キャッシュレス決済の手数料に消費税がかかるかどうかの考え方

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

PayPayやLinePayなどのキャッシュレス決済手段を使う人が増えています。

最近は、現金は一切持ち歩かない主義の完全キャッシュレス派の人に会うこともそう珍しいことではなくなってきました。

今回は、お店が商品をキャッシュレス決済で売り上げた場合に、キャッシュレス業者に支払う決済手数料に消費税がかかるのかどうかについて解説したいと思います。

 

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金銭債権の譲渡を行っているかどうかがポイント

消費税法施行令第10条第3項第8~10号において、非課税とされる資産の貸付け又は役務の提供の範囲について、次のように規定しています。

八 前各号に掲げるもののほか、金銭債権の譲受けその他の承継(包括承継を除く。)
九 割賦販売法(昭和三十六年法律第百五十九号)第二条第一項(定義)に規定する割賦販売、同条第二項に規定するローン提携販売、同条第三項に規定する包括信用購入あつせん又は同条第四項に規定する個別信用購入あつせんに係る手数料で当該割賦販売、ローン提携販売、包括信用購入あつせん又は個別信用購入あつせんに係る契約においてその額が明示されているものを対価とする役務の提供
十 資産の譲渡等の対価の額又は当該対価の額に係る金銭債権の額を二月以上の期間にわたり、かつ、三回以上に分割して受領する場合におけるその受領する賦払金のうち利子又は保証料の額に相当する額で当該賦払に係る契約において明示されている部分を対価とする役務の提供(前号に掲げる役務の提供を除く。)

したがって、金銭債権の譲渡が行われた場合は、決済手数料は金銭債権の譲受差額として非課税仕入れとなります。

金銭債権の譲渡を行っているかどうかが重要なポイントです。

キャッシュレス決済の決済手数料が課税仕入れとなるかどうかは、① プリペイド(前払い)方式の場合、または、② ポストペイ(後払い)方式の場合の2パターンでそれぞれ考え方が異なります。

上記のそれぞれの場合の決済手数料の取扱いをまとめると、次のようになります。

決済手数料の処理
① プリペイド(前払い)方式の場合
 → 課税仕入れ
② ポストペイ(後払い)方式の場合
 → 非課税仕入れ

 

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① プリペイド(前払い)方式の場合

PayPayやLinePay、d払い、楽天Edy、交通系電子マネーなど、大半のキャッシュレス決済手段は、先にお金をチャージしてから商品を買うというプリペイド(前払い)方式が採られています。

例えば、消費者がキャッシュレス決済のために10,000円をチャージしたとします。

プリペイド(前払い)方式の場合(チャージしたとき)

次に、消費者がチャージした10,000円で、当社の商品(定価10,000円)をキャッシュレス決済で購入したとします。

ここで、キャッシュレスの決済手数料を5%とした場合、当社は、商品販売高10,000円から5%のキャッシュレス手数料500円を差し引いた9,500円をキャッシュレス業者に対して請求できる権利(金銭債権)を獲得することになります。

プリペイド(前払い)方式の場合(商品を販売したとき)

その後、請求権を行使して、キャッシュレス業者から9,500円の支払いを受けた場合、これは金銭債権に係る権利の「行使」であり、これにより金銭債権は「消滅」することになるため、金銭債権を「譲渡」した場合には該当しません。

プリペイド(前払い)方式の場合(売掛金を回収したとき)

したがって、売掛金から差し引かれる決済手数料相当額は、金銭債権の譲受差額には該当せず、決済事務・システム利用に係るサービスの対価として課税仕入れとなります。

この場合の仕訳は以下のようになります。

プリペイド(前払い)方式の場合の仕訳

 

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② ポストペイ(後払い)方式の場合

クレジットカードやPayPal、QUICPay、iD、PITAPAなど、商品を買った後で消費者に代金が請求されるキャッシュレス決済手段は、ポストペイ(後払い)方式と呼ばれます。

例えば、消費者がポストペイ方式のキャッシュレス決済手段を用いて、当社の商品(定価:10,000円)を購入したとします。

この場合は、商品の購入者である消費者はまだお金をどこにも支払っていないため、当社は消費者に対して10,000円を請求できる権利を獲得することになります。

ポストペイ(後払い)方式の場合(商品を販売したとき)

キャッシュレスの決済手数料を5%とした場合、後日、キャッシュレス業者から、商品販売高10,000円から5%のキャッシュレス手数料500円が差し引かれた9,500円の支払いを受けることになります。

ポストペイ(後払い)方式の場合(売掛金を回収したとき)

これは、当社の代わりに消費者に商品販売代金を請求してもらうために、金銭債権(売掛金)を9,500円で譲渡したということになります。

したがって、売掛金から差し引かれる決済手数料相当額は、金銭債権の譲受差額に該当するため非課税仕入れとなります。

なお、キャッシュレス業者は、その後、金銭債権に係る権利(消費者に対して10,000円を請求できる権利)を行使して、消費者から10,000円を回収するとともに、金銭債権は消滅することになります。

ポストペイ(後払い)方式の場合(消費者から販売代金を回収したとき)

この場合の仕訳は以下のようになります。

ポストペイ(後払い)方式の場合の仕訳

具体的な例として、PayPayの決済手数料の取扱いについては、次の記事で解説しています。

 

入金手数料は月額使用料などは課税仕入れ

キャッシュレス業者からの代金回収時に差し引かれる入金手数料や月額使用料、年会費などの決済手数料以外の手数料等は、キャッシュレス業者から受ける役務の提供の対価なので、プリペイド(前払い)方式かポストペイ(後払い)方式かに関係なく課税仕入れとなります。

 

まとめ

キャッシュレス決済に係る決済手数料の消費税の取扱いは、金銭債権の譲受差額に該当するかどうかにより、以下のように考え方が異なります。

決済手数料の処理
① プリペイド(前払い)方式の場合
 → 課税仕入れ
② ポストペイ(後払い)方式の場合
 → 非課税仕入れ

なお、入金手数料や月額使用料、年会費などの決済手数料以外の手数料等は課税仕入れとなります。

 

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クレジットカードや電子マネーの決済手数料の考え方については、次の記事で詳しく解説しています。

 

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