消費税が非課税とされる取引に「物品切手等の譲渡」というものがあります。
この「物品切手等」は、その名称から郵便物に貼る切手などのことを指すのかな?と思う方も多いかもしれませんが、実はそうではないのです。
今回は、消費税が非課税とされる「物品切手等」とはどういうものなのかについて解説したいと思います。
郵便切手類等とは
郵便物に貼る切手は、消費税法上は「物品切手等」ではなく「郵便切手類等」に分類されます。
まずは、「郵便切手類等」とはどのようなものなのかについて解説します。
「郵便切手類等」は「郵便切手類」と「等」に分かれます。
「郵便切手類」の部分には、次のものが含まれます。
・官製はがき
・郵便書留
・現金封筒
・小包郵便物包装物品
「等」の部分には、次のものが含まれます。
物品切手等とは
「物品切手等」とは、物品の給付、貸付け又は役務の提供に係る請求権を表彰する証書をいいます。
「請求権を表彰する証書」の意義については消費税法基本通達6-4-3において、次のように規定されています。
(請求権を表彰する証書の意義)
法別表第二第4号ハ《物品切手等の譲渡》及び令第11条《物品切手に類するものの範囲》に規定する「請求権を表彰する証書」とは、証書の所持人に対してその作成者又は給付義務者がこれと引換えに一定の物品の給付若しくは貸付け又は特定の役務の提供をすることを約する証書をいい、記名式であるかどうか、又は当該証書の作成者と給付義務者とが同一であるかどうかを問わない。
(注) 資産の寄託者が倉庫業者あてに作成する出荷依頼書等又はこれらに類する文書は、物品切手等に該当しない。
例えば、商品券、ビール券、図書券、QUOカードなどは、それと引き換えに商品の給付を受けることができる「請求権を表彰する証書」であるため、「物品切手等」に該当します。
また、上記以外にも、資金決済法に規定する「前払式決済手段」も「物品切手等に類するもの」として取り扱うことが消費税法施行令第11条に規定されています。
(物品切手に類するものの範囲)
第十一条 法別表第二第四号ハに規定する政令で定めるものは、役務の提供又は物品の貸付けに係る請求権を表彰する証書及び資金決済に関する法律第三条第一項(定義)に規定する前払式支払手段に該当する同項各号に規定する番号、記号その他の符号とする。
例えば、ICカード、電子マネー、Amazonギフト券、コーヒーチェーンのプリペイドカード、前払式のスマホ決済などが「前払式決済手段」であるため、「物品切手等に類するもの」に該当します。
また、テレフォンカード、電車やバスの乗車券・定期券、映画前売り入場券、ライブチケットなどの役務の提供に係る請求権を表彰する証書も「物品切手等に類するもの」に該当します。
一方、「物品切手等」に該当するかどうかは、次のいずれの要件も満たすものであるかどうかにより判定します。
② 給付等を受けようとする者が当該証書等と引換えに給付等を受けたことによって、その対価の全部又は一部の支払債務を負担しないものであること。
例えば、個人で経営する喫茶店が発行しているコーヒーチケットの綴りは、上記2要件を満たすため「物品切手等」に該当します。
また、例えば、以下の画像のようなクーポン券(筆者が先日松屋でビビン丼を食べた際にもらったものです)は、それだけでは一定の物品の給付若しくは貸付け又は特定の役務の提供を受けることができないため「物品切手等」に該当しません。
株主優待券のうち、支払債務の一部を免除されるものは、それと引き換えに一定の物品の給付若しくは貸付け又は特定の役務の提供を受けるものではないので「物品切手等」には該当しませんが、支払債務の全額の免除を受けることができるものについては「物品切手等」に該当します。
なお、株主優待券が「物品切手等」に該当するかどうかの考え方については、次の記事で詳しく解説しています。
また、電子記録債権についても、それと引き換えに一定の物品の給付若しくは貸付け又は特定の役務の提供を受けるものではないので「物品切手等」には該当しません。
郵便切手類等と物品切手等の取扱いの違い
「郵便切手類等」の譲渡も「物品切手等」の譲渡もいずれも消費税法上は非課税取引とされます。
(5) 日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡及び地方公共団体などが行う証紙の譲渡
(6) 商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
ただし、「郵便切手類等」の譲渡が非課税とされるのは、郵便局や印紙売りさばき所等一定の場所における譲渡に限ります。
郵便局や法務局、一定の許可を受けたコンビニやたばこ屋で郵便切手類等を購入した場合は非課税となりますが、金券ショップやネット通販などで購入した場合には課税対象となります。
それに対し、「物品切手等」については譲渡の場所が決まっておらず、どこで誰がどんな「物品切手等」を譲渡しても非課税取引となります。
また、例えば、額面1,000円のテレホンカードを1,500円で販売する場合のように、「物品切手等」を額面より高いプレミアム付きの価格で販売したとしてもその全額が非課税となります。
なお、郵便切手類等に係る経理処理方法については、詳しくは次の記事で解説しています。
まとめ
消費税法上、郵便切手や印紙・証紙は「郵便切手類等」、商品券や前払式決済手段などの請求権を表彰する証書は「物品切手等」に該当します。
いずれも、非課税取引とされていますが、「郵便切手類等」は譲渡の場所が決められているのに対し、「物品切手等」についてはどこで誰が譲渡しても非課税とされるところが最大の違いです。
「郵便切手類等」に該当するものと「物品切手等」に該当するものをまとめると次の表のようになります。
郵便切手類等 |
・官製はがき
・郵便書留
・現金封筒
・小包郵便物包装物品
・レターパック
・収入印紙
・登記印紙
・特許印紙 など
|
物品切手等 |
・商品券
・ビール券
・図書券
・テレホンカード
・電車やバスの乗車券、定期券
・株主優待券(支払債務の全額の免除を受けることができるもの)
・映画前売り入場券
・ライブチケット
・QUOカード
・ICカード
・電子マネー
・アマゾンギフト券
・プリペイドカード
・前払式のスマホ決済
・特許印紙
・Go To トラベル地域共通クーポン券
・Go To イートお食事券 など
|
上記いずれにも該当しないもの |
・クーポン券
・株主優待券(支払債務の一部を免除されるもの)
・電子記録債権
・資産の寄託者が倉庫業者あてに作成する出荷依頼書等 など
|
なお、「物品切手等」に係る具体的な仕訳例については、次の記事で詳しく解説しています。
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