2021年4月以後においても、消費税の総額表示の義務がない場合とは?

前回の記事では、2021年4月以後の消費税の総額表示の義務化で価格表示がどう変わるのかについて説明しました。

今回は、2021年4月以後においても、消費税の総額表示の義務がない場合について解説したいと思います。

 

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総額表示の義務がないもの

総額表示の義務は、課税事業者が不特定多数の消費者に対して資産の譲渡等を行う場合に、あらかじめ消費税額等を含む税込価格により表示しなければならない、というものなので、次のような場合には総額表示の義務はありません。

総額表示の義務がない場合
① 免税事業者である場合
② 事業者間取引である場合
③ 見積書や領収書に価格を記載する場合
④ メーカー希望小売価格を表示する場合
⑤ 値引額を表示する場合
⑥ 「時価」とだけ表示する場合

 

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① 免税事業者である場合

価格の表示について規定している消費税法第63条では、次のように記載されています。

(価格の表示)
第六十三条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)は、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この条において同じ。)を行う場合(専ら他の事業者に課税資産の譲渡等を行う場合を除く。)において、あらかじめ課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の価格を表示するときは、当該資産又は役務に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない。

上記太字部分のカッコ書きで示したように、免税事業者は価格を総額で表示しなければならない事業者の対象範囲から除かれています。

したがって、免税事業者は総額表示を行う必要はありません。

なお、免税事業者であっても、取引価額に消費税を上乗せして請求することはできるため、免税事業者が「11,000円(うち消費税1,000円)」といった形で、消費税額等を示して価格を表示することも認められます。

なお、免税事業者が取引価額に消費税を上乗せすることの是非については、詳しくは次の記事をご覧ください。

 

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② 事業者間取引である場合

先ほども掲載しましたが、消費税法第63条をもう一度掲載します。

(価格の表示)
第六十三条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)は、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この条において同じ。)を行う場合(専ら他の事業者に課税資産の譲渡等を行う場合を除く。)において、あらかじめ課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の価格を表示するときは、当該資産又は役務に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない。

上記太字部分のカッコ書きで「(専ら他の事業者に課税資産の譲渡等を行う場合を除く。)」と記載されています。

「専ら他の事業者に課税資産の譲渡等を行う場合」とは、資産又は役務の内容若しくは性質から、およそ事業の用にしか供されないような資産又は役務の取引であることが客観的に明らかな場合をいい、例えば、次に掲げるような取引がこれに該当します。

(1) 建設機械の展示販売
(2) 事業用資産のメンテナンス

このような、事業者間でしか行われない取引は「不特定多数の消費者」に対するものではないため、総額表示の義務はありません。

(参考)会員制の店舗等の場合

会員しか利用できない会員制の店舗等であっても、その会員の募集が不特定多数の者を対象として行われている場合は、商品やサービスの価格表示は総額表示義務の対象となります。

 

③ 見積書や領収書に価格を記載する場合

消費者に対する価格の表示であっても、見積書や納品書、請求書、領収書等には税込価格そのものを記載する必要はなく、税抜価格と消費税額等を別々に記載することができます。

なお、旧消費税法施行規則第22条第1項の経過措置の適用を受けるためには、消費税額等を明示する必要があります。

旧消費税法施行規則第22条第1項の経過措置については、詳しくは次の記事をご覧ください。

 

④ メーカー希望小売価格を表示する場合

商品のパッケージには「メーカー希望小売価格」が記載されていることがあります。

「メーカー希望小売価格」とは、商品のメーカーなどが小売業者に対して「この値段で販売して欲しい」という希望で付けられた価格ですが、実際に小売業者がその金額で売らなければならないという法的拘束量はなく、実際の販売価格は小売業者の裁量で決められます。

したがって、「メーカー希望小売価格」は、小売業者が取引の相手方である消費者に対して行う価格表示ではないことから、総額表示義務の対象とはなりません。

ただし、小売業者が商品のパッケージに印字された「メーカー希望小売価格」をそのまま販売価格としている場合は総額表示義務の対象となるため、もしその「メーカー希望小売価格」が税抜金額である場合は、別途ポップや値札、棚札などに税込価格を表示する必要があります。

 

⑤ 値引額を表示する場合

タイムセールやバーゲンなどで販売価格の値引きをする場合の「値引額」については、それ自体は販売価格ではないため総額で表示する必要はありません。

したがって、「30円引き」といった表記だけでなく、「2割引」や「20%OFF」などの割引率で表示することも認められます。

ただし、値引後の金額を表示する場合は、その値引後の金額については総額で表示する必要があります。

値引後の金額を表示しない場合は、「2割引」や「20%OFF」といったシールを貼っておくだけでも大丈夫です。

 

⑥ 「時価」とだけ表示する場合

総額表示の義務は、商品やサービスの価格を表示することが前提となっています。

したがって、回っていないお寿司屋さんなどでよく見る「時価」などの表記については、そもそもあらかじめ価格表示をしているわけではないため、総額表示義務の対象とはなりません。

 

まとめ

総額表示の義務があるかどうかは、課税事業者が行なっているかどうか、不特定多数の消費者に対して販売するものかどうかがポイントとなります。

上記の6パターンのいずれかに該当する場合は総額表示の義務はありません。

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