以前、中間納付額の消費税と地方消費税の内訳がわからなくなってしまった場合の内訳の計算方法について解説しました。
中間納付額の金額によっては、これらの記事で紹介した計算式で計算した結果、消費税額と地方消費税額の合計が中間納付額と一致しない、または、消費税額の金額が一意に定まらないなどの矛盾が起きることがあります。
「計算式が間違っているのでは?」と思うかもしれませんが、そうではありません。
それは、前提となるその中間納付額の金額そのものが誤っているからです。
僕が考えた計算式が間違っているからではありません。
矛盾が生じた場合は、会計ソフトの入力ミスか、メモ等の金額の書き間違え又は読み間違えだと思われますので、金額が本当に正しいか再度ご確認ください。もし、計算の基礎となる中間納付額の仮定に誤りがある場合は、数学的に矛盾が生じることとなるため消費税額及び地方消費税額は正しく計算されません。
今回は、以前紹介した計算方法の計算結果に矛盾が生じた場合について説明します。
計算方法(再掲)
おさらいのために、以前紹介した中間納付額の消費税と地方消費税の内訳の計算方法を再掲します。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
これを踏まえて、計算結果に矛盾が生じた場合、それが何を意味するのか解説します。
合計額が一致しない場合
この計算式に当てはめて国税と地方税を計算した結果、国税と地方税の合計額が中間納付額の全体額と一致しないことがあります。
例えば、中間納付額320,400円、税率8%の場合、消費税額と地方消費税額の合計額が中間納付額と一致しないことになり、計算結果に矛盾が起きます。
消費税額と地方消費税額をそれぞれ計算してみると
消費税額=320,400円×63/80ー21.25円
=252,293.75円→252,300円(百円未満切上)
地方消費税額=252,300円×17/63
=68,080.95…円→68,000円(百円未満切捨)
合計:252,300円+68,000円=320,300円
となり、合計額が中間納付額320,400円と一致しません。
「計算式が間違っているからじゃないのか」と思われるかもしれませんが、そうではなく、このような矛盾が起きるのは計算の基礎となる中間納付額の仮定そのものが誤っているからです。
税率が8%の場合において、中間納付額が320,400円となる消費税額と地方消費税額の組み合わせは存在しません。
消費税額を100円ずつ増やしていった場合の地方消費税額の金額と合計額をまとめた以下の表を見れば、税率8%で中間納付額が320,400円になる組み合わせは存在しないことがわかります。
そもそも存在しない組み合わせの中間納付額を前提に計算を行っていたために、数学的な矛盾が生じたのです。
金額が一意に定まらない場合
今度は、さきほどの数値例と同じ金額で、税率が5%の場合についても考えます。
この計算式に当てはめて国税の金額を計算しようとしたところ、金額が一意に定まらないということがあります。
中間納付額320,400円、税率5%の場合、消費税額の金額が一意に定まらないことになり、計算結果に矛盾が起きます。
消費税額(国税)を2通りの方法でそれぞれ計算してみると
消費税額=320,400円×4/5ー20円
となり、金額が一意に定まりません。
これも「計算式が間違っているからじゃないのか」と思われるかもしれませんが、そうではなく、このような矛盾が起きるのは計算の基礎となる中間納付額の仮定そのものが誤っているからです。
税率が5%の場合において、中間納付額が320,400円となる消費税額と地方消費税額の組み合わせは存在しません。
消費税額を100円ずつ増やしていった場合の地方消費税額の金額と合計額をまとめた以下の表を見れば、税率5%で中間納付額が320,400円になる組み合わせは存在しないことがわかります。
もし計算結果に矛盾が生じた場合は、前提となる中間納付額の金額が間違っていることになるため、もう一度金額を確認してみましょう。
矛盾が起きる理由
このような矛盾が起きる理由は、以下の記事で解説した数式の条件を満たす整数nが存在しないからです。
あり得ない(存在しない)消費税額と地方消費税額の組み合わせの中間納付額を前提に計算したために、数学的な矛盾が生じることとなったのです。
背理法の考え方により、計算結果に矛盾が生じたということは、そもそもの計算の仮定が間違いであったと結論付けることができます。
計算の前提となる中間納付額自体に誤りがないか、もう一度確認してみましょう。