免税事業者でも本体価格に消費税を上乗せして請求していいの?

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

事業者が商品等を販売してお客さんから消費税を預かった場合は、その事業者が課税事業者である場合は消費税を税務署に納めなければなりません。

しかし、その事業者が免税事業者である場合は 消費税を納める必要はありません。

では、免税事業者が商品等を販売した場合に、本体価格に消費税を上乗せして請求することはできるのでしょうか?

今回は、免税事業者が請求する金額に係る消費税相当額の取扱いについて解説したいと思います。

 

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免税事業者とは

国内において商品を販売したりサービスを提供している事業者は、原則として、消費税を納める義務があります。

消費税を納める義務がある事業者のことを「課税事業者」といいます。

消費税は「間接税」なので、商品を販売したりサービスを提供した時に消費者から預かった消費税を、事業者が消費者の代わりに納付します。

課税事業者のイラスト

しかし、事業規模が小規模である事業者については、事務負担に配慮して消費税を納める義務が免除されます。

消費税を納める義務が免除される事業者のことを「免税事業者」といいます。

具体的には、基準期間(個人事業者の場合は前々年、1年決算法人の場合は原則として前々事業年度)における課税売上高が1千万円以下の事業者が免税事業者となります。

(注)事業を承継した場合などは、上記に該当する場合でも課税事業者となる場合があります。

免税事業者は、本体価格とともに消費税相当額を一緒に受け取ったとしても、その消費税相当額を納付する必要はありません。

免税事業者のイラスト

 

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免税事業者も消費税を上乗せ請求できる

請求書や領収書などで本体価格と消費税の内訳を記載していたとしても、それはあくまでも取引当事者間で取引金額の確認をするためのものであり、そこに記載された消費税額を必ず納付しないといけないというわけではありません。

国税庁が公表している資料『消費税の軽減税率制度に対応した経理・申告ガイド』には、「免税事業者は、課税資産の譲渡等に課される消費税がないことから、請求書等に「消費税額」等を表示して別途消費税相当額等を受け取るといったことは、消費税の仕組み上、予定されていません。」と記載されていますが、あくまでも「予定されていません」という表現に留まっていることから、別途消費税相当額を受け取ることを禁止するものではありません。

また、国税庁は、適格請求書発行事業者でない者(免税事業者等)に支払う報酬・料金の源泉徴収について、次のように説明しています。

1 現行の取扱い(本通達3)
 原稿料や弁護士報酬などの源泉徴収の対象となる報酬・料金等(所得税法第204条第1項)の中に消費税及び地方消費税の額(以下「消費税等の額」といいます。)が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象となります。
 ただし、報酬・料金等の支払を受ける者からの『請求書等』において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。

2 インボイス制度開始後の取扱い(現行の取扱いから変更なし)
 インボイス制度開始後においても、上記1の『請求書等』とは、報酬・料金等の支払を受ける者が発行する請求書や納品書等であればよく、必ずしも適格請求書(インボイス)である必要はありませんので、適格請求書発行事業者以外の事業者が発行する請求書等において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。

※ 所得税法第204条の規定が適用される報酬・料金等のほか、同法第212条の規定が適用されるものについても、上記と同様に取り扱われます。

このように、免税事業者が発行した請求書等が「報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合」を想定して、源泉徴収に関する取り扱いを説明しているということは、免税事業者が請求書等に本体価格に消費税等の額を上乗せして請求することを禁止していないことの証左であると言えます。

結局は、取引価格の設定は取引当事者間の交渉次第であり、消費税等相当額を別途受け取っているかどうかに関わらず、取引当事者間で合意した対価の合計額に110分の10をかけた金額が消費税等の額となるため、免税事業者であっても消費税を上乗せして請求することはできます。

そのうえで、免税事業者は消費税額(取引当事者間で合意した対価の合計額に10/110をかけた金額)を納付する義務が免除されることになります。

「本来なら(課税事業者であれば)納めるべき税金を納めずに懐に入れてもいいの?」と思われるかもしれませんが、現行制度上それでいいんです。

ただし、本来なら納めるべき税額が事業者の手元に残ってしまうこの制度には「益税」と呼ばれる問題点があり、課税の公平上の問題があると指摘されることが多々あります。

 

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消費税の上乗せを拒否されたら

取引価格の設定は、取引当事者間の交渉次第で決まるものであるため、もし免税事業者が消費税を上乗せして請求した場合に、消費税等相当額分の支払いを拒否され、こちらもそれを納得した場合は、その本体価格が取引当事者間で合意した対価の額となります。

取引当事者間での円滑な交渉の結果、両者の合意の上で取引価格の引き下げが行われる場合は、何も問題はありません。

ただし、大企業や元請業者などが、自身の強い立場を利用して、免税事業者である取引先に対して不当に取引価額の減額を強要する行為は、独占禁止法や下請法などの法律に抵触するおそれがあるので注意が必要です。

この点については、詳しくは次の記事をご覧ください。

 

免税事業者からの仕入税額控除は段階的に廃止される

2023年(令和5年)10月1日から「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が開始されます。

「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」では、登録を受けた課税事業者のみが適格請求書(インボイス)を発行することができることとされ、免税事業者から課税仕入れについての仕入税額控除を受けることができなくなります。

インボイス制度については詳しくは次の記事でも解説しています。

ただし、経過措置が設けられており、段階的に控除できる金額が減額されていきます。

この点については、詳しくは 次の記事をご覧ください。

この経過措置は、免税事業者から区分記載請求書等保存方式(インボイス制度が始まる前の従前の方式)の記載事項を満たした請求書等の交付を受けた場合に適用されます。

 

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