自己破産した顧客に対する売掛金についての貸倒れに係る消費税額の控除
この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

商品等を販売した顧客が自己破産し、売掛金が回収できなくなってしまうことがあります。

このような場合、消費税の申告をする上で「貸倒れに係る消費税額の控除」の適用を受けることはできるのでしょうか?

今回は、自己破産した顧客に対する売掛金についての貸倒れに係る消費税額の控除の適用の有無について解説したいと思います。

 

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貸倒れに係る消費税額の控除

消費税法では、課税売上げとして計上した売掛金が貸倒れとなってしまった場合は、その貸倒れとなった金額に係る消費税額を課税標準額に対する消費税額から控除することができます。

この規定は「貸倒れに係る消費税額の控除」といい、消費税法第39条において次のように規定されています。

(貸倒れに係る消費税額の控除等)
第三十九条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)を行つた場合において、当該課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権につき更生計画認可の決定により債権の切捨てがあつたことその他これに準ずるものとして政令で定める事実が生じたため、当該課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をすることができなくなつたときは、当該領収をすることができないこととなつた日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該領収をすることができなくなつた課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額(当該税込価額に百八分の六・三を乗じて算出した金額をいう。第三項において同じ。)の合計額を控除する。

 

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控除の対象となる貸倒れとは

消費税法39条「貸し倒れに係る消費税額の控除」の規定が適用される主な例は、国税庁が公表しているタックスアンサーNo.6367『貸倒れに係る税額の調整』において次のように記載されています。

概要
売掛金その他の債権が貸倒れとなったときは、貸倒れとなった金額に対応する消費税額を貸倒れの発生した課税期間の売上げに対する消費税額から控除します。

対象となる貸倒れ
控除の対象となる貸倒れは、消費税の課税対象となる取引の売掛金その他の債権(以下「売掛金等」といいます。)に限られます。

貸倒れとして認められる主な例は次のとおりです。

1 更生計画認可の決定、再生計画認可の決定などにより債権の切捨てがあったこと。
2 債務者の財産状況、支払能力等からみてその債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかであること。
3 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で、一定の要件に該当する基準により債権の切捨てがあったこと。
4 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その債権の弁済を受けることができないと認められる場合に、その債務者に対し書面により債務の免除を行ったこと。

「自己破産」した場合については、上記の具体例の中に明示されていません。

では、課税資産の譲渡等の相手方が自己破産した場合は貸倒れに係る消費税額の控除の適用対象となるのでしょうか?

 

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自己破産は「債務者の財産状況、支払能力等からみてその債務者が債務の全額を弁済できないことが明らか」な場合に該当

自己破産した顧客の破産手続終結の決定があった場合や、破産管財人から内容証明郵便により配当がない旨の通知を受けた場合は、「債務に係る債務者の財産の状況、支払能力等からみて当該債務者が債務の全額を弁済できないことが明らか」な場合に該当します。

したがって、これは消費税法第39条第1項に規定する「貸倒れの事実」が生じたことに該当するため、貸倒れに係る消費税額の控除の規定の適用を受けることができます。

(参考)平成20年6月26日 国税不服審判所裁決(裁決事例集No.75 314頁)

 

まとめ

商品等を販売した顧客が自己破産した場合は「債務に係る債務者の財産の状況、支払能力等からみて当該債務者が債務の全額を弁済できないことが明らか」な場合に該当するため、貸倒れに係る消費税額の控除の規定の適用を受けることができます。

 

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