新型コロナウイルスの影響で確定申告期限の延長が認められる場合とは
この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

新型コロナウイルスが猛威を振るっており、その影響で期限内に申告することができない場合も考えられます。

今回は、新型コロナウイルス感染症の影響で期限内に国税の申告・納付ができない場合に、期限の個別延長が認められる場合の具体例について解説します。 

 

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国税通則法第11条の規定による個別延長を行う

新型コロナウイルス感染症は、これまでの台風や大雨、地震などの災害と異なり、資産等への損害や帳簿書類等の滅失といった直接的な被害が生じていない場合でも、直近であった人が感染していたため濃厚接触者に該当することとなり外出自粛の要請等を受けることがあり、自己の責めに帰さない理由により、その期限までに申告・納付等ができない場合も考えられます。

そこで、今般の新型コロナウイルス感染症に関しては、これまでの災害時に認められていた理由のほか、例えば、次のような理由により、申告書や決算書類などの国税の申告・納付の手続に必要な書類等の作成が遅れ、その期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合には、個別の申請による期限延長(個別延長)が認められることとなります。

 

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個人・法人共通

① 税務代理等を行う税理士(事務所の職員を含みます。)が感染症に感染したこと

確定申告の代理を依頼していた税理士や、その税理士事務所の職員が新型コロナウイルスに感染した場合は、症状がひどくて申告書なんて作っていられなかったり、症状は軽くても外出が制限されたり納税者と面会することもできないため、申告期限の延長が認められます。

② 納税者や法人の役員、経理責任者などが、現在、外国に滞在しており、ビザが発給されない又はそのおそれがあるなど入出国に制限等があること

現在、ほぼすべての国に対して入国制限が行われているため、法人の役員や経理担当者が日本に帰ってこれないこともあります。

そのような場合は、申告書を提出すること自体が難しいため、申告期限の延長が認められます。

③ 次のような事情により、企業や個人事業者、税理士事務所などにおいて通常の業務体制が維持できない状況が生じたこと

・経理担当部署の社員が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実がある場合など、当該部署を相当の期間、閉鎖しなければならなくなったこと
・学校の臨時休業の影響や、感染拡大防止のため企業が休暇取得の勧奨を行ったことで、経理担当部署の社員の多くが休暇を取得していること
・新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが求められ、在宅勤務の体制も整備されていない等の理由から、経理担当部署の社員の多くが業務に従事できないこと

新型コロナウイルスの影響で経理担当部署が機能しない状態になってしまった場合は、申告期限の延長が認められます。

 

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個人の場合

① 納税者や経理担当の(青色)事業専従者が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実があること

納税者自身が感染した場合や、記帳・経理をやってもらっていた青色事業専従者である家族が感染してしまった場合、又は濃厚接触者に該当する場合は、申告期限の延長が認められます。

② 次のような事情により、納税者が、保健所・医療機関・自治体等から外出自粛の要請を受けたこと

・感染症の患者に濃厚接触した疑いがある
・発熱の症状があるなど、感染症に感染した疑いがある
・基礎疾患があるなど、感染症に感染すると重症化するおそれがある

感染症の疑いがある場合や濃厚接触者に該当する場合、基礎疾患がある場合などは、保健所や病院、自治体から電話がかかってきて、外出を自粛するよう要請されることがあります。

そのような場合は、申告書の作成に支障が生じるため、申告期限の延長が認められます。

③ 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが要請されていること

令和3年1月28日、新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部が改正されました。

ニュース等でも取りざたされていた、入院に応じなかったり入院先から逃げ出したりした場合の刑事罰化については見送られましたが、行政罰である「50万円以下の過料」は科されることとなりました。

改正新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが要請されることとなった場合には、申告期限の延長が認められます。

 

法人の場合

感染症の拡大防止のため多数の株主を招集させないよう定時株主総会の開催時期を遅らせるといった緊急措置を講じたこと

法人税や法人事業税・法人住民税は「確定した決算」にもとづいて計算されるため、株主総会で決算が承認されなければ申告を行うことができません。

感染症の拡大防止のため多数の株主を招集させないよう定時株主総会の開催時期を遅らせるといった緊急措置を講じた場合は、株主総会の開催が遅れることに伴い申告書の作成も遅れてしまうため、そのような場合には申告期限の延長が認められます。

(注)消費税及び地方消費税については、法人税の場合と異なり、確定した決算に基づいて申告を行うものではないため、定時株主総会の開催延期により決算が確定しないという理由だけでは、その期限を延長することはできません。

しかし、定時株主総会の開催延期という理由以外にも、例えば、社員の休暇勧奨などで通常の業務体制が維持できない状況となり、決算書類や申告書等の作成が遅れ、期限までに消費税及び地方消費税の申告・納付等が困難な理由がある場合には、期限の延長が認められます。

なお、確定決算主義については、次の記事で詳しく解説しています。

 

注意点

個別に期限延長を申請した場合には、申告等ができないやむを得ない理由等について、税務署からお尋ねが入る場合があります。

あくまでも申告期限の延長をできるのは上記のケースに該当する場合だけなので、特に新型コロナウイルスの影響を受けていないのに嘘をついて申告期限を延長しようとすることは認められないので絶対にやめましょう。

なお、上記で記載したケース以外でも、期限までに申告・納付等ができない場合は、所轄の税務署に相談することで申告期限の延長が認められるケースがあるので、延長してもらえるかわからない場合は税務署に相談してみましょう。

 

5類移行後(令和5年5月8日以後)も同様

令和5年5月8日より、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、新型インフルエンザ等感染症から5類感染症に変更されました。

5類移行後においても、新型コロナウイルス感染症の影響により、期限までに申告・納付等をすることができないと認められるやむを得ない理由がある場合には、個別延長が認められます。

問1.《期限までに申告等ができなかった場合の個別延長》 〔令和5年5月8日更新〕
新型コロナウイルス感染症の影響により、期限内に申告・納付等ができなかった場合、個別延長の適用を受けることはできますか。

○ 新型コロナウイルス感染症の影響により、期限までに申告・納付等をすることができないと認められるやむを得ない理由がある場合には、所轄税務署長に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を申請し、その承認を受けることにより、その理由がやんだ日から2か月以内の範囲で個別指定による期限延長が認められることになります。

○ 今般の新型コロナウイルス感染症に関しては、これまでの災害時に認められていた理由のほか、納税者又は税務代理等を行う税理士等が感染するなど、新型コロナウイルス感染症の影響により申告書や決算書類などの国税の申告・納付等の手続に必要な書類等の作成が遅れ、その期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合には、個別指定による期限延長が認められます。

○ なお、期限までに申告・納付等をすることができないやむを得ない理由の内容等について税務署からお尋ねする場合があります。

 

関連記事

消費税の確定申告期限については、詳しくは次の記事でも解説しています。

 

参考

中間申告期限を延長する際の注意点については、次の記事で詳しく解説しています。

新型コロナウイルスに関連する税務上の取扱いについては、国税庁がFAQを公表しています。

『国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ』

 

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