商品の販売に係る売掛金が決済期日までに支払われない場合に、滞納期間に応じて遅延損害金を収受することがあります。
この場合、その商品仕入れに係る課税仕入れの用途区分はどうすればいいのでしょうか?
今回は、売掛金の遅延損害金を収受した場合の仕入商品の課税仕入れの用途区分の考え方について解説したいと思います。
遅延損害金を収受する場合、課税売上げと非課税売上げが生じる
商品販売に係る売掛金が決済期日までに支払われなかった場合に徴収される遅延損害金は非課税売上げとなります。
この場合、仕入商品に課税仕入れは、商品販売に係る課税売上げと遅延損害金の収受に係る非課税売上げの両方に対応することとなります。
個別対応方式により課税仕入れ等の税額を区分経理している場合は、「課税売上対応」か「共通対応」のどちらの用途区分が必要になるでしょうか?
用途区分は課税仕入れを行った日の状況により判断する
消費税法基本通達11-2-20において、以下のような記載があります。
(課税仕入れ等の用途区分の判定時期)
11-2-20 個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合において、課税仕入れ及び保税地域から引き取った課税貨物を課税資産の譲渡等にのみ要するもの、その他の資産の譲渡等にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分する場合の当該区分は、課税仕入れを行った日又は課税貨物を引き取った日の状況により行うこととなるのであるが、課税仕入れを行った日又は課税貨物を引き取った日において、当該区分が明らかにされていない場合で、その日の属する課税期間の末日までに、当該区分が明らかにされたときは、その明らかにされた区分によって法第30条第2項第1号《個別対応方式による仕入税額控除》の規定を適用することとして差し支えない。
太字部分で示したとおり、課税仕入れ等の用途区分は、課税仕入れを行った日の状況により判断することとされています。
売掛金の支払遅延により生じる遅延損害金は非課税売上げとなりますが、この遅延損害金は商品売買取引とは別の「売掛金の決済日後の金銭の貸付け」という金融取引によって生じたものであるため、商品販売によって一つの取引は完了し、その後、支払遅延という事実により新たに支払遅延損害金が生じたということです。
契約時点で、将来、支払遅延が生じた場合に遅延損害金が生じることが定められていたとしても、商品を仕入れた時点では、遅延損害金の支払を受けるかどうかは不確実なものであり、また、通常、商品販売は遅延損害金が生じることが予定されて行われるものではありません。
したがって、販売することを目的として仕入れた商品の仕入代金にかかる課税仕入れは、仕入時において「課税売上対応」に区分され、その後その商品の販売に関連して課税資産の譲渡等以外の取引が生じることとなったとしても、課税仕入れの用途区分を変更する必要はありません。
なお、課税仕入れ等の用途区分を当初の目的から変更した場合の取扱いについては、次の記事で詳しく解説しています。
遅延損害金の請求等に係る費用は非課税売上対応
遅延損害金を請求するために生じた費用がある場合は、その費用は「非課税売上対応」に区分されます。
例えば、商品を販売した得意先と連絡が取れず、直接会って請求しに行くため旅費交通費や弁護士の相談費用などは、遅延損害金(非課税売上げ)に係る課税仕入れとして非課税売上対応課税仕入れとなります。
まとめ
商品販売に係る売掛金の滞納に伴う遅延損害金は非課税売上となりますが、その仕入商品に係る課税仕入れの用途区分は、当初の目的である商品販売のみに対応するものとして「課税売上対応課税仕入れ」として区分します。
なお、その遅延損害金を請求するためにかかった費用は「非課税売上対応課税仕入れ」となります。