温泉旅館などで宿泊時に入湯税を支払った場合の消費税の取扱いと仕訳例

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

旅館などの温泉のある施設に宿泊した場合に、宿泊費とは別に「入湯税」という税金を徴収されることがあります。

今回は、旅館などで宿泊した際に「入湯税」を支払った場合の消費税の取扱いと仕訳例について解説したいと思います。

 

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入湯税とは

入湯税とは、温泉がある旅館やホテル・入浴施設などの鉱泉浴場において入湯客に対して課される地方税(市町村税)で、環境衛生施設、鉱泉源の保護管理施設及び消防施設その他消防活動に必要な施設の整備並びに観光の振興(観光施設の整備を含む)に要する費用に充てられています。

入湯税の負担者は温泉施設運営者ではなく入湯客であるため、宿泊費とともに徴収させる入湯税は、原則として「宿泊料金の一部」として考えるのではなく「税金の支払い」と考えます。

 

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税金の支払いは消費税の課税対象外(不課税取引)

消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。

課税の対象の4要件
① 国内において行うものであること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行うものであること
④ 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること

税金の支払いは、何かしらの商品やサービスの提供を受けたことに対する対価として支払うものではないため、課税の対象の4用件のうち「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさないため、消費税の課税対象外取引(不課税取引)となります。

入湯税は温泉に入るときに徴収されるため「温泉に入る対価じゃないの?」と思われるかもしれませんが、そうではなく単なる税金の支払いとして考えるため課税の対象とはなりません。

 

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経理処理は請求書・領収書等に入湯税の金額が記載されているかにより異なる

社員が会社の出張などで宿泊した際に入湯税を支払った場合の経理処理はどうすればいいのでしょうか?

国税庁のタックスアンサーNo.6313において、次のような記載があります。

・・・(前略)・・・
これに対して、入湯税、ゴルフ場利用税、軽油引取税などは、利用者などが納税義務者となっているものですから、その税額に相当する金額を請求書や領収証等で相手方に明らかにし、預り金又は立替金等の科目で経理するなど明確に区分している場合には、課税資産の譲渡等の対価の額には含まれないことになります。
なお、その税額に相当する金額を明確に区分していない場合には、対価の額に含まれることになります。

入湯税の支払いは不課税であるため、入湯税の金額が請求書や領収証等で明らかにされている場合は、宿泊費に含めずに不課税仕入れとして取扱います。

一方、入湯税の金額が請求書や領収証で明らかにされていない場合は、実際には宿泊費に入湯税が含まれていたとしても、支払った全額を課税仕入れとして計上できることとされています。

入湯税の金額が記載されている場合:入湯税相当額は課税対象外(不課税仕入れ)
入湯税の金額が記載されていない場合:入湯税相当額も含めた全額が課税仕入れ

 

入湯税の金額が記載されている場合

入湯税の金額が請求書や領収証等で明らかにされている場合は、入湯税の支払額は「租税公課」勘定で処理し、税区分は対象外(不課税仕入れ)となります。

課税仕入れとなるのは、宿泊料金部分の金額のみです。

数値例
当社社員の出張に際して××温泉旅館に宿泊し、宿泊費として6,750円(うち150円は入湯税である。)を支払った。
なお、××温泉旅館から請求明細書として下記の書類の交付を受けた。
入湯税の金額が記載されている場合の請求明細書

このように、請求書や領収証等に入湯税の金額が明記してある場合は、入湯税の支払額は課税対象外(不課税仕入れ)として処理し、宿泊料金の本体価格のみが課税仕入れとなります。

この場合の仕訳は以下のようになります。

入湯税の金額の記載がある場合の仕訳

 

入湯税の金額が記載されていない場合

入湯税の金額が請求書や領収証等で明らかにされていない場合は、支払額の全額を課税仕入れとして処理します。

数値例
当社社員の出張に際して××温泉旅館に宿泊し、宿泊費として6,750円(うち150円は入湯税である。)を支払った。
なお、××温泉旅館から下記の領収証の交付を受けた。
入湯税の金額が記載されていない領収証

このように、請求書や領収証等に入湯税の金額が明記されていない場合は、たとえ実際には入湯税を支払っていたとしても、支払額の全額を課税仕入れとして計上します。

この場合の仕訳は以下のようになります。

入湯税の金額の記載がない場合の仕訳

 

(参考)入湯税の金額の記載がない場合に課税仕入れにできる理由

「どうして請求書や領収証に入湯税の金額が記載されていないときは全額課税仕入れにできるの?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか?

これは、宿泊客側の処理と温泉施設側の処理を一致させるためです。

上記のタックスアンサーでも記載されているとおり、温泉施設側は、入湯税の金額を記載した請求書や領収証等を交付している場合は、入湯税相当額を預り金等として処理することにより不課税として取り扱うことができます。

しかし、請求書や領収証等に入湯税の金額を記載していない場合は、入湯税も含めた全額を課税売上として計上しなければならないこととされています。

したがって、請求書や領収証等に入湯税の金額が記載されている場合でも記載されていない場合でも、宿泊客側の処理と温泉施設側の処理は表裏一体で一致することとなります。

宿泊客側の処理と温泉施設側の処理の関係のイメージ

 

(参考)宿泊税や入湯税も同様の考え方をする

東京や大阪、京都などの一致の観光地で宿泊した際に支払う「宿泊税」や、ゴルフ場でゴルフのプレーをした場合に支払う「ゴルフ場利用税」についても、入湯税と同様に、請求書や領収証等にゴルフ場利用税の金額の記載があるかどうかで経理処理の方法が異なります。

詳しくは、次の記事をご覧ください。

 

まとめ

温泉施設で入浴時に支払う入湯税は、サービスの対価ではなく税金の支払いなので、消費税の課税の対象外となります。

ただし、経理処理上の取り扱いは、温泉施設から交付を受けた請求書や領収書等に入湯税の金額の記載があるかどうかにより異なり、以下のように取扱います。

入湯税の金額が記載されている場合:入湯税相当額は課税対象外(不課税仕入れ)
入湯税の金額が記載されていない場合:入湯税相当額も含めた全額が課税仕入れ

 

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