イートインで注文後に持ち帰ることにした場合、消費税は返金される?

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

令和元年10月1日から消費税の軽減税率制度がスタートし、飲食料品を買うときは、イートイン(店内飲食)なら消費税10%、テイクアウト(持ち帰り)なら消費税8%で適用されることとなりました。

喫茶店などで、店員さんに「イートインで」と伝えてコーヒーを頼んだのに、店内のすべての席が埋まっていて座れなかったため、仕方なく店内で飲まずに持ち帰ることとした場合、消費税2%分の差額を返金してもらうことはできるのでしょうか?

今回は、このようにイートインで注文した後でやはり持ち帰ることにした場合に、消費税は返金されるのかどうかについて解説したいと思います。

 

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軽減税率が適用される取引

そもそも軽減税率はどんな取引に適用されるのでしょうか?

軽減税率8%が適用される取引は、以下の2つです。

軽減税率が適用される取引
・お酒や外食、医薬品等を除く飲食料品の譲渡
・定期購読契約に基づき配送される新聞(週2回以上発行されるもの)の譲渡

飲食料品を購入する場合は軽減税率8%の適用対象となりますが、「外食」は標準税率10%となります。

いすやテーブルのある店内で飲食する場合は「外食」として扱われるため、消費税10%が課されることになります。

 

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軽減税率が適用されるかどうかは注文時の意思表示で決まる

冒頭の喫茶店の例のように、注文時は「イートインで」と言ったものの、その直後に持ち帰りに変更し、実際に店内の椅子やテーブルを使用せずに帰ったのであれば、「テイクアウト」として、軽減税率8%に直してもらえるんじゃないの?と思うかもしれません。

しかし、国税庁が公表している『消費税の軽減税率制度に関する取扱通達の制定について』という法令解釈通達には、次のように記載されています。

(持ち帰りのための飲食料品の譲渡か否かの判定)
11 事業者が行う飲食料品の提供等に係る課税資産の譲渡等が、食事の提供(改正法附則第34条第1項第1号イ《元年軽減対象資産の譲渡等に係る税率等に関する経過措置》に規定する「食事の提供」をいう。以下この項において同じ。)に該当し標準税率の適用対象となるのか、又は持ち帰りのための容器に入れ、若しくは包装を施して行う飲食料品の譲渡に該当し軽減税率の適用対象となるのかは、当該飲食料品の提供等を行う時において、例えば、当該飲食料品について店内設備等を利用して飲食するのか又は持ち帰るのかを適宜の方法で相手方に意思確認するなどにより判定することとなる。

このように、軽減税率が適用されるかどうかは、飲食料品の提供等を行う時におけるお客さんの意思表示に基づいて判断されます。

そのため、喫茶店などでコーヒーを頼んだ場合、お会計の時に「イートインで」と伝えた場合はその時点で「外食」扱いとされるため消費税率は10%が適用されることが確定し、その後席が空いていなかったり、急用ができたために店内の椅子やテーブルなどの設備を使用せずに商品を持ち帰ることとなったとしても、お会計の後で消費税2%分の差額を返金してもらうことはできません。

注文する前に、席が空いているか確認するようにしましょう。

 

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(参考)持ち帰り用の容器に入れられているかどうかは関係ない

スターバックスなどの喫茶店では、「イートインで」と伝えてコーヒーを注文した場合でも、持ち帰り用の紙のカップに入ったものを渡されることがあります。

この場合、「持ち帰り用容器で渡しているなら、軽減税率8%になるんじゃないの?」と思うかもしれませんが、この点について、国税庁が公表している『消費税の軽減税率制度に関する取扱通達の制定について』において、次のような記載があります。

(持ち帰りのための飲食料品の譲渡か否かの判定)
なお、課税資産の譲渡等の相手方が、店内設備等を利用して食事の提供を受ける旨の意思表示を行っているにもかかわらず、事業者が「持ち帰り」の際に利用している容器に入れて提供したとしても、当該課税資産の譲渡等は飲食料品の譲渡に該当しないのであるから、軽減税率の適用対象とならないことに留意する。

要するに、軽減税率の判定では、持ち帰り用の容器に入れて提供しているかどうかは関係ないよ、ということです。

スターバックスで、「イートインで」と伝えたのに持ち帰り用の容器で提供されたとしても、消費税率は10%が適用されます。

 

「テイクアウトで」と伝えてイートインした場合

飲食料品を購入するときに、注文時に「テイクアウト(持ち帰り)で」と言ったにもかかわらず、イートインコーナーでこそっと飲食していく行為は「イートイン脱税」と呼ばれています。

ただ、この行為は実際には「脱税」には該当せず、法律上問題になることはありません。(倫理的な問題はありますが。。。)

したがって、喫茶店で「テイクアウトで」と伝えて買ったコーヒーを店内で飲んでいったとしても、適用税率は注文時における意思表示のないようにもとづいて軽減税率8%と判断され、その後これを変更する必要はないこととされているため、倫理的な問題はさておき、消費税法違反になることはありません。

イートイン脱税に関しては、次の記事で詳しく解説しています。

 

(飲食店向け)返金に応じること自体は禁止されていない

飲食店は、イートインで注文したお客さんが結局イートインせずに帰ることとなった場合に、消費税2%分の差額を返金することは「義務」ではありませんが、返金に応じることが禁じられているわけではありません。

常連のお客さんが注文した後にどうしてもすぐに帰らないといけなくなった場合に、消費税2%分の差額を返金してあげることは可能です。

その場合、① 最初の会計を取り消して再度会計するか、② 差額2%分を値引きしたことにするかのいずれかの方法で処理します。

数値例
当社(喫茶店)は、お客さんから「イートインで」と意思表示を受けたうえでホットカフェラテ(税抜500円)の注文を受け、550円(10%税込)を収受した。
しかし、ホットカフェラテを渡した直後に、そのお客さんが急用で帰らなければならなくなったため、消費税2%分の差額10円を返金することとした。

最初の会計を取り消して再度会計する場合

この処理では、いったん販売したホットカフェラテの返品を受け、その直後に軽減税率8%でお会計し直したと考えます。

返金時に借方に計上する「売上」の税区分は標準税率10%売上返還等とします。(標準税率10%課税売上げのマイナスとして処理してもかまいません。)

最初の会計を取り消して再度会計する場合の仕訳

差額2%分を値引きしたことにする場合

差額2%分を値引きしたことにする場合は、返金額10%を標準税率10%売上返還等として処理します。

差額2%分を値引きしたことにする場合の仕訳

イートインでと言ってるのに軽減税率8%でお会計するのはアウト

お客さんが「イートインで」と言って注文し、実際に店内設備を使用して飲食しているのに軽減税率8%でお会計するのは違法となります。

この点については、詳しくは次の記事をご覧ください。

 

まとめ

飲食料品を「イートインで」と伝えて注文した後で、満席だったり急用が入ったために店内飲食せずに持ち帰ることとなった場合でも、消費税率は10%が適用され、原則として税率を後で変更することはできません。

注文する前に空いている席があるかよく確認するようにしましょう。

なお、飲食店側は、返金に応じる法的義務はありませんが、常連客等に返金に応じてあげることは禁止されているわけではありません。

 

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