通勤手当の「通常必要であると認められる部分」ってどんな部分?
MichaelGaida / Pixabay

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

消費税では、従業員に支給した通勤手当は、通勤のために通常必要と認められる範囲内の金額であれば、所得税法上非課税とされる金額を超えている場合であっても課税仕入れに該当します。

所得税法では、通勤手当に係る非課税限度額は明確に規定されていますが、消費税法では課税仕入れとして認められる通勤手当の金額については「通常必要であると認められる部分」と書いてあるだけで、具体的な金額は明確に規定されていません。

「通常必要であると認められる部分」ってどんな部分?と気になる方も多いと思います。

そこで、今回は通勤手当の「通常必要であると認められる部分」とはどんな部分なのか考察してみたいと思います。

 

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所得税法上の通勤手当の取扱い

所得税法では、役員や使用人に通常の給与に加算して支給する通勤手当や通勤定期券などは、一定の限度額まで非課税となっています。

電車やバスだけを利用して通勤している場合と、マイカーや自転車で通勤している場合とでそれぞれ非課税限度額が異なります。

電車やバスだけを利用して通勤している場合の非課税限度額については、国税庁のタックスアンサーに以下のように記載されています。

(電車やバスだけを利用して通勤している場合)
この場合の非課税となる限度額は、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額です。
新幹線鉄道を利用した場合の運賃等の額も「経済的かつ合理的な方法による金額」に含まれますが、グリーン料金は含まれません。
最も経済的かつ合理的な経路及び方法による通勤手当や通勤定期券などの金額が、1か月当たり15万円を超える場合には、15万円が非課税となる限度額となります。

また、マイカーや自転車で通勤している場合の非課税限度額については、片道の通勤距離に応じて以下のように定められています。

1 2キロメートル未満の場合は、全額課税
2 2キロメートル以上、10キロメートル未満の場合は、1か月当たり4,200円
3 10キロメートル以上、15キロメートル未満の場合は、1か月当たり7,100円
4 15キロメートル以上、25キロメートル未満の場合は、1か月当たり12,900円
5 25キロメートル以上、35キロメートル未満の場合は、1か月当たり18,700円
6 35キロメートル以上、45キロメートル未満の場合は、1か月当たり24,400円
7 45キロメートル以上、55キロメートル未満の場合は、1か月当たり28,000円
8 55キロメートル以上の場合は、1か月当たり31,600円

このように、所得税法においては非課税限度額が具体的に規定されています。

なお、電車やバスなどのほかにマイカーや自転車なども使っている場合の非課税限度額も1か月あたり15万円です。

 

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消費税法上の通勤手当の取扱い

消費税法上の通勤手当の取扱いについては、国税庁の消費税法基本通達11-6-5で次のように記載されています。

(通常必要であると認められる通勤手当)
11-6-5 規則第15条の4第3号《請求書等の交付を受けることが困難な課税仕入れ》に規定する「通勤者につき通常必要であると認められる部分」とは、事業者が通勤者に支給する通勤手当が、当該通勤者がその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとした場合に、その通勤に通常必要であると認められるものをいう。
 したがって、所法令第20条の2各号《非課税とされる通勤手当》に定める金額を超えているかどうかにかかわらないことに留意する。

このように、「通常必要と認められる部分の金額」と記載されているだけで具体的な金額は書かれていません。

なお、国税庁の質疑応答事例の回答要旨には、次のように記載されています。

【回答要旨】
1 事業者が使用人等に支給する通勤手当(通勤定期等の現物による支給を含む。)のうち通勤のために通常必要とする範囲内のものは、所得税法上非課税とされる金額を超えている場合であっても、その全額が課税仕入れに該当するものとして取り扱います(基通11-2-2)。

・・・(後略)

したがって、通勤手当が課税仕入れに該当するかどうかは、所得税法上の非課税限度額の範囲内であるかどうかにかかわらず、「通勤のために通常必要とする範囲内」の金額かどうかで判断することとなります。

 

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通常必要な範囲って何?

「通常必要な範囲」については明確かつ具体的な規定がありません。

しかし、金額以外の判断基準は、所得税法上の非課税限度額の判断基準とおおむね同じだと理解してもよさそうです。

例えば、業務の必要上、全国各地の事業所に行くために毎日非常に遠距離な通勤をしており、ほぼ毎日新幹線で移動するような場合もあります。

この場合、1か月の非課税限度額を超えていても、新幹線移動という経済的かつ合理的な方法による運賃の金額を通勤手当として支給しているのなら、その業務のために通常必要な範囲内の金額といえるため、消費税の課税仕入れに該当することになります。

ただし、新幹線であっても、グリーン料金は最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法のための料金とは認められないため含まれません。

また、例えば、全国各地の事業所に運転手付きの超胴長な高級リムジンで毎日移動しているような場合なども、その移動費用に係る通勤手当は経済的かつ合理的な方法による金額とはいえないため、消費税法上も「通常必要と認められる範囲内の金額」としては認められず給与扱いされるでしょう。

消費税の通勤手当の処理については、明確な規定がない以上、常識的な内容のものであれば税務調査等でも大きな問題になることはないと思います。

なお、以前書いた記事で、マイカー通勤や自転車通勤に係る通勤手当の取扱いについて説明しました。

こちら↓も参考までにご覧いただけたらと思います。

また、従業員等に支払う通勤手当のうち、実費相当額(自動車通勤者に支払うガソリン代等)が所得税法上の非課税限度額を下回る場合であっても、当該非課税限度額の金額が課税仕入れとして認められることになります。

この点については、詳しくは次の記事をご覧ください。

 

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消費税法 無敵の一問一答

問題番号 タイトル
599 非課税限度額を超える通勤手当

 

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