インターネット宿泊予約サイトへの掲載手数料に係る消費税の取扱い

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

ホテルや旅館、民宿などの宿泊施設を運営している場合は、集客のために宿泊予約サイトに掲載手数料を支払っている方が多いと思います。

今回は、インターネット宿泊予約サイトへの掲載手数料に係る消費税の取扱いについて解説したいと思います。

 

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宿泊予約サイトへの掲載手数料の支払いは「国内取引」に該当する

消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。

課税の対象の4要件
① 国内において行うものであること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行うものであること
④ 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること

宿泊予約サイトに宿泊施設を掲載するサービスの提供は、消費税法上「電気通信利用役務の提供」に該当します

「電気通信利用役務の提供」については、役務の提供を受ける者の住所等の所在地が国内にあるかどうかにより、上記の「① 国内において行うものであること」の要件を満たすかどうかの判定を行います。

したがって、国内の事業者が宿泊予約サイトに掲載手数料を支払う場合は、国内取引の要件を満たすことになり、消費税の課税の対象となります。

ただし、宿泊予約サイトが国外事業者(海外に本店等を有する事業者)の場合は注意が必要になります。

 

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宿泊予約サイトの運営者が国内事業者か国外事業者かにより異なる

宿泊予約サイトに支払う掲載手数料は、その宿泊予約サイトが国内事業者であるか国外事業者でるかにより消費税の取扱いが異なります。

有名どころの宿泊予約サイトが国内事業者か国外事業者かの違いは、以下のとおりです。

国内事業者 国外事業者

・楽天トラベル

・じゃらん

・るるぶトラベル

・Yahoo!トラベル

・一休.com

・Relux

・ベストリザーブ

・WILLER TRAVEL

・マイナビトラベル

・Booking.com(ブッキングドットコム)

・Expedia(エクスペディア)

・agoda(アゴダ)

・Trip.com(トリップドットコム ※ 旧Ctrip)

・Hotels.com(ホテルズドットコム)

・HOTELWORLD(ホステルワールド)

・Airbnb(エアビーアンドビー)

 

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宿泊予約サイトの運営者が国内事業者の場合

宿泊予約サイトの運営者が国内事業者の場合は、掲載手数料は普通に「課税仕入れ」となります。

個別対応方式を採用している場合は、宿泊料金(課税売上げ)に対応する課税売上げとして「課税売上対応課税仕入れ等」に該当します。

 

宿泊予約サイトの運営者が国外事業者の場合

国外事業者から電気通信利用役務の提供を受けた場合は、その電気通信利用役務の提供が「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当するか「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するかにより消費税の処理は異なりますが、インターネット宿泊予約サイトに宿泊施設を掲載するサービスは、通常、利用者が事業者に限られるため「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当します。

「事業者向け電気通信利用役務の提供」については「特定課税仕入れ」として役務の提供を受けた国内事業者に納税義務が課される「リバースチャージ方式」が適用されることになります。

したがって、宿泊予約サイトの運営者が国外事業者の場合は、掲載手数料は「特定課税仕入れ」としてリバースチャージ方式を適用する必要があります。

ただし、経過措置として、以下に該当する場合は、当分の間その特定課税仕入れはなかったものとみなされます。(リバースチャージ方式を適用する必要はありませんが、課税仕入れとして仕入税額控除することもできません。つまり、結果的には不課税仕入れと同じになります。)

① 一般課税で、かつ、課税売上割合が95%以上の課税期間
② 簡易課税制度が適用される課税期間

 

(注意)国外に所在する宿泊施設の掲載手数料は不課税

消費税法基本通達5-7-15の4において、以下のような記載があります。

(国内事業者の国外事業所等で行う特定仕入れに係る内外判定)
5-7-15の4 事業者(国外事業者を除く。以下5-7-15の4において同じ。)の国外事業所等(法第4条第4項ただし書《課税の対象》に規定する国外事業所等をいう。以下11-2-13の2において同じ。)で行う特定仕入れが国内において行われたかどうかの判定は、当該特定仕入れを行った日の状況により行うのであるから、当該特定仕入れを行った日において、国内以外の地域において行う資産の譲渡等にのみ要するものであることが明らかなもののみが国外取引に該当することに留意する。

この通達は、日本の法人が国外に有する飲食店や宿泊施設を海外の宿泊サイトに掲載した場合にまでリバースチャージ方式を適用するのは消費地課税主義の観点から見て適切ではないことから、実質的にサービスを受ける者の事務所等が国外である場合は、国内取引の要件に該当しないものとして消費税の課税対象外取引(不課税取引)として扱うものです。

したがって、日本の宿泊施設運業者が、海外に所有しているホテルを海外の宿泊予約サイトに掲載した場合に支払う掲載手数料は、国外事業所等(海外のホテル)の所在地が国外であり、かつ、国内以外の地域において行う資産の譲渡等にのみ要するものであることが明らかであるため、国内取引の要件を満たさず消費税の課税対象外取引(不課税取引)となり、リバースチャージ方式の適用はありません。

なお、電気通信量役務の提供について上記のような国内取引の判定を行うのは、国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合に限られ、国内の事業者から電気通信利用役務の提供を受けた場合は、原則通り役務の提供を受けた者の住所等で判断することの注意しましょう。

例えば、日本の宿泊施設運業者が、海外に所在する宿泊施設を日本の宿泊予約サイトに掲載するために掲載手数料を支払った場合は、普通の課税仕入れとなります。この場合、リバースチャージ方式の適用はありません。

 

まとめ

インターネット宿泊予約サイトに掲載手数料を支払った場合の消費税の取扱いをまとめると、以下のようになります。

掲載手数料の内容 消費税の課税関係
国内事業者が運営する宿泊予約サイト 課税仕入れ
国外事業者が運営する宿泊予約サイト 宿泊施設の所在地が国内 下記以外 特定課税仕入れ(リバースチャージ方式)
一般課税で課税売上割合95%以上 又は 簡易課税 特定課税仕入れはなかったものとみなす
宿泊施設の所在地が国外 不課税取引

 

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問題番号 タイトル
47 国内事業者の国外事業所等に対する事業者向け電気通信利用役務の提供

 

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