ウェブサイトやブログを運営している方は、Google AdSenseの広告を掲載して広告料収入を得ている方も多いと思います。
また、YouTuberとして動画を投稿し、広告収入を得ている方もいらっしゃると思います。
Google AdSenseやYouTubeの広告料収入を得るためには、パソコンの購入費用やサーバー代、動画編集ソフト購入費、記事を外注している場合は外注費など様々な費用が必要となりますが、これらの課税仕入れに係る区分経理はどのように行えばいいのでしょうか?
今回は、仕入税額の按分計算が必要で、個別対応方式を採用している場合におけるGoogle AdSeneの広告収入を得るために要した課税仕入れの区分経理の考え方について解説したいと思います。
Google AdSenseやYou Tubeの広告料収入は不課税売上げ
平成27年(2015年)税制改正により「電気通信利用役務の提供」に該当する取引については、電気通信利用役務の提供を受ける者の住所又は本店若しくは主たる事務所等の所在地が国内にあるかどうかにより国内取引の判定を行うこととされました。
自らのブログやウェブサイトにAdSense広告を掲載する行為やYouTubeに投稿した動画に広告を掲載する行為は「電気通信利用役務の提供」に該当し、役務の提供を受ける者(Google Asia Pacific Pte. Ltd.)の住所等が国外であることから、Google AdSenseやYouTube広告に係る広告料の受け取りは不課税取引となります。
この点については、次の記事で詳しく解説しているため、参考にしてください。
資産の譲渡等に該当しない取引に係る課税仕入れの区分は「共通対応」
不課税売上げに対応する課税仕入れ等の経理区分の取扱いについては、消費税法基本通達11ー2-16において次のような記載があります。
(不課税取引のために要する課税仕入れの取扱い)
11-2-16 法第30条第2項第1号《個別対応方式による仕入税額控除》に規定する課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(以下「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」という。)とは、原則として課税資産の譲渡等と非課税資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ等をいうのであるが、例えば、株券の発行に当たって印刷業者へ支払う印刷費、証券会社へ支払う引受手数料等のように資産の譲渡等に該当しない取引に要する課税仕入れ等は、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに該当するものとして取り扱う。
太字部分で示したように、資産の譲渡等に該当しない取引のために要した課税仕入れ等については、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの、すなわち、「共通対応課税仕入れ等」として取り扱うこととなります。
この点については、詳しくは次の記事でも解説しています。
ということは、Google AdSenseやYouTubeの広告料収入は不課税売上げだから、これらを得るために要した課税仕入れの区分は「共通対応」になるのかな?と思うかもしれませんが、そうではありません。
ここで、重要なのは、この取扱いは「資産の譲渡等に該当しない取引」に要する課税仕入れについて記載されている点です。
例えば、株式の発行による出資の払い込み、損害賠償金の収受、保険金の収受などのために要した課税仕入れは、資産の譲渡等に該当しない取引のために要した課税仕入れとなるため、上記の基本通達に従って「共通対応」と区分経理します。
しかし、Google AdSenseやYouTube広告による広告の配信は「役務の提供」であるため、これらの広告料収入を得るために要した課税仕入れの区分経理についても上記と同様に考えるのは誤りです。
AdSenseやYouTube広告収入に係る課税仕入れは課税売上対応課税仕入れ
「資産の譲渡等」及び「課税資産の譲渡等」の意義については、消費税法第2条第1項第8号及び第9号においてそれぞれ次のように規定されています。
資産の譲渡等
事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。課税資産の譲渡等
資産の譲渡等のうち、第六条第一項(国内取引の非課税)の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう。
つまり、資産の譲渡等のうち非課税となる国内取引以外の取引はすべて課税資産の譲渡等に該当することになります。
関係を図にまとめると、以下のようになります。
したがって、Google AdSenseやYouTube広告などの国外取引とされる役務の提供は「課税資産の譲渡等」に該当することとなるため、Google AdSenseやYouTube広告に係る収入を得るために要した費用は課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ(課税売上対応課税仕入れ)となります。
このように考えるのは、消費税は、国内において消費される物やサービスに対して課税することとする「消費地課税主義」の観点に基づくものです。
この点については、次の記事でも詳しく解説しています。
まとめ
Google AdSenseやYouTube広告に係る収入は不課税売上げとなりますが、これらの収入を得るために要した課税仕入れは課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ(課税売上対応課税仕入れ)となります。
株式発行や損害賠償金、保険金の収受のために要する課税仕入れなどの資産の譲渡等に該当しない取引に係る課税仕入れは「共通対応」となりますが、Google AdSenseやYouTube広告に係る役務の提供は「資産の譲渡等」に該当するため、これらに対応する課税仕入れは「課税売上対応」となります。
どちらも不課税取引に係る課税仕入れではありますが、「資産の譲渡等」に該当する取引なのかどうかで考え方が異なり、実務や試験でも非常によく間違えるところなので注意しましょう。