全国旅行支援キャンペーンの割引を受ける場合、宿泊時に一定額の「地域限定クーポン券」の配布を受けることができます。
今回は、全国旅行支援キャンペーンの「地域限定クーポン券」の配布を受けた場合や使用した場合の具体的な仕訳例と消費税の取扱いについて解説したいと思います。
全国旅行支援の仕組み
全国旅行支援キャンペーンでは、国内旅行を対象に宿泊・日帰りの旅行代金の一部を国が補助してくれるため、割安で旅行に出かけることができます。
補助の内容は、①旅行代金の割引と②地域限定クーポン券の配布から成りますが、この記事では①旅行代金の割引についての仕訳例と消費税の取扱いについて解説します。
② 地域限定クーポン券の配布 ← この記事で解説
① 旅行代金の割引を受けた場合の仕訳例と消費税の取り扱いの考え方については、次の記事をご覧ください。
なお、全国旅行支援キャンペーンに係る旅行代金やクーポン券の取扱いは、以前実施されていた「Go To トラベルキャンペーン」のときとまったく同じです。
Go To トラベルキャンペーンについて詳しくは、次の記事をご覧ください。
「地域限定クーポン券」とは
「地域限定クーポン券」とは、旅行代金が割引になる全国旅行支援キャンペーンに加えて、旅行業者や宿泊事業者から受け取ることができる一定額の商品券のことをいいます。
地域限定クーポン券には紙の商品券とスマホ決済可能な電子クーポンの2種類があります。
(下の写真は、当サイト運営者が長崎に旅行に行った際に受け取った紙のクーポン券です。)
旅行者は、旅行期間中に限り旅行先の都道府県内と隣接する都道府県内の対象店舗で地域限定クーポン券を使って代金を支払うことができます。
地域限定クーポン券は原則として平日は3,000円(2023年以降は2,000円に引き下げ)、休日は1,000円分がもらえます。
例えば、2022年中に全国旅行支援の対象となる宿泊施設で宿泊した場合は、3,000円分の地域限定クーポン券を受け取ることができます。
宿泊料金10,000円(全国旅行支援割引額4,000円)のホテルを利用した宿泊客がホテルから配布された3,000円分の地域限定クーポン券を対象店舗で使用して5,000円の商品を購入した場合のお金の流れは、以下のイラストのようになります。
地域限定クーポン券は「物品切手等」に該当する
消費税法上、物品の給付、貸付け又は役務の提供に係る請求権を表彰する証書を「物品切手等」といいます。
「請求権を表彰する証書」の意義については消費税法基本通達6-4-3において、次のように規定されています。
(請求権を表彰する証書の意義)
法別表第二第4号ハ《物品切手等の譲渡》及び令第11条《物品切手に類するものの範囲》に規定する「請求権を表彰する証書」とは、証書の所持人に対してその作成者又は給付義務者がこれと引換えに一定の物品の給付若しくは貸付け又は特定の役務の提供をすることを約する証書をいい、記名式であるかどうか、又は当該証書の作成者と給付義務者とが同一であるかどうかを問わない。
(注) 資産の寄託者が倉庫業者あてに作成する出荷依頼書等又はこれらに類する文書は、物品切手等に該当しない。
全国旅行支援キャンペーンにより配布を受ける地域限定クーポン券は、それと引き換えに商品の給付を受けることができる「請求権を表彰する証書」であるため、「物品切手等」に該当します。
宿泊客の仕訳と消費税の取り扱い
上記の数値例と同様、会社の出張で、宿泊料金10,000円(全国旅行支援割引額4,000円)のホテルを利用し、ホテルから配布された3,000円分の地域共通クーポン券を対象店舗で使用して5,000円の商品を購入した場合の宿泊客の仕訳と消費税の取り扱いについて考えます。
宿泊料金支払時
宿泊料金支払い時は、全国旅行支援割引額は「雑収入」などの収益科目で計上し、不課税売上げとなります。
宿泊料金10,000円は全額が課税仕入れとなります。
なお、全国旅行支援割引の仕訳処理の考え方については、以下の記事で詳しく解説しているため、この記事では詳細の解説は割愛します。
地域限定クーポン券を受け取ったとき
地域限定クーポン券は通常の商品券と同様、「受取商品券」などの資産の勘定科目で処理します。(「貯蔵品」や「前払金」などでもかまいません。)
また、地域限定クーポン券の受取額は、その金額分の補助金を国から受け取ったのと同じであるため、「雑収入」などの収益の勘定科目で処理します。
消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。
地域限定クーポン券の受け取りは、上記4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさないため不課税取引となります。
したがって、仕訳は以下のようになります。
地域限定クーポン券を会社業務のために使用したとき
地域限定クーポン券を会社業務のために使用したときは、受け取り時に計上した「受取商品券」などの資産の勘定科目を取り崩して、購入した商品等の内容に応じて該当する費用勘定に振り替えます。
3,000円分の地域限定クーポン券を使用して5,000円の事務用消耗品を購入し、差額2,000円を現金で支払った場合は、以下のような仕訳になります。
ホテルの仕訳と消費税の取扱い
上記の数値例と同様、宿泊客が宿泊料金10,000円(全国旅行支援割引額4,000円)のホテルを利用し、3,000円分の地域共通クーポン券を配布した場合のホテル側の仕訳と消費税の取り扱いについて考えます。
宿泊料金受取時
宿泊料金を受け取った時のホテル側の仕訳は以下のようになります。
この仕訳の考え方については、詳しくは以下の記事をご覧ください。
地域限定クーポン券配布時
地域限定クーポン券を配布した時は、ホテル側は本来国が配布すべき券を代わりに配布しているに過ぎず、ホテル側に資産や負債の増減はないため「仕訳なし」となります。
全国旅行支援割引額相当額受取時
後日、国から全国旅行支援割引額相当額の補助金の支払いを受けたら、宿泊料金受け取り時に計上した売掛金などの資産勘定を取り崩します。
地域限定クーポン券取扱店舗の仕訳と消費税の取り扱い
地域限定クーポン券3,000円の配布を受けた旅行客が、そのクーポン券を用いて5,000円分の商品を購入した場合の店舗側の仕訳と消費税の取扱いについて考えます。
商品販売時
商品を販売した場合、その商品の販売額 5,000円が課税売上げとなります。
地域限定クーポン券の受取額は「受取商品券」などの資産勘定で処理します。
地域限定クーポン券精算時
地域限定クーポン券を精算し、国から券面額の支払を受ける場合は、受け取り時に計上した「受取商品券」などの資産の勘定科目を取り崩します。
この取引は、物品切手等の精算なので不課税取引となります。
まとめ
地域限定クーポン券の消費税法上の取り扱いは「物品切手等」になります。
地域限定クーポン券を使用して商品等を購入した場合は、その全額が課税仕入れになることに注意しましょう。