YouTuberとして動画を投稿している方の中には、YouTube広告の広告料収入を得ている方も多いと思います。
基準期間(個人の場合は2年前、法人の場合は原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えている場合は消費税の納税義務が発生しますが、「YouTubeの広告収入って、消費税はかかるの?」と疑問に感じたことはないでしょうか?
今回は、YouTubeの広告収入に消費税が課されるのかどうかについて解説したいと思います。
YouTube広告とは
YouTube広告とは、YouTubeに投稿した動画に広告を掲載することで収益を得ることができるサービスです。
YouTubeの広告収入はGoogle AdSenseのアカウント紐づけられることになるため、Googleの子会社であるGoogle Asia Pacific Pte. Ltd.という会社により広告動画が配信されます。
YouTubeの広告収入を得るためには、「YouTube パートナー プログラム(YPP)」に申し込むこと必要がありますが、加入するための条件としてチャンネル登録者数が1,000人以上いることや、去12カ月間の総再生時間が4,000時間を超えている必要があるため、誰でも簡単に登録できるわけではありません。
「YouTube パートナー プログラム(YPP)」では、動画の再生回数などに応じて動画投稿者に広告料が支払われる仕組みになっています。
イメージとしては、以下のイラストのような流れになります。
課税の対象の4要件
消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。
Google AdSenseの広告収入に消費税が課税されるかどうかは、「① 国内において行うものであること」の要件を満たしているかどうかがポイントとなります。
電気通信利用役務の提供に係る内外判定
消費税法上、役務の提供(=サービスの提供)が国内において行われたかどうかの判定は、その役務の提供が行われた場所が国内であるかどうかにより行うこととされています。
ただし、平成27年(2015年)税制改正により「電気通信利用役務の提供」に該当する取引については、電気通信利用役務の提供を受ける者の住所又は本店若しくは主たる事務所等の所在地が国内にあるかどうかにより国内取引の判定を行うこととされています。
「電気通信利用役務の提供」に該当する取引の具体例としては、以下のようなものがあります。
○ 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
○ 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
○ インターネット等を通じた広告の配信・掲載
○ インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
○ インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
○ インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
○ インターネットを介して行う英会話教室
動画投稿者が、自らの動画にYouTubeの広告を掲載する行為は「インターネット等を通じた広告の配信・掲載」に該当するため、電気通信利用役務の提供に該当します。
したがって、YouTube広告を動画で配信する行為が国内取引に該当するかどうかは、「電気通信利用役務の提供を受ける者」であるGoogle Asia Pacific Pte. Ltd.の本店・主たる事務所等が日本国内にあるかどうかにより判定を行います。
Google Asia Pacific Pte. Ltd.はシンガポールにあるため不課税取引
YouTubeに広告動画を配信しているGoogle Asia Pacific Pte. Ltd.の本店の住所は「70 Pasir Panjang Road,#03-71 Mapletree Business City, Singapore 117371」となっているため、シンガポールに所在していることになります。
したがって、「電気通信利用役務の提供を受ける者」の本店の所在地が国外であることから、課税の対象の4要件のうち「① 国内において行うものであること」の要件を満たさないため、YouTube広告に係る広告料の受け取りは不課税取引(消費税の課税対象とならない取引)となります。
YouTube広告でいくら稼いでも課税事業者にはならない
消費税の納税義務の有無は、基準期間(個人事業者の場合は前々年、法人の場合は原則として前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超えているかにより判定を行います。
YouTubeの広告収入は不課税売上げなので、上記の1,000万円を超えるかどうかの判定に用いません。
したがって、YouTubeの広告収入が1,000万円超であったとしても(他に課税売上高が1,000万円超でなければ)2年後に課税事業者(消費税を納める義務がある事業者)になることはありません。
YouTuberの方は消費税のことは気にせずガンガン稼ぎまくりましょう!
(参考1)Google AdSense広告も同様に考える
ブログやウェブサイトにGoogle AdSenseの広告を掲載して広告収入を得ている場合の消費税の課否判定の考え方も、YouTube広告と同様になります。
詳しくは次の記事で解説しています。
(参考2)YouTube広告料に係る課税仕入れの税区分の考え方
YouTube広告料の受け取りに対応する課税仕入れの個別対応方式による区分経理の考え方については、次の記事で詳しく解説しています。
まとめ
YouTube パートナー プログラム(YPP)の広告を自ら投稿したYouTube動画に掲載する行為は「電気通信利用役務の提供」に該当します。
「電気通信利用役務の提供」が国内取引に該当するかどうかは、電気通信利用役務の提供を受ける者の住所等が国内にあるかどうかにより判定を行いますが、YouTube広告の動画を配信している会社であるGoogle Asia Pacific Pte. Ltd.はシンガポールに所在するため、国内取引の要件を満たさず不課税取引(消費税の課税対象とならない取引)となります。
つまり、YouTuberが受け取る広告収入には消費税はかからないということです。