車両などの高額な固定資産を購入する場合は、一括払いではなく、ローンを組んで数年にわたって分割払いで購入代金を支払うことがあります。
このような購入方法を「割賦購入」といいます。
「割賦購入」により固定資産を購入する場合、「割賦販売手数料」を支払うこととなりますが、この「割賦販売手数料」の消費税の取扱いはどうなるのでしょうか?
具体的な仕訳例とともに解説したいと思います。
割賦手数料とは
割賦手数料(割賦販売手数料)とは、固定資産を割賦購入した場合に、一括購入した場合の購入金額に上乗せされた部分の金額です。
例えば、一括購入をした場合の購入金額の総額が300万円で、割賦購入をした場合の購入金額の総額が330万円であるときは、差額の30万円が割賦手数料に該当します。
割賦手数料は「手数料」という名称がついていますが、役務の提供の対価として支払うものではなく、割賦払いの返済期間の応じて一定の料率を乗じて計算するものであるため、利息としての性質を有していることになります。
割賦手数料の課否判定は契約において明示されているかどうかにより異なる
「割賦手数料は利息としての性質を持っているため非課税になる」と思う方が多いかと思います。
そのとおりではあるのですが、実は、消費税法基本通達において、割賦手数料が非課税となるのは、その額が契約において明示されている場合に限ることとされているのです。
(金融取引及び保険料を対価とする役務の提供等)
法別表第二第3号《利子を対価とする貸付金等》の規定においては、おおむね次のものを対価とする資産の貸付け又は役務の提供が非課税となるのであるから留意する。
(中略)
(11) 割賦販売法第2条第1項《割賦販売の定義》に規定する割賦販売、同法第2条第2項《ロ-ン提携販売の定義》に規定するロ-ン提携販売、同条第3項《包括信用購入あっせんの定義》に規定する包括信用購入あっせん又は同条第4項《個別信用購入あっせん》に規定する個別信用購入あっせんの手数料(契約においてその額が明示されているものに限る。)
つまり、車両などの固定資産を購入した場合の割賦手数料の取扱いは、契約書に割賦手数料の額が明示されている場合は非課税仕入れとなり、契約書に割賦手数料の額が明示されていない場合は課税仕入れ(固定資産の本体価格に含める)となります。
(注)土地などの非課税資産を購入した場合の割賦手数料は、契約書にその額が明示されていない場合であっても非課税仕入れ(土地の購入価格も非課税のため)となります。
・契約書に割賦手数料の額が明示されている → 非課税仕入れ
・契約書に割賦手数料の額が明示されていない → 課税仕入れ(本体価格に含める)
このように規定されているのは、売り手側の課税売上高と買い手側の課税仕入れの金額を一致させるためです。
原則的に考えると、割賦手数料は利息としての性質を持っているため非課税として取り扱うべきですが、固定資産の本体価格と割賦手数料相当額が明確に区分されていない場合は割賦手数料相当額も含めた全額が課税仕入れとなります。
しかし、割賦手数料は契約書で明示されていなかったとしても、見積購入価額や推定利率から割賦手数料相当額を計算して合理的に区分して経理することもできます。
その場合、売り手側は固定資産の本体価格を課税売上げ、割賦手数料相当額は非課税売上げとして計上しているのに、借手側は割賦手数料相当額を含む全額を課税仕入れとして計上するという事態が起こる可能性があり、その場合は売り手側の課税売上高と買い手側の課税仕入れの金額が一致しないことになります。
そのため、割賦手数料が非課税となるかどうかは、契約書にその額が明示されているかどうかという形式的な基準により判断を行うこととなります。
したがって、例えば、請求書には割賦手数料の額が記載されている場合であっても、購入時に締結した売買契約書の方には割賦手数料相当額が明示されていないときは、割賦手数料を含む全額が固定資産の購入対価として課税仕入れになるということもあります。
所有権移転外ファイナンス・リース取引を行った場合の利息相当額の取扱いは、契約書に利息相当額の額が明示されている場合は非課税仕入れとなり、契約書に利息相当額が明示されていない場合は課税仕入れ(リース資産の本体価格に含める)となります。
契約書に割賦手数料相当額が明示されている場合の仕訳例
契約書に割賦手数料相当額が明示されている場合の仕訳について、具体的な数値例をもとに考えてみましょう。
購入時の仕訳
契約書において割賦手数料の額が明示されているため、割賦手数料30万円は非課税となります。
仕訳を行う際は「前払費用」などの勘定科目で処理し、本体価格とは区別して計上します。
なお、固定資産に係る資産の譲渡等の時期は、その固定資産の引渡しの日であるため、購入した時点で 借方に計上する「車両運搬具」勘定の金額が課税仕入れとなります。
決済時の仕訳
決済時は、割賦手数料相当額6万円(=30万円÷5年)を「支払利息」勘定で計上します。このときの税区分は非課税仕入れとなります。
減価償却の仕訳
車両運搬具は本体価格300万円で計上されているため、この金額をもとに減価償却費を計上します。
減価償却費:3,000,000円÷5年=600,000円
契約書に割賦手数料相当額が明示されていない場合の仕訳例
次は、契約書に割賦手数料相当額が明示されていない場合の仕訳について、具体的な数値例をもとに考えてみましょう。
購入時の仕訳
契約書において割賦手数料の額が明示されていないため、割賦手数料相当額も含めた全額330万円が車両の購入に係る対価として課税仕入れとなります。
請求書の方に割賦手数料相当額が記載されている場合や見積現金購入価額や推定利率から合理的に割賦手数料相当額を計算できる場合であっても、契約書に明示されていない以上、割賦手数料相当額も含めた全額が課税仕入れとなります。
決済時の仕訳
決済時は、普通に年額66万円分を支払った仕訳を行います。割賦手数料相当額について「支払利息」を計上する必要はありません。
減価償却の仕訳
車両運搬具は割賦手数料相当額を区分せず支払額の全額(330万円)で計上されているため、この金額をもとに減価償却費を計上します。
減価償却費:3,300,000円÷5年=660,000円
繰上返済に係る早期完済割引料は「不課税」
固定資産等を割賦購入した場合に、毎月の返済とは別に、賦払残高の一部(あるいは全額)を返済する「繰上返済」が行われることがあります。
「繰上返済」が行われると、賦払金を早期に完済できるため、利息の支払額が減ることになります。
その場合、貸し手側にとっては本来なら得られるはずだった利息相当額が得られなくなってしまうことになります。
そのため、繰上返済が行われた場合には、残賦払金額の1%~3%を「早期完済割引料」として支払わなければならないことがあります。
この「早期完済割引料」については、消費税の取扱いはどうなるのでしょうか?
この点については、国税庁の質疑応答事例で、次のような回答がされています。
【照会要旨】
当社では、延払販売に係る対価について、消費税法施行令第10条第3項第10号《割賦販売等に準ずる方法により資産の譲渡等を行う場合の金利又は保証料相当額》の規定の適用を受ける場合には、本体価格と利子とを区分して得意先に明示し、得意先が繰上弁済するときには、残賦払金額の1%~3%を早期完済割引料として別途金銭を収受することとしています。
この早期完済割引料は課税の対象となるのでしょうか。【回答要旨】
本体価格と利子とを得意先に区分明示して行った延払販売について、得意先が繰上弁済をしたことにより徴収する早期完済割引料は、逸失利益を補てんするために受け取る損害賠償金としての性格を有しますので、課税の対象となりません。
なお、得意先が繰上弁済をしたことにより徴収する金銭が一件当たり幾ら(定額)となっているものは、解約手数料を対価とする役務の提供に該当し、課税の対象となります。
したがって、「早期完済割引料」は、逸失利益の補てんとして性格を有するため、不課税となります。
(参考)信販会社から受け取るクレジットローン紹介手数料は課税売上げ
自動車やバイクなどの販売店は、販売契約成立時に顧客がローンを組んで分割で支払うこととした場合に、信販会社から「クレジットローン紹介手数料」を受け取ることがあります。
クレジットローン紹介手数料は、信用許与の対価ではなく、顧客に対する金利や賦払回数等、申込書の提出に関する説明の代行という役務の提供の対価であるため、課税売上げとなります。
この点については、詳しくは次の記事でも解説しています。
まとめ
割賦手数料は、分割払いの返済期間に渡る利息としての性質を持っていますが、非課税とされるのは契約においてその額が明示されているものに限られます。
非課税となる場合(契約書に明示されている場合)は、固定資産の本体価格と割賦手数料相当額を区分して経理することに注意しましょう。
なお、繰上弁済に係る早期完済割引料は不課税となります。
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