事業を営んでいた父や母が死亡した場合、子がその事業を相続することがあります。
もし被相続人である父や母が消費税の課税事業者であり、簡易課税制度を選択していた場合は、相続人である子もそのまま簡易課税制度が適用されるのでしょうか?
被相続人が簡易課税を選択していた場合、相続人も簡易課税になるのかどうかについて解説したいと思います。
相続があった場合の消費税の納税義務
消費税の課税事業者である被相続人の事業を免税事業者が承継した場合は納税義務の免除の特例が適用されます。
相続があった年の基準期間(前々年)における被相続人の課税売上高が1,000万円を超えている場合は、その事業を承継した相続人が免税事業者であっても、その相続のあった日の翌日からその年の12月31日までの間は消費税の課税事業者となります。
この点については詳しくは次の記事をご覧ください。
簡易課税制度は事業者ごとに選択する必要がある
課税事業者であった被相続人が簡易課税制度を選択して消費税の納付税額を計算していたのなら、その事業を引き継いだ相続人もそのまま簡易課税制度が適用されるんじゃないか?と思う方もいるかもしれませんが、残念ながらそうはなりません。
簡易課税制度は事業者ごとに選択する必要があるため、被相続人が簡易課税制度を選択していたとしても、その効力がそのまま相続人に引き継がれる訳ではありません。
免税事業者であった被相続人が、相続した事業について簡易課税制度を選択したい場合は、その相続があった年中に「簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
なお、被相続人がもともと課税事業者であった場合は、前年の末日までに「簡易課税制度選択届出書」していなければ、簡易課税制度を選択することはできません。
(参考)被相続人が提出した課税事業者選択届出書の効力についても同様
被相続人が課税事業者選択届出書を提出していた場合も同様に考えます。
被相続人が課税事業者選択届出書を提出していたことにより、相続があった年の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であり課税事業者となっている場合は、相続人もそのまま課税事業者となるわけではありません。
課税事業者の選択により課税事業者となっていた被相続人の事業を承継した相続人が課税事業者を選択したい場合は、相続においても個別に課税事業者選択届出書を提出する必要があります。
まとめ
被相続人が簡易課税を選択していたとしても、相続人においてもそのまま簡易課税制度が適用されるわけではありません。
簡易課税制度は事業者ごとに選択する必要があるため、免税事業者であった被相続人が、相続した事業について簡易課税制度を選択したい場合は、その相続があった年中に「簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。