令和2年4月1日以後の住宅の貸付けに係る非課税判定の注意点

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

令和2年度税制改正において、居住用賃貸建物の課税仕入れについて仕入税額控除の適用を制限する特例が創設されました。

この特例の創設と合わせて、非課税とされる住宅の貸付けに該当するかどうかの判定方法も改正されることとなりました。

今回は、令和2年4月1日以後の住宅の貸付けに係る非課税取引の判定の注意点について解説したいと思います。

 

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令和2年度税制改正

令和2年税制改正により、令和2年10月1日以後に行う居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等については、仕入税額控除が認められないこととなりました。

この点については、次の記事で詳しく解説しています。

この税制改正に伴い、特例を補強するために住宅の貸付けに係る非課税取引の判定方法も見直しが行われました。

 

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改正後は、実態として人の居住用だと明らかな場合は非課税に

令和2年税制改正の前は、非課税とされる住宅の貸付けに該当するかどうかは、「その貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされているものに限る」こととされていましたが、改正により、令和2年4月1日以後の貸付けについては、契約において明らかでなくても「その貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合」には、これを非課税とされる住宅の貸付けの範囲に含むこととされました。

令和2年3月31日以前 当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされているものに限る
令和2年4月1日以後 当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされている場合(当該契約において当該貸付けに係る用途が明らかにされていない場合に当該貸付け等の状況から見て人の居住の用に供されていることが明らかな場合を含む。)に限る

この改正は、令和2年4月1日以後に行う貸付けに適用されます。既存の貸付けについても、新しい基準により非課税取引に該当するかどうかの判定を行います。

 

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貸付けに係る用途が明らかにされていない場合とは

「当該貸付けに係る用途が明らかにされていない場合」には、例えば、住宅の賃貸に係る契約において、住宅を居住用又は事業用どちらでも使用することができることとされている場合が含まれます。

 

貸付け等の状況から見て人の居住の用に供されていることが明らかな場合とは

「貸付け等の状況から見て人の居住の用に供されていることが明らかな場合」とは、住宅の賃貸に係る契約においてその貸付けに係る用途が明らかにされていない場合に、その貸付けに係る賃借人や住宅の状況その他の状況から見て人の居住の用に供されていることが明らかな場合を言います。

例えば、住宅を賃貸する場合において、次に掲げるような場合が該当します。

(1) 住宅の賃借人が個人であって、当該住宅が人の居住の用に供されていないことを賃貸人が把握していない場合
(2) 住宅の賃借人が当該住宅を第三者に転貸している場合であって、当該賃借人と入居者である転借人との間の契約において人の居住の用に供することが明らかにされている場合
(3) 住宅の賃借人が当該住宅を第三者に転貸している場合であって、当該賃借人と入居者である転借人との間の契約において貸付けに係る用途が明らかにされていないが、当該転借人が個人であって、当該住宅が人の居住の用に供されていないことを賃貸人が把握していない場合

住宅の賃借人が個人である場合は、たいていの場合は居住用として使用されるため、契約で用途を明らかにしていなかったとしても、居住用として住宅を貸し付けているものと考えて非課税取引と判定します。

 

(参考)判定が変わっても調整対象固定資産の転用の調整は不要

令和2年度税制改正により、令和2年3月31日以前は「住宅の貸付け」に該当しないものとして課税資産の譲渡等としてきた貸付けが、令和2年4月1日以後は非課税資産の譲渡等に該当することになる場合、調整対象固定資産を転用した場合の調整は必要になるのでしょうか?

この点については、令和2年改正法附則第46条第2項において、次のように規定されています。

2 建物の貸付け(資産の譲渡等で新消費税法別表第二第十三号に掲げる資産の譲渡等に該当するもの(第六条の規定による改正前の消費税法別表第二第十三号に掲げる資産の譲渡等に該当するものを除く。)をいう。以下この項において同じ。)を行う事業者(消費税法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、建物の貸付けに係る業務の用に供するため、施行日前に国内において調整対象固定資産(同法第二条第一項第十六号に規定する調整対象固定資産をいう。以下この項において同じ。)の課税仕入れを行った、又は施行日前に調整対象固定資産に該当する課税貨物を保税地域から引き取った場合には、当該調整対象固定資産を施行日以後引き続き当該業務の用に供している間は、当該調整対象固定資産については、同法第三十四条第一項に規定する課税資産の譲渡等に係る業務の用に供しているものとみなして、同条の規定を適用する。

したがって、課税売上げとしていた建物の賃貸収入が改正により非課税売上げに該当することとなったとしても、調整対象固定資産を課税業務用から非課税業務用に転用した場合の調整を行う必要はありません。

なお、調整対象固定資産の転用については、詳しくは次の記事をご覧ください。

 

まとめ

令和2年4月1日以後に行う建物の貸し付けが、非課税とされる「住宅の貸付け」に該当するかどうかは、次の表のとおりに判定します。

貸付期間 契約上の用途 使用実態 課否判定
1か月以上 居住用 非課税取引
不明 人の居住の用に供されていることが明らか
上記以外 課税取引
事業用
1か月未満

 

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