銀行が取り扱う、他人に譲渡可能な定期預金として「譲渡性預金証書(Certificate of Deposit)」というものがあります。
今回は、譲渡性預金証書(CD)を譲渡した場合の消費税の取扱いについて解説したいと思います。
譲渡性預金とは
譲渡性預金証書(CD)は期限の定めのある預金の証書ですが、譲渡禁止の特約がないことから、売買取引の対象とされています。
消費税法基本通達6-2-1において、「譲渡性預金」の意義について次のように記載されています。
(非課税の対象となる有価証券等の範囲)
6-2-1 法別表第二第2号《有価証券等の譲渡》の規定によりその譲渡が非課税となる有価証券等には、おおむね次のものが該当するのであるから留意する。・・・(中略)・・・
ナ 譲渡性預金(払戻しについて期限の定めがある預金であって、民法第三編第一章第七節第一款に規定する指図証券、同節第二款に規定する記名式所持人払証券、同節第三款に規定するその他の記名証券又は同節第四款に規定する無記名証券に係る債権であるもの)の預金証書のうち外国法人が発行するもの
したがって、譲渡性預金は外国の法人が発行するものを指します。
なお、居住者が発行する譲渡性預金証書は、「譲渡性預金」ではなく「預金」に該当するものとして取扱います。
譲渡性預金の発行は不課税取引
国内譲渡性預金証書、海外譲渡性預金証書ともにその発行に係る取扱いについては、預金者においては 元本の払込みであり、その行為自体は利子を対価とする金銭の貸付けとして預金の預け入れに該当し、不課税取引となります。
譲渡性預金の譲渡は非課税取引
国内譲渡性預金証書は、金銭債権の譲渡として、また、海外譲渡性預金証書は有価証券の譲渡として、いずれも非課税取引となります。
なお、譲渡性預金証書の譲受けによる取得は、金銭債権の譲受けとして非課税となります。
譲渡性預金の利子は非課税資産の輸出が適用される
譲渡性預金の利子について、所定の証明がされた場合は、非課税資産の輸出の規定が適用されます。
譲渡性預金の取得に係る手数料は課税仕入れ
譲渡性預金証書の取得について銀行等が媒介、取次ぎ又は代理業務を行った場合、これらの媒介等の業務に係る役務の提供は課税の対象となります。
したがって、譲渡性預金証書の取得に係る媒介手数料は課税仕入れとなります。
ただし、非居住者(外国人や外国法人など)による居住者(日本人や内国法人など)からの譲渡性預金証書の取得に係る媒介等、非居住者に対する役務の提供は、輸出免税の対象となります。
課税売上割合の計算
譲渡性預金証書の譲渡価格は、課税売上割合の計算上、その譲渡対価の額の5%相当額を資産の譲渡等の対価の合計額(課税売上割合の分母)に算入することになります。
ただし、譲渡性預金証書が先現先として行われる場合には、課税売上割合の計算上、その現先取引が売現先であるときは、その譲渡は資産の譲渡等に含まれないことになります。
また、買現先であるときは、売戻し価額から購入価格を差し引いた残額が資産の譲渡等の対価の額として取り扱われる(要するに課税売上割合の分母からマイナス)こととなります。
なお、譲渡性預金証書を譲受けにより取得した場合は、金銭債権の譲受けは資産の譲渡等に該当することから、譲り受けた譲渡性預金証書の利子が資産の譲渡等の対価の額の合計額(課税売上割合の分母)に含まれます。また、海外譲渡性預金証書の利子については、非居住者に対する金銭の貸付の対価として、所定の証明がなされた場合、非課税資産の輸出の規定により、課税資産の譲渡等の対価の額の合計額(課税売上割合の分子)にも含まれることになります。
非課税資産の輸出があった場合の課税売上割合の計算方法については、次の記事でも詳しく解説しています。
まとめ
譲渡性預金証書の譲渡は、非課税取引となります。
譲渡性預金証書を譲渡した場合は、金銭債権や有価証券の譲渡と同じく、その譲渡価額の5%相当額を課税売上割合の分母に算入します。
海外譲渡性預金証書について利子が発生する場合は、非課税資産の輸出の規定により、その利子は課税売上割合の算定上、分母及び分子の両方に算入されます。
なお、譲渡性預金証書を非居住者に譲渡した場合であって、金銭債権や有価証券の輸出に非課税資産の輸出が規定が適用されないのと同様に、非居住者に対する譲渡性預金証書の譲渡額については非課税資産の輸出の規定は適用されません。
なお、金銭債権や有価証券の輸出に非課税資産の輸出の規定が適用されないのかについては、詳しくは次の記事をご覧ください。