適格請求書発行事業者から交付を受けたインボイスに不備があった場合の対応

令和5年10月1日から、消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)がスタートしました。

インボイス制度はスタートしてからまだ日が浅く、適格請求書の記載事項を満たしていない請求書等の交付が行われることも多々あるかと思います。

例えば、インボイス制度が始まる前の形式の請求書のまま送られてきて、適用税率や消費税額等の記載がないというケースも多々あると考えられます。

今回は、記載事項に不備のある適格請求書等の交付を受けた場合に採るべき対応について解説したいと思います。

 

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適格請求書等の記載事項

適格請求書(インボイス)の記載事項は、以下のとおりです。

適格請求書(インボイス)の記載事項
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 取引年月日
③ 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

小売業など不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う一定の事業を行う場合には、適格請求書(インボイス)に代えて適格簡易請求書(簡易インボイス)を交付することができます。

適格簡易請求書(簡易インボイス)の記載事項
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 取引年月日
③ 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率

適格請求書等の記載事項についての詳細は、次の記事で詳しく解説しています。

 

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適格請求書等に不備があった場合の対応順序

適格請求書発行事業者から交付を受けた適格請求書等に不備があった場合は、次の順序で対応します。

① 少額特例の適用がないか確認
② 相手方に修正した適格請求書の再発行を求める
③ 仕入明細書等を作成し、相手方の確認を受ける
④ 区分記載請求書の記載事項を満たすか確認

 

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①少額特例の適用がないか確認する

適格請求書等の記載事項を満たしていない請求書等の交付を受けた場合であっても、その課税仕入れに係る税込支払対価の額が1万円未満であり、かつ、次の要件を満たす場合は、仕入税額控除を受けることができます。(少額特例)(この特例の適用期間は令和5年10月1日から令和11年9月30日までです。)

少額特例の適用要件
① 基準期間における課税売上高が1億円以下であること
② 特定期間における課税売上高が5千万円以下であること

この場合、相手方に再発行を求めたり、仕入明細書等による確認を行う必要はありません。

少額特例について詳しくは次の記事で解説しています。

 

② 相手方に修正した適格請求書等の再発行を求める

適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書等の記載事項に誤りがあった場合は、修正した適格請求書等を交付することが義務付けられています。

4 適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付した適格請求書発行事業者は、これらの書類の記載事項に誤りがあつた場合には、これらの書類を交付した他の事業者に対して、修正した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付しなければならない。

そのため、まずは取引の相手方に修正した適格請求書等の再発行を求めましょう。

相手側が修正した適格請求書等の再発行に応じてくれた場合は、その修正した適格請求書等を保存することにより仕入税額控除を行うことができます。

 

③ 仕入明細書等を作成し、相手方の確認を受ける

現実問題として、本当に修正した適格請求書等の再発行をしてもらえるかはわかりません。

インボイス制度はまだ始まったばかりで、慣れていない事業者も多くいるかと思います。

「請求書の記載事項が誤っているから再発行してくれ」と言っても、慣れない事務処理でバタバタしていて再発行を後回しにされてしまい、いつの間にか忘れられてしまう可能性もあります。

そのような場合は、こちら側で適格請求書等の記載事項を満たした「仕入明細書等」を作成し、相手方の確認を得ることで、その仕入明細書等を保存すれば適格請求書等の保存要件を満たすこととなり、仕入税額控除を受けることができます。

「仕入明細書等」に、一定期間連絡がない場合は確認したものとする旨を記載してEメール等で送付した場合は、その一定期間を経過した後は適格請求書等の保存要件を満たすこととなります。この方法が、最も現実的な解決策であると思われます。

仕入明細書等を作成して相手方の確認を得る場合の注意点等については、次の記事で詳しく解説しています。

 

④ 区分記載請求書等の記載事項を満たすか確認

現実問題として、取引数が膨大である場合などは、記載事項に不備のある請求書等に係る仕入明細書等をすべてこちらで作成し直して相手方の確認を受けるという方法を採ることも困難なケースもあるかと思います。

そのような場合は、残念ながら適格請求書等の保存要件を満たさないため、全額を仕入税額控除することはできません。

しかし、適格請求書等の記載事項を満たしていなくても、区分記載請求書等の記載事項を満たしていれば、80%控除(又は50%控除)の経過措置の適用を受けることができます。

そのため、まだ諦めずに、その請求書等が区分記載請求書等の記載事項を満たしているか確認しましょう。

インボイス制度導入後は、免税事業者や消費者から行った課税仕入れは、段階的に次の割合でしか控除できなくなり、令和11年(2029年)10月1日以後、最終的に控除不可となります。

令和5年(2023年)10月1日から令和8年(2026年)9月30日まで・・・80%
令和8年(2026年)10月1日から令和11年(2029年)9月30日まで・・・50%
令和11年(2029年)10月1日以後・・・0%(控除不可)

この経過措置は、適格請求書発行事業者が発行した請求書等が、適格請求書等の記載事項を満たしておらず、再発行を受けることも仕入れ明細書による確認を受けることもできなかった場合についても適用することができます。

ただし、その請求書等が区分記載請求書等の記載事項を満たしている必要があります。

区分記載請求書等の記載事項は次のとおりです。

区分記載請求書等の記載事項
① 書類作成者の氏名又は名称
② 取引年月日
③ 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税込み)
⑤ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

なお、区分記載請求書等については、取引の事実に基づいて、「取引内容(軽減税率の対象品目である旨)」及び「税率ごとに区分して合計した対価の額(税込み)」に限り買い手側において取引して修正することが認められています。

適格請求書発行事業者から交付を受けた請求書等が、上記の区分記載請求書等の記載事項を満たしている場合は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの取引に係るものであれば80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までの取引に係るものであれば50%が仕入税額控除の対象となります。

区分記載請求書等の記載事項をも満たしていない場合(上記の追記が認められる事項以外の事項に不備がある)は、残念ながら仕入税額控除の対象にはなりません。

なお、この経過措置については次の記事でも詳しく解説しています。

 

 

まとめ

適格請求書発行事業者から交付を受けた請求書等が適格請求書等の記載事項を満たしていなかった場合に採るべき対応をフローチャートにしてまとめると、次のようになります。

記載事項に不備のある適格請求書等につき修正を受けられなかった場合の対応フローチャート

少額特例の適用を受けることができる場合は、記載事項に不備があったとしても仕入税額控除を受けることができ、再交付を求めたり仕入明細書等による確認を行う必要はありません。

少額特例の適用がない場合、「③ 仕入明細書等を作成し、相手方の確認を受ける」という方法が、最も現実的な解決策であると思われます。

しかし、記載事項に不備のある請求書等が膨大であり、それらすべての仕入明細書等を作成し直す余裕がない場合は、80%控除の経過措置の適用を受けられないか確認するようにしましょう。

 

(裏話)記載不備があった場合、税務調査では「柔軟に対応」するそうです

仕入税額控除の適用を受けるためには適格請求書等の保存が必要であり、条文を厳格に解釈する限り、請求書等の記載事項に不備があるものは適格請求書等に該当せず、その課税仕入れについては仕入税額控除が認められないこととなります。

しかし、令和5年2月10日に行われた「第211回財務金融委員会」では、参考人として出席した星屋和彦国税庁次長は、国会議員からのインボイス制度導入後の税務調査に関する質問に対し次のように回答しています。

○鈴木国務大臣 国税当局が行います税務調査につきましては、大口で悪質な不正計算が想定されるなど調査必要度の高い納税者を対象としているところでありまして、これまでも、請求書等の保存書類についてなどの軽微な記載事項の不足を確認するための税務調査は実施していない、そのように承知をしております。

 インボイス制度導入後も、こうした方針に特に変更はないと聞いております。

○末松委員 ということであれば、制度が定着するようなところも含めて、そういう軽微なことについて中小事業者をある意味じゃいじめるような、そういったことは、国税庁としてもそこは十分に勘案して、そういった方々に極力面倒をかけないということを是非お約束していただきたいと思います。これは国税庁に聞きます。

○星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁といたしましては、インボイス制度について、制度の定着を図るため、調査の過程でインボイスの記載不備を把握したとしても、インボイスだけでなく他の書類等を確認するなど柔軟に対応していくということで考えてございます。

このように、調査の過程でインボイスの記載不備を把握したとしても、他の書類等を確認するなどして「柔軟に対応」するとの方針を述べています。

つまり、請求書等が適格請求書等の記載事項を満たしていなかったとしても、その取引の相手方が適格請求書発行事業者に該当している限り、税務調査等で軽微な記載不備を把握したとしても、他の書類等を確認し、相互に関連が明確な複数の書類を合わせて一のインボイスと考え、記載事項を満たしているのであれば「柔軟に対応」されるものと考えられます。例えば、請求書に記載された「税込対価の額」や「消費税額」の横に適用税率(10%)が記載されていなかった場合など、軽微な記載不備であれば、その請求書に係る課税仕入れの全額を仕入税額控除の対象としていたとしても「柔軟に対応」してもらえる可能性があるということです。

ただし、実際に現場の税務調査官がどのような裁量で判断を行うかは分かりません。中にはあまり「柔軟」じゃない税務調査官の方もいらっしゃるかもしれません。

いずれにせよ、普段から交付を受けた書類が適格請求書の要件を満たしているかどうかのチェックは怠らないようにするのが重要です。

また、仮に請求書等が適格請求書の記載事項を満たしておらず、再発行も仕入明細書等による確認もできなかった場合であっても、それが区分記載請求書等の記載事項を満たしているなら、80%(50%)の経過措置の適用を受けて仕入税額控除を行えば、条文に照らして考えても何ら問題はないといえるでしょう。

 

適格請求書の記載事項に不備がある場合の経過措置の適用の法的根拠

適格請求書発行事業者が交付した適格請求書の記載事項に不備があり、再発行を受けることも仕入明細書等による確認を受けることもできなかった場合に、80%又は50%控除の経過措置が適用されることについての法的根拠を記載します。

仕入税額控除について規定している消費税法第30条では、適格請求書等(又は仕入明細書等で相手方の確認を受けたもの)を保存しなければ仕入税額控除を受けることができない旨を規定しています。

(仕入れに係る消費税額の控除)
第三十条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れ(特定課税仕入れに該当するものを除く。以下この条及び第三十二条から第三十六条までにおいて同じ。)若しくは特定課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の第四十五条第一項第二号に掲げる消費税額(以下この章において「課税標準額に対する消費税額」という。)から、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る適格請求書(第五十七条の四第一項に規定する適格請求書をいう。第九項において同じ。)又は適格簡易請求書(第五十七条の四第二項に規定する適格簡易請求書をいう。第九項において同じ。)の記載事項を基礎として計算した金額その他の政令で定めるところにより計算した金額をいう。以下この章において同じ。)、当該課税期間中に国内において行つた特定課税仕入れに係る消費税額(当該特定課税仕入れに係る支払対価の額に百分の七・八を乗じて算出した金額をいう。以下この章において同じ。)及び当該課税期間における保税地域からの引取りに係る課税貨物(他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この章において同じ。)につき課された又は課されるべき消費税額(附帯税の額に相当する額を除く。次項において同じ。)の合計額を控除する。
一 国内において課税仕入れを行つた場合 当該課税仕入れを行つた日
二 国内において特定課税仕入れを行つた場合 当該特定課税仕入れを行つた日
三 保税地域から引き取る課税貨物につき第四十七条第一項の規定による申告書(同条第三項の場合を除く。)又は同条第二項の規定による申告書を提出した場合 当該申告に係る課税貨物(第六項において「一般申告課税貨物」という。)を引き取つた日
四 保税地域から引き取る課税貨物につき特例申告書を提出した場合(当該特例申告書に記載すべき第四十七条第一項第一号又は第二号に掲げる金額につき決定(国税通則法第二十五条(決定)の規定による決定をいう。以下この号において同じ。)があつた場合を含む。以下同じ。) 当該特例申告書を提出した日又は当該申告に係る決定(以下「特例申告に関する決定」という。)の通知を受けた日

・・・(中略)・・・

7 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。

・・・(中略)・・・

9 第七項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類及び電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律第二条第三号(定義)に規定する電磁的記録をいう。第二号において同じ。)をいう。
一 事業者に対し課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。次号及び第三号において同じ。)を行う他の事業者(適格請求書発行事業者に限る。次号及び第三号において同じ。)が、当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付する適格請求書又は適格簡易請求書
二 事業者に対し課税資産の譲渡等を行う他の事業者が、第五十七条の四第五項の規定により当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付すべき適格請求書又は適格簡易請求書に代えて提供する電磁的記録
三 事業者がその行つた課税仕入れ(他の事業者が行う課税資産の譲渡等に該当するものに限るものとし、当該課税資産の譲渡等のうち、第五十七条の四第一項ただし書又は第五十七条の六第一項本文の規定の適用を受けるものを除く。)につき作成する仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類で課税仕入れの相手方の氏名又は名称その他の政令で定める事項が記載されているもの(当該書類に記載されている事項につき、当該課税仕入れの相手方の確認を受けたものに限る。)
四 事業者がその行つた課税仕入れ(卸売市場においてせり売又は入札の方法により行われるものその他の媒介又は取次ぎに係る業務を行う者を介して行われる課税仕入れとして政令で定めるものに限る。)につき当該媒介又は取次ぎに係る業務を行う者から交付を受ける請求書、納品書その他これらに類する書類で政令で定める事項が記載されているもの
五 課税貨物を保税地域から引き取る事業者が税関長から交付を受ける当該課税貨物の輸入の許可(関税法第六十七条(輸出又は輸入の許可)に規定する輸入の許可をいう。)があつたことを証する書類その他の政令で定める書類で次に掲げる事項が記載されているもの
イ 納税地を所轄する税関長
ロ 課税貨物を保税地域から引き取ることができることとなつた年月日(課税貨物につき特例申告書を提出した場合には、保税地域から引き取ることができることとなつた年月日及び特例申告書を提出した日又は特例申告に関する決定の通知を受けた日)
ハ 課税貨物の内容
ニ 課税貨物に係る消費税の課税標準である金額並びに引取りに係る消費税額及び地方消費税額
ホ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

適格請求書発行事業者の義務について規定している消費税法第57条の4において、適格請求書等の記載事項を具体的に規定しています。すなわち、ここに掲げる記載事項を満たさない請求書等は適格請求書等に該当しないということになり、消費税法第30条第1項の規定(仕入税額控除)の適用を受けることができないことになります。

(適格請求書発行事業者の義務)
第五十七条の四 適格請求書発行事業者は、国内において課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この条において同じ。)を行つた場合(第四条第五項の規定により資産の譲渡とみなされる場合、第十七条第一項又は第二項本文の規定により資産の譲渡等を行つたものとされる場合その他政令で定める場合を除く。)において、当該課税資産の譲渡等を受ける他の事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。以下この条において同じ。)から次に掲げる事項を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類(以下第五十七条の六までにおいて「適格請求書」という。)の交付を求められたときは、当該課税資産の譲渡等に係る適格請求書を当該他の事業者に交付しなければならない。ただし、当該適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難な課税資産の譲渡等として政令で定めるものを行う場合は、この限りでない。
一 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号(第五十七条の二第四項の登録番号をいう。次項第一号及び第三項第一号において同じ。)
二 課税資産の譲渡等を行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行つた課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
三 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
四 課税資産の譲渡等に係る税抜価額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を含まないものとする。次項第四号及び第三項第四号において同じ。)又は税込価額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を含むものとする。次項第四号及び第三項第四号において同じ。)を税率の異なるごとに区分して合計した金額及び適用税率(第二十九条第一号又は第二号に規定する税率に七十八分の百を乗じて得た率をいう。次項第五号及び第三項第五号において同じ。)
五 消費税額等(課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額の合計額として前号に掲げる税率の異なるごとに区分して合計した金額ごとに政令で定める方法により計算した金額をいう。)
六 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
2 前項本文の規定の適用を受ける場合において、同項の適格請求書発行事業者が国内において行つた課税資産の譲渡等が小売業その他の政令で定める事業に係るものであるときは、適格請求書に代えて、次に掲げる事項を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類(以下第五十七条の六までにおいて「適格簡易請求書」という。)を交付することができる。
一 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
二 課税資産の譲渡等を行つた年月日
三 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
四 課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額
五 消費税額等(前項第五号の規定に準じて計算した金額をいう。)又は適用税率

80%控除の経過措置に関して規定している平成28年改正法附則第52条では、新消費税法第30条第1項の規定(インボイス制度の下における仕入税額控除)の適用を受けることができない課税仕入れでも、旧消費税法第30条第1項の規定(インボイス制度が始まる前の区分記載請求書等保存方式における仕入税額控除)の適用を受けるものについては、課税仕入れ等の税額の80%分を控除してもいいですよと記載されています。(50%控除についても、同附則第53条にて同じ条文構成で規定されています。)

(適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置)
第五十二条 事業者(新消費税法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。以下この条及び次条において同じ。)が、五年施行日から五年施行日以後三年を経過する日(同条第一項において「適用期限」という。)までの間に国内において行った課税仕入れ(新消費税法第三十条第一項の規定の適用を受けるものを除く。次条第一項において同じ。)のうち、五年改正規定による改正前の消費税法(以下この条及び次条において「旧消費税法」という。)第三十条の規定がなお効力を有するものとしたならば同条第一項の規定の適用を受けるものについては、同条第九項に規定する請求書等又は当該請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律第二十五号)第二条第三号に規定する電磁的記録をいう。次項並びに次条第一項及び第二項において同じ。)を新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなし、かつ、当該課税仕入れに係る支払対価の額(同条第八項第一号ニに規定する課税仕入れに係る支払対価の額をいう。次条第一項及び附則第五十三条の二において同じ。)に百十分の七・八(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等(新消費税法第二条第一項第九号の二に規定する軽減対象課税資産の譲渡等をいい、消費税法第七条第一項、第五条の規定による改正後の同法第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。第三項及び次条第一項において同じ。)に係るものである場合には、百八分の六・二四を乗じて算出した金額に百分の八十を乗じて算出した金額を新消費税法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とみなして、同条の規定を適用する。この場合において、同条第八項第一号ハ中「である旨)」とあるのは、「である旨)及び所得税法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第十五号)附則第五十二条第一項の規定の適用を受ける課税仕入れである旨」とする。
2 前項の規定により新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなされる書類又は電磁的記録に係る旧消費税法第三十条第九項の規定の適用については、同項第一号ハ中「内容」とあるのは「内容(当該課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)」と、同号ニ中「課税資産の譲渡等の」とあるのは「税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の」と、同項第二号ニ中「内容」とあるのは「内容(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)」と、同号ホ中「第一項」とあるのは「税率の異なるごとに区分して合計した第一項」とする。
3 第一項の規定により新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなされる書類に係る前項の規定により読み替えて適用する旧消費税法第三十条第九項の規定の適用については、当該書類の交付を受けた事業者が、当該書類に係る課税資産の譲渡等の事実に基づき同項第一号ハに掲げる記載事項(当該記載事項のうち、課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である旨に限る。)又は同号ニに掲げる記載事項に係る追記をした書類を含むものとする。
4 事業者が、第一項の規定の適用を受ける課税仕入れを行った場合における新消費税法第三十二条及び第三十六条第五項の規定の適用については、新消費税法第三十二条第一項第一号中「金額及び」とあるのは「金額(当該仕入れに係る対価の返還等が所得税法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第十五号)附則第五十二条第一項の規定の適用を受ける課税仕入れに係るものである場合には、当該金額に百分の八十を乗じて算出した金額)及び」と、新消費税法第三十六条第五項中「消費税額は」とあるのは「消費税額(当該課税仕入れに係る棚卸資産が所得税法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第十五号)附則第五十二条第一項の規定の適用を受けるものである場合には、当該消費税額に百分の八十を乗じて算出した金額)は」とする。

したがって、適格請求書発行事業者が交付した請求書等の記載事項に不備があり、適格請求書の要件を満たさない場合でも、その請求書等が区分記載請求書等の記載事項を満たすものであれば80%控除(又は50%控除)の経過措置の適用対象となります。

附則のタイトルは「適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置」となっていますが、条文を読む限り、適格請求書発行事業者から受け取った記載事項に不備のある請求書等についても、それが区分記載請求書等の記載事項を満たしているのであれば、80%控除(又は50%控除)の経過措置の適用があるものと考えられます。

(参考)

国税庁が公表している資料『お問い合わせの多いご質問 問⑦』においても、適格請求書発行事業者からの課税仕入れについても経過措置の適用対象となる旨が記載されています。

(適格請求書発行事業者からの課税仕入れに係る経過措置の適用等)
問⑦ 当社は、仕入先が多数あり、登録番号の記載のない請求書の交付を受けることも多くあります。この場合、適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号の記載のない請求書等を含め、登録番号の記載のない請求書等については、一律に、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けてもよいでしょうか。

【答】
適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れであっても、適格請求書等保存方式開始から一定期期間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。 ただし、当該経過措置の適用は、取引の相手方が適格請求書発行事業者以外の者である場合に限りませんので、例えば適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号のない請求書等を含め、区分記載請求書等の記載事項を満たしたものの保存がある場合には、一律に、当該経過措置の適用を受けることとなります。

 

 

 

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