「イートイン脱税」は消費税法違反?ばれた場合はどうなる?
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この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

消費税の軽減税率制度が導入されてから早くも1か月が経ちました。

予想通り、小売店や飲食店では適用税率を巡ってトラブルが多発しているようです。

インターネット上では「イートイン脱税」という言葉まで誕生し、物議を醸していますが、この「イートイン脱税」と呼ばれる行為は消費税法に違反するのでしょうか?

今回は、「イートイン脱税」が消費税法違反になるかどうかについて解説します。

 

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イートイン脱税とは

コンビニや喫茶店、ハンバーガーショップなどで飲食料品を購入する場合は、イートイン(店内飲食)の場合は消費税10%(標準税率)、テイクアウト(持ち帰り)の場合は消費税8%(軽減税率)が課されます。

イートインとして消費税10%で会計するかテイクアウトとして消費税8%で会計するかは、お客さんの自己申告に委ねられています。

本来なら、イートインかテイクアウトか正直に申し出ないといけませんが、中には嘘をつく人も多くいます。

初めからイートインコーナーで食べていく予定であっても、嘘をついてテイクアウトとして8%で会計すれば、2%分安く購入することができます。

このように、テイクアウトとして消費税8%で購入した飲食物をひっそりとイートインで食べていく行為が、ネット上で「イートイン脱税」と呼ばれるようになりました。

イートイン脱税のイラスト

お会計時に申し出を忘れた場合も「イートイン脱税」になることに注意!

コンビニやスーパーなど、大半の商品を持ち帰り用として販売しているお店の場合は、お客さんからの明示的な意思表示がなくても持ち帰りであることが明らかであれば「持ち帰り」の意思表示をしたものとして軽減税率を適用するなど、営業形態や状況等に応じた柔軟な判断が認められています。

そのため、コンビニやスーパーのほとんどは、店内に「イートインコーナーをご利用になる際はレジ会計時にお申し出ください。」といった内容の貼り紙を掲示して、飲食料品についてお会計時にお客さんから「イートインコーナーで食べていきます」という意思表示があった場合のみ消費税10%を適用し、何も意思表示がなければ軽減税率8%が適用されます。

嘘をつくつもりはなかったとしても、お会計時に「イートインコーナーで食べていきます」と店員さんに伝えるのを忘れてイートインコーナーを利用した場合も、いわゆる「イートイン脱税」と呼ばれている行為に該当してしまうので注意しましょう。

申し出せずもイートイン脱税になる場合のイラスト

(参考)

「イートイン脱税」の逆で、購入時に「イートインで」とウソをついて実際にはイートインで食べずに持ち帰る「テイクアウト脱税」という行為もあります。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

 

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「イートイン脱税」は消費税法違反?

では、この「イートイン脱税」と呼ばれている行為は消費税法違反となるでしょうか?

その前に、まずは消費税の仕組みついて考えてみましょう。

消費税は、物を売ったりサービスを提供した売り手が、買い手から預かった税金を代わりに納めることとなっているため、「間接税」と言われています。

間接税の説明イラスト

消費税を負担しているのは、商品やサービスを買ったお客さん(消費者)です。しかし、その消費税をお客さんの代わりに税務署に納付しているのはお店(事業者)です。

そのため、お客さん(消費者)は税負担者であり、お店(事業者)が納税義務者となります。

お客さん(消費者)は、商品やサービスを買うときに消費税を支払えばそれで終わりですが、お店(事業者)はたくさんのお客さんから預かった消費税を集計して、いくらを税務署に納めなければいけないのかを計算する必要があります。

「消費税法」という法律は、納税義務者であるお店(事業者)が、税務署に納付する金額をどうやって計算するのかといったことや、脱税をしたらどのような罰則があるのかを規定しています。

つまり、「消費税法」の取締り対象は納税義務者であるお店(事業者)だけなのです。税負担者であるお客さん(消費者)の行為についての罰則は規定されていないのです。

消費税法の取締り対象

したがって、お客さん(消費者)が会計時に嘘をついて「イートイン脱税」と呼ばれている行為を行ったとしても、消費税法違反とはなりません。

また、「イートイン脱税」と呼ばれていますが、この行為は「脱税」ではありません。

 

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他の法律に違反する可能性は?

「イートイン脱税」と呼ばれている行為は、消費税法違反とはなりません。

しかし、その内容によっては、刑法などの他の法律に違反する可能性があります。具体的には、詐欺罪、偽計業務妨害罪、名誉棄損罪などに該当する可能性があります。

ただし、よほど悪質でない限り、実際に立件される可能性はかなり低いでしょう。

詳しくは、以下の記事をご覧ください。

 

ばれたら2%追加で払う必要があるのか

「イートイン脱税」を監視する正義の味方がいるのをご存知でしょうか?

その名も「正義マン」です。

これもインターネット上で生まれたワードです。法律用語ではないので注意しましょう。

初めてこの単語を聞いたときはネーミングセンスが秀逸すぎて才能に嫉妬しました。

正義マンとは、テイクアウトとして消費税8%で購入した飲食物をひっそりとイートインで食べている人を見つけては店員に告げ口をする正義のヒーローを意味します。

正義マンのイラスト

告げ口した人が女性の場合は「正義ウーマン」と呼ぶ方が適切かもしれません。

このように、テイクアウトで購入したのに実はイートインで食べていたことが店員にばれてしまった場合、消費税2%を追加で支払わなければならないのでしょうか?

答えはNOです。

テイクアウトとして消費税8%で購入した飲食物をひっそりとイートインで食べていたことを店員に告げ口する人(正義マン)がいたとしても、軽減税率の対象となるかどうかは、レジでお会計をするときの顧客の「店内飲食」か「持ち帰り」かの意思表示により判断されるため、その後顧客がこれを変更しても適用税率を変更する必要はないこととされています。

したがって、差額の消費税2%分を追加で支払う必要はありません。

(注)いわゆる「正義マン」と呼ばれている方の行いは、公平な税負担の観点から考えると倫理的に正しいことです。このような事態が起きた場合に本来叩かれるべき対象は、「会計時に嘘をついた客」と「抜け穴だらけの制度を作った官僚と政治家」であることを忘れないようにしましょう。

なお、正義マンが現れた場合、店員はどう対応すればいいのかについては、以下の記事に記載しています。

 

まとめ

「イートイン脱税」と呼ばれている行為は、消費税法上は違法行為には該当せず、「脱税」でもありません。また、店員にばれたとしても差額2%分の消費税を追加で支払う必要もないこととされています。

ただし、内容があまりに悪質な場合は刑法など他の法律に違反する可能性があることに注意しましょう。

税理士として一言
この記事は、決して「イートイン脱税」を推奨しているわけではありません。
ウソをついても違法にならず「正直者が馬鹿を見る」ことになってしまうような制度には問題点があることは確かです。
しかし、私達はこの社会に暮らす一員であることを忘れないでください。
「店内で食べていく人は、社会を支える会費の1つである消費税を2%多く払ってくださいね」というルールが、新しく加えられることになったのです。
色々と納得のいかないところはあるかもしれませんが、イートインをした際に多く払った2%分の消費税は、決して無駄になるわけではなく、私達が暮らす社会を支えるために活かされ、巡り巡ってその恩恵が自分にも帰ってくるのです。
そういう風に思える「心のゆとり」を持った人が一人でも増えてくれたら、より良い社会になるんじゃないかなと思います ♪

 

関連するアプリの問題

消費税法 無敵の一問一答

問題番号 タイトル
CV071 持ち帰りの意思表示をした後、予定を変更して店内で食べたアイスクリーム
CV072 店内飲食の場合は申し出る旨の張り紙があるコンビニで会計時に何も伝えず、店内で食べたコロッケ
CV074 店員に持ち帰ると言ったのにイートインコーナーで飲んだコーラ

 

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