賃貸不動産等の売買時に保証金の返還義務を引き継いだ場合の会計処理

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

賃貸不動産等の売買が行われる場合、前のオーナーが入居者から収受している敷金などの預り保証金の返還義務を持ち回りで引き継ぐことがあります。

今回は、賃貸不動産等の売買時に保証金の返還義務を引き継いだ場合の会計処理と消費税の取扱いについて解説したいと思います。

 

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消費税の課税標準

課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、消費税法第28条第1項において、次のように規定されています。

(課税標準)
第二十八条 課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を含まないものとする。以下この項及び第三項において同じ。)とする。

課税資産の譲渡等の対価の額は「対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額」とされています。

「経済的な利益」とは、一体どのようなものを指すのでしょうか?

 

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経済的な利益とは

「経済的な利益」については、消費税法基本通達10-1-3において、次のように規定されています。

(経済的利益)
10-1-3 法第28条第1項かっこ書《課税標準》に規定する「金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益」とは、例えば、課税資産の譲渡等の対価として金銭以外の物若しくは権利の給付を受け、又は金銭を無償若しくは通常の利率よりも低い利率で借受けをした場合のように、実質的に資産の譲渡等の対価と同様の経済的効果をもたらすものをいう。

賃貸不動産等を売買した際に敷金などの預り保証金の返済義務を引き継がせる場合は、その金額は実質的に資産の譲渡等の対価と同様の経済効果をもたらすこととなるため、引き継いだ預り保証金も資産の譲渡等の対価の額に含まれることになります。

 

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仕訳例

数値例
A社は、B社に対し、事務所用の土地付き建物を現金7,500万円で譲渡した。
なお、A社がテナントの入居者から収受していた預り保証金500万円の返還義務もB社に引き継がせている。
譲渡時における土地と建物の簿価及び時価はそれぞれ以下のとおりである。
土地:簿価 4,000万円、時価 5,000万円
建物:簿価 2,500万円、時価 3,000万円

売り主(A社)側の仕訳

B社に返還義務を引き継がせた預り保証金500万円についても、資産の譲渡等の対価に含めて考えます。

なお、時価等の比率で按分した土地部分の譲渡対価は非課税売上げとなります。

売り主(A社)側の仕訳

買い主(B社)側の仕訳

A社から返還義務を引き継いだ預り保証金500万円についても、課税仕入れに係る支払対価の額に含めて計算します。

なお、時価等の比率で按分した土地部分の譲渡対価は非課税仕入れとなります。

買い主(B社)側の仕訳

 

まとめ

賃貸不動産等の売買時に敷金などの預り保証金の返還義務を引き継いだ場合は、その金額は経済的な利益を受けたものとして、資産の譲渡等の対価の額に含まれます。

もし預り保証金の額について対価の額に含めずに計算してしてしまうと、本来より納付税額が少なくなってしまい過少申告になってしまうため注意しましょう。

 

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入居者から敷金や礼金を受け取った場合の消費税の取扱いについては、詳しくは次の記事で解説しています。

 

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消費税法 無敵の一問一答

問題番号 タイトル
531 保証金の返還義務の引継ぎ

 

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