個人事業者が、棚卸資産や事業用資産などを家事のために消費または使用した場合は、事業として対価を得て行われた資産の譲渡があったものとみなされます。
では、個人事業者本人ではなく、個人事業者の配偶者や子供などが棚卸資産や事業用資産などを消費または使用した場合はどうなるでしょうか?
今回は、個人事業者が同一生計親族に資産を贈与した場合は「みなし譲渡」になるのかについて解説したいと思います。
課税の対象の4要件
消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。
個人事業者が、事業のために仕入れた商品や事業用資産をプライベート目的で消費または使用した場合は、対価を得ていないことから上記の「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさないことになるため、消費税の課税対象外(不課税取引)となります。
この場合、その商品や事業用資産の購入代金については仕入税額控除ができる一方で、その売却収入に係る課税標準額に対する消費税額は計上しないことになるため、実質的に消費税を負担せずに商品や事業用資産を購入していることになるため、課税の公平上問題があります。
そこで、個人事業者が棚卸資産や事業用資産などを家事のために消費または使用した場合には、事業として対価を得て行われた資産の譲渡があったものとなされます。
なお、みなし譲渡の規定が存在する理由については、詳しくは次の記事をご覧ください。
同一生計親族による家事消費等もみなし譲渡の対象になる
消費税法第4条第5項第1号において、「みなし譲渡」について次のように記載されています。
5 次に掲げる行為は、事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす。
一 個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合における当該消費又は使用
条文中では「個人事業者が」としか書かれていません。
では、個人事業者の配偶者や子などが棚卸資産や事業用資産を家事消費した場合は「みなし譲渡」の規定は適用されないのでしょうか?
この点について、消費税法基本通達5-3-1において、次のような記載があります。
(家事消費等の意義)
5-3-1 法第4条第5項第1号《個人事業者の家事消費等》に規定する「棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合」とは、同号に規定する資産を個人事業者又は当該個人事業者と生計を一にする親族の用に消費し、又は使用した場合をいう。(平27課消1-17により改正)
したがって、太字部分で示したとおり、個人事業者本人だけでなく、個人事業者の同一生計親族も「みなし譲渡」の適用対象となります。
同一生計親族とは
「同一生計親族」とは、具体的にどのような者が含まれるのでしょうか?
この点については、国税庁の「税について調べる」のコーナーで、次のように記載されています。
◆ 生計を一にする
日常の生活の資を共にすることをいいます。
会社員、公務員などが勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学、療養などのために別居している場合でも、①生活費、学資金又は療養費などを常に送金しているときや、②日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているときは、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
したがって、同じ家に住んでいる家族や、同じ家に住んでいなくても、就職や就学のために日常的に送金している場合は「同一生計親族」に該当するため、これらの者が個人事業者の商品や事業用資産などをプライベートのために消費または使用した場合は、「みなし譲渡」の規定が適用されます。
課税標準額に算入する金額
「みなし譲渡」に該当する場合は、それぞれ次の金額を課税標準額に算入します。
まとめ
個人事業者が商品や棚卸資産を家事のために消費または使用した場合は「みなし譲渡」の規定が適用されます。
これは、個人事業者本人だけでなく、個人事業者の同一生計親族が商品や棚卸資産を家事のために消費または使用した場合にも適用されることになります。
関連するアプリの問題
消費税法 無敵の一問一答
問題番号 | タイトル |
504 | 個人事業者の同一生計親族による商品の家事消費 |