居酒屋やレストラン、カフェなどの飲食店を経営している場合は、集客のために飲食店予約サイトに掲載手数料を支払っている方が多いと思います。
今回は、インターネット飲食店予約サイトへの掲載手数料に係る消費税の取扱いについて解説したいと思います。
飲食店予約サイトへの掲載手数料の支払いは「国内取引」に該当する
消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。
飲食店予約サイトにメニューや予約情報を掲載するサービスの提供は、消費税法上「電気通信利用役務の提供」に該当します
「電気通信利用役務の提供」については、役務の提供を受ける者の住所等の所在地が国内にあるかどうかにより、上記の「① 国内において行うものであること」の要件を満たすかどうかの判定を行います。
したがって、国内の事業者が飲食店予約サイトに掲載手数料を支払う場合は、国内取引の要件を満たすことになり、消費税の課税の対象となります。
ただし、飲食店予約サイトが国外事業者(海外に本店等を有する事業者)の場合は注意が必要になります。
飲食店予約サイトの運営者が国内事業者か国外事業者かにより異なる
飲食店予約サイトに支払う掲載手数料は、その飲食店予約サイトが国内事業者であるか国外事業者でるかにより消費税の取扱いが異なります。
日本国内の飲食店予約サイトはほとんどが日本企業が運営していますが、海外企業が運営する飲食店予約サイトに掲載手数料を支払う場合は注意が必要です。
飲食店予約サイトの運営者が国内事業者の場合
飲食店予約サイトの運営者が国内事業者の場合は、掲載手数料は普通に「課税仕入れ」となります。
個別対応方式を採用している場合は、飲食料金(課税売上げ)に対応する課税売上げとして「課税売上対応課税仕入れ等」に該当します。
飲食店予約サイトの運営者が国外事業者の場合
国外事業者から電気通信利用役務の提供を受けた場合は、その電気通信利用役務の提供が「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当するか「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するかにより消費税の処理は異なりますが、インターネット飲食店予約サイトに宿泊施設を掲載するサービスは、通常、利用者が事業者に限られるため「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当します。
「事業者向け電気通信利用役務の提供」については「特定課税仕入れ」として役務の提供を受けた国内事業者に納税義務が課される「リバースチャージ方式」が適用されることになります。
したがって、飲食店予約サイトの運営者が国外事業者の場合は、掲載手数料は「特定課税仕入れ」としてリバースチャージ方式を適用する必要があります。
ただし、経過措置として、以下に該当する場合は、当分の間その特定課税仕入れはなかったものとみなされます。(リバースチャージ方式を適用する必要はありませんが、課税仕入れとして仕入税額控除することもできません。つまり、結果的には不課税仕入れと同じになります。)
(注意)国外に所在する飲食店の掲載手数料は不課税
消費税法基本通達5-7-15の4において、以下のような記載があります。
(国内事業者の国外事業所等で行う特定仕入れに係る内外判定)
5-7-15の4 事業者(国外事業者を除く。以下5-7-15の4において同じ。)の国外事業所等(法第4条第4項ただし書《課税の対象》に規定する国外事業所等をいう。以下11-2-13の2において同じ。)で行う特定仕入れが国内において行われたかどうかの判定は、当該特定仕入れを行った日の状況により行うのであるから、当該特定仕入れを行った日において、国内以外の地域において行う資産の譲渡等にのみ要するものであることが明らかなもののみが国外取引に該当することに留意する。
この通達は、日本の法人が国外に有する飲食店や宿泊施設を海外の宿泊サイトに掲載した場合にまでリバースチャージ方式を適用するのは消費地課税主義の観点から見て適切ではないことから、実質的にサービスを受ける者の事務所等が国外である場合は、国内取引の要件に該当しないものとして消費税の課税対象外取引(不課税取引)として扱うものです。
したがって、日本の飲食店業者が、海外に所在する飲食店を海外の飲食店予約サイトに掲載した場合に支払う掲載手数料は、国外事業所等(海外のホテル)の所在地が国外であり、かつ、国内以外の地域において行う資産の譲渡等にのみ要するものであることが明らかであるため、国内取引の要件を満たさず消費税の課税対象外取引(不課税取引)となり、リバースチャージ方式の適用はありません。
なお、電気通信量役務の提供について上記のような国内取引の判定を行うのは、国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合に限られ、国内の事業者から電気通信利用役務の提供を受けた場合は、原則通り役務の提供を受けた者の住所等で判断することの注意しましょう。
例えば、日本の飲食店業者が、海外に所在する飲食店を日本の飲食店予約サイトに掲載するために掲載手数料を支払った場合は、普通の課税仕入れとなります。この場合、リバースチャージ方式の適用はありません。
まとめ
インターネット飲食店予約サイトに掲載手数料を支払った場合の消費税の取扱いをまとめると、以下のようになります。
掲載手数料の内容 | 消費税の課税関係 | ||
国内事業者が運営する飲食店予約サイト | 課税仕入れ | ||
国外事業者が運営する飲食店予約サイト | 飲食店の所在地が国内 | 下記以外 | 特定課税仕入れ(リバースチャージ方式) |
一般課税で課税売上割合95%以上 又は 簡易課税 | 特定課税仕入れはなかったものとみなす | ||
飲食店の所在地が国外 | 不課税取引 |
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47 | 国内事業者の国外事業所等に対する事業者向け電気通信利用役務の提供 |