外の広告会社から、インターネット上で広告を掲載するサービスの提供を受けた場合は、国外事業者から役務の提供を受けたことになるため、次の判定項目に進みます。

 

サービスの利用者が事業者に限られるか

国外事業者から受ける電気通信利用役務の提供については、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するかどうかにより処理が異なってきます。

事業者向け電気通信利用役務の提供に該当するものの具体例として、国税庁の質疑応答事例『事業者向け電気通信利用役務の提供の範囲』では、次のような回答がされています。

事業者向け電気通信利用役務の提供とは、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、当該電気通信利用役務の提供に係る役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいい、例えば、次のものが該当します。
① インターネットのウエブサイト上への広告の掲載のようにその役務の性質から通常事業者向けであることが客観的に明らかなもの
② 役務の提供を受ける事業者に応じて、各事業者との間で個別に取引内容を取り決めて締結した契約に基づき行われる電気通信利用役務の提供で、契約において役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかなものインターネットのウエブサイト上への広告の掲載のようにその役務の性質から通常事業者向けであることが客観的に明らかなもの

一見事業者のみが利用するサービスに見えても、事業者以外が利用することについて特に妨げられていない場合などは事業者向け電気通信利用役務の提供に該当しません。

電気通信利用役務の提供を行う事業者と利用者が相対で個別に取引内容を定めて契約を締結し、利用する事業者が、事業として利用することが明らかであることを確認している場合には、その取引条件等から事業者向け電気通信利用役務の提供に該当することとなります。

事業者向け電気通信利用役務の提供に該当しない場合(=消費者向け電気通信利用役務の提供に該当する場合)は、次の判定項目に進みます。

なお、事業者向け電気通信利用役務の提供に該当する場合は、原則として「リバースチャージ方式」により、電気通信利用役務の提供を受けた事業者が消費税を納める義務がありますが、次のいずれかに該当する場合は、リバースチャージ方式による消費税の申告納税を行う必要はないこととされます。

リバースチャージ方式の納税義務を負わない場合

① 一般課税で、かつ、課税売上割合が95%以上の課税期間

② 簡易課税制度が適用される課税期間

上記①または②のいずれかに該当する場合は「事業者向け電気通信利用役務の提供」はなかったものとみなされるため、リバースチャージ方式による申告納税義務を負わない代わりに、仕入税額控除を行うこともできないので注意しましょう。

 

国外事業者から適格請求書等の交付を受けているか

「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当しない場合は、いわゆる「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当します。

その場合、その「消費者向け電気通信利用役務の提供」を行う国外事業者から適格請求書等の交付を受けている場合は、仕入税額控除を行うことが認められます。

なお、適格請求書等の交付を受けていない場合は仕入税額控除が認められません。「消費者向け電気通信利用役務の提供」については、80%控除又は50%控除の経過措置も認められないことに注意しましょう。

80%控除又は50%控除の経過措置については、詳しくは次の記事で解説しています。

インボイス制度導入前(令和5年9月30日以前)は、国外事業者から消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合は、その国外事業者が登録国外事業者として登録されている場合は仕入税額控除を行うことが認められていましたが、インボイス制度導入後(令和5年10月1日以後)は、登録国外事業者制度は廃止され、適格請求書等の交付を受けているか否かで仕入税額控除の可否が判断されるようになったことに注意しましょう。

 

まとめ

インターネットを通じた広告配信や音源ダウンロード、ソフトの購入など、電気通信利用役務の提供を受けた場合の消費税の取り扱いは、次のフローチャートに従って判定します。

判定で迷った際は、是非このフローチャートを活用してください!

 

 

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