食品と食品以外をセットにした「一体資産」とは?軽減税率の対象になる?

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

グリコのキャラメルのような玩具付きのお菓子や、ティーカップ付きの紅茶セットなど、飲食料品とそれ以外の商品がセットで販売されていることがあります。

このような食品と食品以外のセット商品のことを「一体資産」といいます。

今回は、「一体資産」とはどういうものなのか、軽減税率が適用されるのかどうかについて解説したいと思います。

 

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軽減税率が適用される取引

令和元年10月1日から日本で初めて消費税の軽減税率制度が導入されることとなり、消費税は8%と10%とが混在することとなりました。

軽減税率8%が適用される取引は、以下の2つです。

軽減税率が適用される取引
・お酒や外食、医薬品等を除く飲食料品の譲渡
・定期購読契約に基づき配送される新聞(週2回以上発行されるもの)の譲渡

飲食料品をテイクアウト(持ち帰り)で販売する場合は、軽減税率の適用対象となります。

では、食品と食品以外がセットになって販売されている場合は、軽減税率の適用対象となるのでしょうか?

 

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一体資産の要件

税務上、以下の要件を満たす資産のことを「一体資産」といいます。

一体資産の要件
① 食品と食品以外の資産があらかじめ一の資産を形成し、又は構成している
② その一の資産に係る価格のみが提示されている

例えば、グリコのキャラメルや、野球選手のカードがついたポテトチップスなどの、お菓子とおもちゃがセットとなった「食玩」や、紅茶とティーカップのセット商品、食器として再利用できる陶器に入れて販売するプリンや重箱入りのおせち料理などが「一体資産」に該当します。

なお、ロースハムとワインのセット商品のように、軽減税率の対象となる飲食料品と軽減税率の対象とならない飲食料品のセット商品も「一体資産」となります。

一体資産に該当するかどうかは、食品と食品以外のものを別々に販売していないこと、価格の内訳が表示されていないことがポイントとなります。

なお、上記の要件を満たさない場合は「一体資産」には該当せず、「一括譲渡」に該当することになります。

この点については、詳しくは次の記事で解説しています。

 

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一体資産が軽減税率の適用対象となる場合の要件

「一体資産」の譲渡は、原則として 軽減税率の適用対象ではありません。したがって、その全体に標準税率10%が適用されることになります。

これは、食品以外の資産を食品と抱き合わせた場合に、軽減税率が適用されることとなれば、本来なら軽減税率が適用されない商品でも軽減税率8%で販売することができてしまうため、そのような 租税回避行為を防止するためです。

ただし、一体資産であっても金額が少額であり、食品の割合が占める大きいものについてまで上記のような厳密な取り扱いを求めるのは一般消費者の理解を得られないと考えられます。

そこで、次のいずれも 要件も満たす場合には、その一体 資産は飲食料品の範囲に含め、その全体に軽減税率8%を適用することとされています。

① 一体資産の譲渡の対価の額(税抜価額)が1万円以下であること
② 一体資産の価額のうちに当該一体資産が含まれる食品に係る部分の価額の占める割合として合理的な方法により計算した割合が3分の2以上であること

① 1万円以下かどうかの判定時の注意点

「① 一体資産の譲渡の対価の額(税抜価額)が1万円以下であること」の要件を満たすかどうかは、標準額となる本体の価額により判定します。時価やメーカー希望小売価格ではなく、実際に対価として収受した金額のうち本体部分の金額です。

値引き等があった場合は、値引き等の後の金額で判定

値下げ販売やポイント利用等により値引き販売を行った場合には、その値引き等を行った後の販売価格の税抜金額が1万円を超えているかどうかで「一体資産」の①の要件を満たすかの判定を行います。

定価が税抜1万円を超えるものであっても、値引きにより販売価格が税抜1万円以下となれば、軽減税率が適用されます。

(参考)税込金額が10,801円~11,000円の場合は「税抜1万円超」と判定

税込金額が10,801円~11,000円の一体資産については、税抜価格が1万円以下になるかどうかを判定しようとすると「矛盾」が生じてしまいます。

例えば、税込金額10,900円の一体資産があったとします。なお、この一体資産は②の要件(食品に占める割合が3分の2以上)は満たしているものとします。

この税込金額 10,900円を軽減税率8%で割り返すと10,900円÷1,08=10,092.59…円となり税抜価額が1万円超となることから上記①の要件を満たさないことになり、軽減税率は適用されないことになります。

一方、税込金額 10,900円を標準税率10%で割り返すと10,900円÷1.1=9,909.09…円となり、税抜価額1万円以下かつ食品の割合が3分の2以上なので上記①及び②を満たすことになるため、軽減税率が適用されることになります。

このように、10,801円~11,000円の一体資産については、軽減税率で割ると軽減税率は適用できないという判定結果になり、標準税率で割ると軽減税率が適用できるという結果になり、いずれの場合も「矛盾」が生じてしまうことになり、判定不能となってしまうのです。

そこで、国税庁では税込価額が10,801円から11,000円までのいずれの税率で割り返しても矛盾が生じる一体資産については「税抜1万円超」と判定し、すべて軽減税率の適用対象外として判断することとしています。

つまり、税込金額が10,801円以上の場合は、標準税率10%が適用されるということです。

一体資産の税込金額が 10,800円以下:軽減税率8%(②の要件も満たす場合)
一体資産の税込金額が 10,801円以上:標準税率10%

② 食品の占める割合が3分の2以上かどうかの判定時の注意点

「② 一体資産の価額のうちに当該一体資産が含まれる食品に係る部分の価額の占める割合として合理的な方法により計算した割合が3分の2以上であること」の要件を満たすかどうかの判定は、販売する商品や販売実績等に応じて事業者が合理的に計算した割合を用いて行います。

合理的な割合と認められるものは、例えば、次の割合が該当します。

① 一体資産の譲渡に係る売価のうち、合理的に計算した食品の売価の占める割合
② 一体資産の譲渡に係る原価のうち、合理的に計算した食品の原価の占める割合

原価を基準にする場合、その原価が日々変動するなど計算が困難なときは、前課税期間における原価の実績等により合理的に計算した割合を用いることができます。

売価や原価とは関係のない重量、表面積、容積等といった基準のみによって計算した割合は、「合理的な方法により計算した割合」として認められないため注意しましょう。

なお、小売業者や卸売業者などの事業者が一体資産に該当する商品を仕入れて販売する場合において、販売する対価の額が1万円以下であるときは、その課税仕入れを行ったときに仕入先が適用した税率をそのまま適用することができます。これは、一体資産を仕入れた場合に、「一体資産の価額のうちに当該一体資産が含まれる食品に係る部分の価額の占める割合として合理的な方法により計算した割合」ができないことに配慮した取扱いです。

この点については、詳しくは次の記事をご覧ください。

 

まとめ

食品と食品以外がセットとなり「一体資産」に該当する場合は、原則として、軽減税率は適用されません。

ただし、次の要件をいずれも満たす場合は、軽減税率が適用されます。

① 一体資産の譲渡の対価の額(税抜価額)が1万円以下であること
② 一体資産の価額のうちに当該一体資産が含まれる食品に係る部分の価額の占める割合として合理的な方法により計算した割合が3分の2以上であること

消費者にとっては、一体資産に該当する商品が軽減税率の適用対象となるかどうかを判定することは、②の食品の割合がわからないため困難です。

事業者にとっては、1万円ちょっとの値段の一体資産の商品のについて値下げ販売等を行う場合は税率の適用関係が流動的に変化するおそれがあるため注意が必要です。

また、食品の占める割合が3分の2以上となるかどうかの判定を行う際は、「合理的な方法により計算した割合」として認められる割合を用いる必要があることに注意しましょう。

 

関連するアプリの問題

消費税法 プラスの一問一答

問題番号 タイトル
31 一体資産に該当する食玩
32 一体資産に該当しない食玩
33 ビールとジュースのセット商品(1万円以下)
34 ビールとジュースのセット商品(1万円超)
35 食品の仕入価額の比率が3分の2以上となる場合
36 食品の仕入価額の比率が3分の2未満となる場合
37 食品の仕入価額の比率が3分の2ぴったりとなる場合
38 紅茶と食器のセット商品(1万円ぴったり)
39 税抜売価が1万円、食品の仕入価額の比率が3分の2となる場合
40 紅茶と食器のセット商品(値下げにより1万円以下となる場合)
41 税率で割り返すと矛盾が生じるビールとジュースのセット商品
42 単品価格が明示されている紅茶とティーカップのセット商品の販売代金の紅茶への按分額
43 単品価格が明示されている紅茶とティーカップのセット商品の販売代金のティーカップへの按分額
44 ワゴンボックス内のよりどり3品300円の商品のうち飲食料品の販売価額で按分計算した金額
45 仕入先が軽減税率を適用していた場合の一体資産の販売

 

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