新設法人とは?会社設立1~2期目は消費税の納税義務に要注意!

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

消費税の納税義務の判定は、原則として基準期間(個人事業者の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超えているかどうかにより判定を行います。

法人を新たに設立した場合、1期目と2期目は基準期間(前々事業年度)が存在しないため、原則として、消費税の納税義務は免除されることになります。

しかし、設立当初から一定以上の事業規模を有している法人は「新設法人」として、消費税の納税義務が免除されないこととされています。

今回は、新設法人の納税義務の免除の特例について解説したいと思います。

 

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納税義務の判定方法(原則)

消費税の納税義務は、原則として基準期間(個人事業者の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超えているかどうかにより判定します。

また、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間(個人事業者の場合は前年1~6月、1年決算法人の場合は前事業年度上半期)における課税売上高が1,000万円を超えている場合は、納税義務は免除されません。(特定期間における課税売上高の計算方法については、詳しくは次の記事で詳しく解説しています。)

まとめると次のようになります。

個人事業者の場合
・前々年の課税売上高が1,000万円を超えている。
・前年1~6月中の課税売上高が1,000万円を超えている。

1年決算法人の場合
・前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超えている。
・前事業年度上半期の課税売上高が1,000万円を超えている。

しかし、基準期間・特定期間における課税売上高のみで判定を行い、設立当初から相当の事業規模を有する法人まで納税義務が免除されることになるのは、小規模事業者の事務負担に配慮するために設けられた事業者免税点制度の趣旨に反します。

そこで、法人の場合は、上記のいずれにも該当しない場合であっても、設立当初から一定以上の事業規模を有している場合は消費税の納税義務を負うことがあります。

 

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期首資本金の額が1,000万円以上の場合は納税義務が免除されない

「その事業年度の基準期間がない法人のうち、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である法人」のことを「新設法人」といいます。(社会福祉法人等は除きます。)

少し難しい表現ですが、ほとんどの場合、次のように言い換えることができます。

設立法人≒設立1期目、2期目の期首資本金が1,000万円以上の法人

レアケースですが、1期目と2期目の期間の合計が1年未満である場合は、設立3期目も新設法人に該当することがあります。

「基準期間」の意義については、次の記事で詳しく解説しています。

上記の「新設法人」に該当する場合は、その事業年度の消費税の納税義務は免除されないことになります。

消費税法上の用語としての「新設法人」と、「新しく設立された法人」という意味の一般的な用語としての「新設法人」とは意味が異なるため注意しましょう。

 

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新設法人の判定は期首資本金額により行う

新設法人に該当するかどうかは、期首の資本金額で判定をします。

したがって、期首資本金は1,000万円未満だったが、期中に増資して1,000万円以上となった場合、期首の資本金が1,000万円未満なので新設法人に該当しません。

 

資本準備金を計上すれば新設法人に該当せずに済むことも

新設法人に該当するかどうかは「資本金」の金額のみで判定を行うため、「資本準備金」などの剰余金は含みません。

会社法上、出資により払込を受けた金額のうち半分までは「資本準備金」として計上することができます。

したがって、出資により払込おける金額が1,000万円以上であっても、「資本準備金」を計上することにより「資本金」の額を1,000万円未満にすれば、新設法人に該当することを回避することができます。

この点については、詳しくは次の記事でも解説しています。

 

新設法人が調整対象固定資産を取得した場合

基準期間がない事業年度(ほとんどの場合、設立第1~2期)において新設法人に該当する法人が、調整対象固定資産(税抜価格100万円上の建物や車などの固定資産)の仕入れ等を行った場合には、その仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間の納税義務は免除されないこととされています。

簡単に言うと、ほとんどの場合、設立第1~2期に期首資本金1000万円以上の法人が税抜100万円以上の建物や車などを買ったら、その買った事業年度からもう3年間消費税の納税義務を負うということです。

また、その期間中は簡易課税制度を適用することもできないので注意が必要です。

なお、調整対象固定資産については、次の記事でも詳しく解説しています。

 

まとめ

基準期間がない事業年度(たいていの場合設立1~2年目の)の期首資本金の額が1,000万円以上の法人は「新設法人」に該当するため、消費税の納税義務は免除されません。

また、新設法人が、基準期間がない事業年度中に調整対象固定資産(税抜価格100万円上の固定資産)を取得した場合は、その取得した事業年度からもう3年納税義務は免除されず、さらにその期間中は単位課税制度も適用することができないので注意が必要です。

 

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問題番号 タイトル
1149 期首資本金額が1千万円未満の法人の設立第1期
1150 期首資本金額が1千万円の法人の設立第1期
1151 期首資本金額が1千万円超の法人の設立第1期
1152 期首資本金及び資本準備金の合計額が1千万円の法人
1153 期首資本金1千万円以上の法人が期中に減資した場合
1154 期首資本金1千万円未満の法人が期中に増資した場合
1156 期首資本金額が1千万円の法人の第2期
1157 増資して期首資本金額が1千万円以上となった法人の第2期
1158 減資して期首資本金額が1千万円未満となった法人の第2期
1159 期首資本金額が1千万円以上の法人の第3期
1160 第1期に調整対象固定資産を仕入れた新設法人の第3期
1161 第1期に調整対象固定資産を仕入れた新設法人の第4期
1162 第1期(半年)に調整対象固定資産を仕入れた新設法人の第4期
1163 第2期に調整対象固定資産を仕入れた新設法人の第4期
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問題番号 タイトル
376 期首資本金額が1千万円未満の法人の設立第1期
377 期首資本金額が1千万円の法人の設立第1期
378 期首資本金額が1千万円超の法人の設立第1期
379 期首資本金及び資本準備金の合計額が1千万円の法人
380 期首資本金1千万円以上の法人が期中に減資した場合
381 期首資本金1千万円未満の法人が期中に増資した場合
382 期首資本金額が1千万円の法人の第2期
383 増資して期首資本金額が1千万円以上となった法人の第2期
384 増資して期首資本金額が1千万円以上となった法人の第2期
385 減資して期首資本金額が1千万円未満となった法人の第2期
386 期首資本金額が1千万円以上の法人の第3期

 

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