課税売上割合の計算で有価証券や金銭債権の譲渡対価に5%をかける理由

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

有価証券の譲渡及び金銭債権の譲渡は、消費税法上非課税取引とされています。

課税売上割合を計算する上では、有価証券の譲渡や金銭債権の譲渡があった場合は、その譲渡対価の額の5%相当額を課税売上割合の分母の金額(資産の譲渡等の対価の額)に算入することとされています。

今回は、課税売上割合を計算する際に、なぜ金銭債権の譲渡対価の額に5%をかけるのかという理由について解説したいと思います。

 

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課税売上割合とは

「課税売上割合」とは、課税期間中に国内で行った資産の譲渡等の対価の合計額のうちに課税期間中に国内で行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の占める割合をいいます。

数式で表すと、課税売上割合は次の計算式で表すことができます。

課税売上割合
課税売上割合の計算式

有価証券の譲渡や金銭債権の譲渡があった場合は、その譲渡対価の額は非課税売上高となりますが、課税売上割合を計算する上では、その譲渡対価の額の5%相当額を分母の金額(資産の譲渡等の対価の額)に算入します。

課税売上割合の具体的な計算方法について詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。

 

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有価証券の譲渡対価の額に5%をかける理由

株式や公社債等の有価証券の譲渡について、その譲渡対価の額の5%相当額を売上割合の分母の金額(資産の譲渡等の対価の額)に算入する理由は、事業者が行う投資による資金運用(いわゆる財テク)により税制上不利が生じないよう配慮しているためです。

消費税の計算では、課税売上割合は大きければ大きいほど、課税標準額に対する消費税額(預かった消費税額)から控除できる控除対象仕入税額(支払った消費税額)の金額が大きくなるため、課税売上割合は大きくなる方が国税額の計算上有利となります。

有価証券の譲渡対価は課税売上割合の分母に算入されるため、有価証券の売買取引をたくさん行っている企業は、有価証券の譲渡が多ければ多いほど課税売上割合が小さくなってしまい、納付税額の計算上不利になってしまいます。

そこで、有価証券の売買による資金運用を行なっている企業にできるだけ税制上の不利益が生じないようにするために、有価証券の譲渡については、譲渡対価に5%をかけることとされています。

 

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金銭債権の譲渡対価の額に5%をかける理由

従来までは、課税売上割合の計算において、金銭債権の譲渡については、その譲渡対価の全額を課税売上割合の分母の金額(資産の譲渡等の対価の額)に算入することとされていました。

しかし、平成26年度税制改正により、金銭債権の譲渡があった場合の課税売上割合の計算方法の見直しが行われ、金銭債権の譲渡については、その譲渡対価5%相当額を課税売上割合の分母の金額(資産の譲渡等の対価の額)に算入することとされました。

この改正は、金融庁が改正要望事項として掲げていたものです。

(1)政策目的
消費税の課税売上割合の算出方法を変更し、取引実態の変化に合わせたものとすること。
・・・(中略)・・・

(2)施策の必要性
消費税の納付額は、売上時に預かった消費税額から、仕入時に支払った消費税額に課税売上割合を乗じた金額を控除して、算出される。
課税売上割合の計算において、有価証券の譲渡については、その譲渡対価の 5%のみを非課税売上として取扱う一方、債権の譲渡については、その譲渡対価の全額を非課税売上として取扱うとされている。
このため、債権譲渡を多く行うと、課税売上割合が低下し、消費税納付額の増加につながるが、住宅ローンの証券化や企業再生支援に伴うファンドへの売却等、貸出債権の売買が一般化している近年の経済実態を踏まえ、円滑な債権譲渡を妨げないよう、見直しが求められる

このような改正が行われた背景も、有価証券の譲渡対価に5%をかける理由と似ています。

近年は、債権の回収を他の業者に委託するなど、金銭債権の売買が一般化していることから、債権譲渡を円滑に進められるように、一定の金銭債権の譲渡についても、有価証券を譲渡した場合と同様に、その譲渡対価の5%相当額を課税売上割合の分母の金額(資産の譲渡等の対価の額)に算入することとされました。

なお、この改正は、平成26年4月1日以後に行われる金銭債権の譲渡について適用されています。

 

金融取引の取り扱い

金融取引に係る非課税資産の譲渡等について、課税売上割合の計算上分母の金額(資産の譲渡等の対価の額)に算入する金額をまとめると、次の表のようになります。

有価証券等の課税売上割合の計算上の注意点の図解

なお、非課税取引に関する課税売上割合の計算上、間違いやすく注意が必要な論点については次の記事でまとめています。

持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)の出資持分や協同組合の持分については、そうしょっちゅう売買されるものではなく、株式や金銭債権、公社債等と比べて流動性が低いことから、円滑な譲渡を妨げないように配慮する必要性が薄いため、譲渡対価の5%相当額ではなく、全額を課税売上割合の分母に算入します。

 

まとめ

有価証券の譲渡対価の額及び金銭債権の譲渡対価の額について、5%をかけた金額を課税売上割合の分母の金額(資産の譲渡等の対価の額)に算入する理由は、資金運用や債権譲渡円滑に行うことができるようにするためです。

従来までは金銭債権の譲渡対価の額は、その全額を課税売上割合の分母に算入していましたが、平成26年度税制改正により5%相当額を算入することとなりました。

 

 

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